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「音楽を売る以外にもお金を稼ぐ方法はある」― Soundcloud再生回数2000万回!ストリーミング世代に支持されるODESZA(オデッザ)インタビュー

オデッザ インタビュー

 シアトル出身のプロデューサー、クレイトン・ナイトとハリソン・ミルスの2人組によるODEZSA(オデッザ)。デビュー・アルバムとなった『Summer's Gone』収録の2曲が<Hype Machine>で1位を獲得し、ストリーミング世代から絶大な支持を得るとともに、AdidasやGoProといった大企業とタイアップ契約も結ぶ彼ら。現在では、Soundcloudにて再生回数2000万回を誇り、米ビルボードの【Next Big Sound Chart】では1位に輝くなど、世界中から注目されるオデッザが、ニュー・アルバム『イン・リターン』を10月22日に日本リリース。2人の生い立ちをはじめ、プロジェクト結成のきっかけ、新たな挑戦としてヴォーカリストをフィーチャーした意欲作について語ってくれた。

まだ自分たちがセレブリティだと感じるようなことはないよ(笑)

「Say My Name (feat. Zyra)」
▲ 「Say My Name (feat. Zyra)」 MV

??デビュー・アルバム『Summer's Gone』から2年ぶりのアルバムとなります。まず、デビュー・アルバムの反響が大きかったと思いますが、お二人はこの反響をどう感じていましたか?

クレイ:すごく驚いたよ。俺たちは趣味で音楽を作ってただけだったから、あんなに良い反応がもらえるなんて想像さえしてなかった。

ハリソン:俺は大学でデザインを専攻してたし、クレイは物理学を専攻してたから、まさか音楽でキャリアを築くことになるなんて思ってもみなかったよ。

??また、デビュー・アルバムの前後で、お二人の生活は変わりましたか?

クレイ:あまり変わってないけど、今では基本毎日がツアーと曲作りのノンストップ(笑)。デビュー・アルバムの後はそれがずっと続いてる(笑)。

??周りの対応が変わったりとかはどうですか?

クレイ:変わらないね。まだ自分たちがセレブリティだと感じるようなことはないよ(笑)。

??前作の反応が良かった分、2ndアルバムの制作中にプレッシャーを感じたりはしませんでしたか?不安とか?

クレイ:過去にやったことを完全に気にせずに進むことは出来ないけど、それを考えすぎていると何も出来ないと思う。だからあまりそういうことは考えずに作品作りには取り組んだね。あまりとらわれすぎない方がいいと思うから。

??今回のニューアルバム『In Return』は、前作よりもリスニング・ミュージック的な傾向が強くなったように感じますが、 そのあたりは意識されましたか?

ハリソン:今回の作品では、何か新しいことを試したかったんだ。その時思いついた一番の挑戦が、シンガーたちを招いて“曲”を作ることだった。それが上手くいくかなんて全然わからなかったけどね(笑)でも出来には満足してるし、何曲か作りだすと、段々ライティングのスタイルに自信もついてきたんだ。

クレイ:そうやって一度新しいことに挑戦したら、あとはとにかくそれをプッシュし続けたんだ。

??この先は、しばらくこういった方向性に進むのでしょうか?

クレイ:どうだろう。次の作品はもっとシンガーの数を減らしてインスト寄りになるかも。まだわからないけどね。

ハリソン:コラボは楽しいから好きだけどね。いつもの自分たちのスタイルに違う風を吹かせてくれるから。

「Sun Models (feat. Madelyn Grant)」
▲ 「Sun Models (feat. Madelyn Grant)」

??ヴォーカリストをフィーチャーした歌モノが増え、楽曲の幅が広がったのはそういうプロセスがあったんですね。

クレイ:そう。新しいものに挑戦したくてこういう作品になったんだ。

??ヴォーカリストはどういったきっかけでフィーチャーしたのでしょうか?

クレイ:とにかく色んなアーティストに音源を送って、その中からベストだと思ったシンガーや印象の強かったシンガーをフィーチャーすることにしたんだ。

??それはもともと親交があった人に音源を送ったんですか?

ハリソン:いや、メールやFacebookでとにかく色々なアーティストに「もし良かったら歌ってみて。」って音源を送ったんだよ。俺たちはまだ知られてないから、有名なバンドのボーカリストに最初から依頼しようなんて思ってもないしね。でも質の良い音楽を作りたいというのは絶対だったから、素晴らしいシンガーでまだスポットライトを浴びてない人たちを探すことにしたんだ。大変だったよ。

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「Koto」
▲ 「Koto」

??アルバムを通して民族的な要素がところどころにちりばめられていますが、このアイデアはどういった背景から来たのですか?

クレイ:元々そういう音楽は2人とも好きなんだ。民族音楽とか、ワールド・ミュージックとか。そういうのを、自分たちの音楽にも取り入れてみたかっただけ。普段こういうシーンにはあまりないそういう音楽を取り入れることで、サウンドがよりユニークになるからね。

??「Kusanagi」、「Koto」は日本語ですよね?楽曲からも日本的な風景が浮かんできたのですが、この曲のインスピレーションはどこから来たのでしょうか?

ハリソン:まず「Kusanagi」は、俺たちの共通の友達の苗字なんだ。彼は日本人のハーフだから。この曲で彼はギターも弾いてるんだけど、「Kusanagi」は彼へのトリビュートみたいな曲なんだ。

クレイ:で、「Koto」は、この曲を作る時、俺が最初に琴のちょっとしたループを作ったからなんだ。もちろん機械でだけどね。本当に琴が弾けたらいいんだけど(笑)。

??もともと日本に来たり、興味があったのですか?

ハリソン:日本には一回も行った事がないんだよね。本当に行ってみたいんだ。周りに何故か日本とアメリカのハーフの友達が多くて、俺たちのライブのビジュアル担当も日本人とのハーフだしなんだけど、皆からすごく良いところだってずっと聞かされてるんだ。文化も好きだし、サントラやアニメの音楽にも影響を受けてるし、いつか行くのが待ちきれないよ。

??アルバムタイトル『In Return』に込めた意図はなんでしょうか?何に対する返礼なのでしょう?

ハリソン:1stアルバムをリリースした直後、俺たちはずっとツアーに出ていたんだけど、その経験で家に帰れるということに対してもっと有り難さを感じるようになったんだ。ノスタルジアと本当に自分が気にかけていることに対する認識が混ざったようなフィーリングを表現したのがこの言葉だよ。

??お二人の出会いは大学時代と聞きましたが、一緒に活動するきっかけはなんだったのでしょうか?出会ってすぐに一緒に曲作りやライブ活動を始めたのですか?

ハリソン:そうそう。共通の友達がいて、彼は俺の大学寮の隣に住んでた友達が寮を離れて一緒に住み始めた高校時代からの友達なんだ。彼がずっと、「俺の友達も音楽やってるから、会ってお互いの音楽を見せ合うといいよ。」って言ってたんだけど、ある時彼らの家に遊びに行ったらクレイがいたんだ。会ったその日から一緒に音楽を作り始めたんだよ。

??初日からとはすごいですね。最初のギグはいつでした?

ハリソン:5か月後くらいだったよな?大学のある街で最初のショーをやったんだ。友達が皆来てくれて、めちゃくちゃ良いショーだったよ。最初にしてはパーフェクトだったと思う。ソールドアウトだったよな?

クレイ:だね。多分100~200人くらい人がいたはず。

??当時はどんな曲を作ってたんですか?

ハリソン:確か…もっとダウンテンポだったと思うよ。もっとメローだったと思う。

??ちなみに、おそらく周りのクラブやパーティーではEDMがガンガンかかっていたと思いますが、EDMをやろうとは思わなかったのですか?

ハリソン:EDMって、もう一体何がEDMなのかわからなくなってきてるよね(笑)。だからどう答えていいのかわからないけど、もしEDMをエレクトロ・ミュージックとみなすのだとすれば、普通に興味を持ってはいるよ。でも俺たちは、同時にオーガニックやインディー・サウンドも大好きだから、それをエレクトロに取り入れたいっていうのがあるんだ。それが俺たちが作りたいサウンドなんだよ。

クレイ:俺もEDMのエナジーは好き。ショーではやっぱりああいうエナジーがあるといいよね。皆が一つになって楽しいと思う。でも、ちょっとお決まりっぽくなってしまっている部分もあると思うんだ。ガーっと上に上がって、それから下にちょっと下がってまた上がって…そこはちょっと飽き飽きかな、と思うけど、あのエナジーは自分たちのライブショーでも取り入れたいと思うね。

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その人たちがサポートしてくれるはず

「My Friends Never Die」
▲ 「My Friends Never Die」 MV

??お二人は小さい頃どんな音楽を聴いてきましたか?自身のルーツともいえるアーティストを教えてください。

ハリソン:シアトルで育ってるから、インディーやフォークを沢山聴いてきたし、アンビエントやポップ、エレクトロ、ヒップホップも聴いてた。パク・チャヌクの『オールド・ボーイ』シリーズのサントラも聴いてた。とにかく沢山の音楽を聴いてたよ。シアトルは、色んなサウンドにオープンなんだ。オーケストラも好きだしね。2人ともが好きなのは、アニマル・コレクティヴ、M83、ボノボ、フォーテット、エイフェックス・ツイン、ア・トライブ・コールド・クエスト、ジェームス・ブラウン…ソウルやファンク、ジャズ、ヒップホップ、ポップ、エレクトロの全部(笑)。

クレイ:俺の両親は色んな曲を聴くから、それに影響されたね。ソウル、ファンク、ダンス・ミュージック、クラシック、ロック、カオス的な音楽まで、俺の親って本当に沢山の種類の音楽を聴くんだ。母親はフォークも好きだし、父親は昔からピアノを習ってずっと弾いてたから、ベートーベンとかのクラシックもよく聴いてたね。それが高校までで、大学に進学してから更に色々な新しい音楽に出会ったんだ。

??今はどんな音楽を聴いてます?

クレイ:やっぱりこのシーンにいたりツアーしてると、エレクトロを聴くことが多いんだ。だから逆に自分たちの時間がある時は、エレクトロじゃないものを聴いてる(笑)。曲っぽいものとかね。だから今回の作品はそっち寄りになってるのかも。とにかく何でも聴くよ。俺たちはオープンだから。だれかがバンドを紹介してきてアルバムをくれたら、それを運転中に聴いたりね。

??デビュー・アルバム『Summer's Gone』以降、SpotifyやSoundcloudでの再生回数の急上昇しました。お二人の中で、この現象は確信していたのでしょうか?

ハリソン:さっき話したけど、俺はデザインの学校に行ったから、そこでブランディングのことを沢山学んだんだ。だから、自分たちや自分たちが好きなものを素直に表現しようと思った。俺たちはそういうアートも好きだし。だから出来るだけミニマルにしたんだ。美しい写真もミニマルなものが多い。それと同じさ。俺たちは、会う前からお互いが作った音楽をSoundcloudで聴いてんだ。他のプロデューサーに自分たちの音楽を聴いてもらうにはすごく良いツールだし、皆がより深く音楽を掘り下げて、新しい音楽を見つけることが出来る。俺自身は大きく影響されたし、他の人もそうだと思う。Soundcloudで昔発見して聴いていた人たちが今人気のミュージシャンになってるっていうのもクールだと思うしね。Spotifyも素晴らしいと思うよ。将来的にダウンロードはフリーになりそうだし、実際今ソサエティではそういう流れがある。だから、そういうツールを使って自分たちの声をなるだけ多くの人に聴いてもらうっていうことに力を入れればいいんだと思う。うまく受け入れていかないと。一生懸命曲を作ったり、ユニークであったとしても人に知られないままなこともある。そういうのをSpotifyやSoundcloudが助けてくれるんじゃないかな。音楽を売る以外にもお金を稼ぐ方法はあるし、自分の音楽を好きになってくれれば、その人たちがサポートしてくれるはずだから。

「Foot Locker x Adidas Zx Flux」
▲ 「Foot Locker x Adidas Zx Flux」 CM

??さらにその後、Adidas、GoProといったタイアップもすぐ決まり一気に注目を集めましたが、そのことに対して不安や、プレッシャーは感じましたか?

ハリソン:知らない人から自分たちのことを知られてるのはまだ少し変な感じがするけど(笑)、タイアップのおかげで人に音楽を知ってもらえるようになったのは確かだね。でも、さっき言った通りそういうのはあまり気にしないようにして自分の活動に集中するのが一番だと思う。だからあまりプレッシャーはないよ。

??作曲するときのお互いの役割、ライブの時の役割を教えてください。

ハリソン:ただ座っていて何が作れるかなと考える時もあるし、前に聴いたもので好きだったものや、自分が随分まえに取りかかろうとしていたものを使って、そこからどう曲を組み立てていこうかを考える時もある。レイヤーを重ねていくんだ。あるアイディアを広げて強調していくって感じだね。曲によって違う。いつも変わるんだ。毎回変わるし、小さなドラムループから始まることもあれば、いくつかのピアノコードのアイディアから始まる時もあるし、エナジーに溢れた高揚的なサウンドを作りたいという自分の思いつきから曲作りを始める時もある。インスピレーションはいつも違うね。でもプロセスは似てると思う。最初に何がくるかは毎回違うけど。

「Full Performance (Live on KEXP)」
▲ 「Live on KEXP」

クレイ:ライブの時は、基本2台のエイブルトンがあって、一人がドラムとベースをコントロールして、もう一人がトップラインをコントロールして。そうやって色々なサウンドを混ぜ合わせていくんだよ。

??ライブアクトも評判が高く、現在アナウンスされているツアーもほとんどが完売しています。二人のライブがそれだけ支持される理由はなんだと思いますか?

クレイ:そう。何故か完売なんだよね(笑)自分たちでもわからないんだ。多分、なるだけ音楽に自分たちも入り込もうとしてるから、それがショーに反映されてるんじゃないかな。だから他の皆も音楽に同じように入り込むことが出来る。多分そこじゃないかなと自分では思うんだけど。

??オーディエンスの反応は国で違いますか?日本のオーディエンスはどんな感じか人から聞いたことはあります?

クレイ:国っていうか、会場や日、パフォーマンスする時間で違うんだよね。日本のオーディエンスは、前ビデオで見たんだけど、ダンスしたらいけないって本当なの?

??(風営法について説明)

クレイ:それは悲しいね。店で踊っちゃだめなら、皆外に出て踊っちゃえばいいよ(笑)。

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オーストラリアのエレクトロ・シーンは今すごく熱いんだよ

??二人ともプロデューサーとして、他のアーティストのプロジェクトに携わったりもしているのですか?

ハリソン:今のところはまだ。でもコラボは好きだし、他のアーティストをプロデュースしてみたいっていう思いはもちろんあるよ。今はまだ挑戦出来てないけど、将来絶対にやってみたいとは思ってる。

??誰かプロデュースしてみたい人は?

クレイ:すっごく長いリストになるよ(笑)。でも俺たちは色んなサウンドにオープンだから、その人のサウンドを自分たちがエンジョイ出来ればそれで充分。ジャンルを問わず、何にでも挑戦したいね。

??スタジオで過ごす時間とライブで演奏する時間、どちらが好きですか?

ハリソン:どちらかをやってる時はどちらかが恋しくなるから、どちらもだね。どっちもやることでバランスがとれてると思う。

??休日はどんなことをして過ごしていますか?

ハリソン:俺たち、休みが殆どないんだよ(笑)。時間が出来れば常に曲を作ってるし。

クレイ:ツアーでも、4時までパフォーマンスして朝8時にはフライト、みたいな感じだしね。

??ツアーの合間に少し家にいれる時間は?

クレイ:やっぱりスタジオで曲作り(笑)。コーヒーブレイクくらいならあるけどね(笑)。

??近年のクラブ・ミュージック・シーンについて、最近はどういったアーティストから刺激を受けていますか?

クレイ:アーティストというか、最近はオーストラリアの音楽から刺激を受けてるんだ。オーストラリアのエレクトロ・シーンは今すごく熱いんだよ。サウンドが未来的で、これから絶対流行ってくると思う。

??今後チャレンジしてみたいこと、目標はなんですか?

ハリソン:とにかく自分たちが今やってることを続けていきたい。各アルバムごとに成長していくことかな。

??今後の予定を教えてください。来日の予定はありますか?

クレイ:今決まってるのは、来年からのツアー。オーストラリア、ヨーロッパを回るんだ。今までは制作に時間を費やしてきたけど、今からはまたしばらくそれをより多くの人々に聴いてもらえるように活動していく時間になるね。日本はまだ決まってないけど、是非行ってみたいと思ってる。俺たちの夢だからね。今日はありがとう!

「ODESZA at Echoplex」

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