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「現代の音楽には、エレガンスが欠けている」― セルジオ・メンデス & ウィル・アイ・アム インタビュー
60年代のボサ・ノヴァ・ブームから現代まで、50年間以上ブラジル音楽界を代表する唯一無二の存在として確固たる地位を築いてきたセルジオ・メンデス。そんな彼の音楽に17歳の頃に出会い、触発されたブラック・アイド・ピーズのメンバーで近年ではプロデューサーとしても活躍するウィル・アイ・アム。2003年リリースのブラック・アイド・ピーズによるシングル「Sexy」で初のコラボを果たし、その後も2006年にリリースされたセルジオのアルバム『タイムレス』で、ウィルがプロデューサーを務めるなど、音楽を通じて親交を深めてきた御年73歳のセルジオと39歳のウィル。そんな2人がセルジオの最新作となる『マジック』で再びコラボ。「ウィル以上に私の音楽のことを理解する者はいない。」と話すセルジオとウィルの最新インタビューをお届け。
心懸けたのは、コンテンポラリーなフィーリングを持つフレッシュなメロディ
▲ 「That Heat ft. Erykah Badu, will.i.am」MV
??今作では、新たに制作された楽曲に数々のゲストが参加していますが、どのようなサウンドの作品に仕上げたかったのですか?
セルジオ:これまでの作品からも感じ取れたと思うブラジリアン・フィーリングを持たせたかった。パーカッションはすべてブラジルでレコーディングされ、ミルトン・ナシメントらからはオールドスクールなブラジル、そしてアナ・カロリーナ、セウ・ジョルジ、マリア・ガドゥからは近年のブラジルが奏でられている。そこからメロディが生まれた。私はいつだってメロディを重視してきた。だからこれまでも偉大なる(アントニオ・カルロス・)ジョビン、マッカートニーとビートルズ、そしてバート・バカラックを取り上げてきた。心懸けたのは、コンテンポラリーなフィーリングを持つフレッシュなメロディだね。
ウィル・アイ・アム:セルジオは、まさに“メロディ・キング”だ。彼とコラボするのが好きなのは、普段自分では歩まないような領域に対して目を見開かされるから。セルジオと作曲するのは、楽しい旅と言う感じだね。
??作曲の段階で、大勢のゲストを起用した理由というのは?
セルジオ:『マジック』に参加した人々、全員から学ぶことがあった。私が19歳の頃にキャノンボール・アダレイに誘われ、共作した時と同じような喜びを感じた。立場が変わろうと、学ぶということと分かち合うことは喜びなんだ。
??では「My My My My Love」が生まれた経緯について教えてください。
ウィル:セルジオは、僕らが2013年の12月に会う前からその曲の制作を行っていた。多分僕のことを頭において書いた曲だったから、彼がスタジオに持ち入り聴いた時、一番に思い浮かんだのが、“my my my”のメロディだった。でも、そこには既にメロディというものがあったんだ。
▲ 「It's My Birthday」MV / will.i.am & Cody Wise
??ウィルは、UKで注目を浴びていたコーディー・ワイズを契約しましたが、彼がこの曲にピッタリだったのは?
ウィル:18歳なのに、彼はなんでも知っているんだ。クラッシクな曲に関する知識、無名の音楽の探究、シンコペーションに対する意欲―彼の存在はブラック・アイド・ピーズの初期を思い起こさせる。注目の若手に熱狂するするのは簡単だけど、僕らが捜していたのはフレッシュなエネルギー、刺激、そして尊重の心を持ち合わせた人物だった。コラボ相手を金で買うこともできるけれど、相手からも「このプロジェクトに参加している!」という情熱が欲しいよね。2003年の『タイムレス』では、それがジョン・レジェンドだったけれど、今回はコーディ―なんだ。
??セルジオの作品に惹かれたのは?彼と仕事をする上で、それらはどんな影響を及ぼしていますか?
ウィル:(セルジオにむかって)あれらの作品でやっていたことは、未来のリスナーにとってのレッスンだったんだ。僕は、レイヤー、ニュアンス、カウンター・リズムやエレガンスを学んだ。現代の音楽には、エレガンスが欠けている。彼のピアノの演奏は、とても繊細なんだ。そのデリケートさ―今はみんなあらゆる方法で時間を短縮しようと必死だけれど、セルジオはとてもゆったりとしてレイドバックなんだ。
セルジオ:以前、入り組んだものが無いと言っていたが、私は何でも小難しくしてしまうたちなんだ。前に一緒に曲を書いていた時に、ウィルがProToolsの前に座っていて、私がとあるコードを弾いた瞬間に顔を上げたんだ。私が「何だね?」と問うと、彼が「大人っぽすぎる」と言うんだ。「そのコードは」って。美しい瞬間だったね。いつも彼はシンプルな方向に私を導いてくれる。
??『タイムレス』では、セルジオの過去の名曲をコンテンポラリーにアップデートしましたが、Vol.2を作ることは考えていますか?
ウィル:僕が初めてブラジルに行ったのが、『タイムレス』の制作だった。あのアルバムは、カルチャーによる最大限の刺激となり、僕の人生一番の異文化体験となった。サン・パウロやバヒーヤの同じスタジオに戻ることができたら素晴らしいだろうね。
セルジオ:人生の現段階において、これらの人々と音楽を作ることができたということが、信じられないよ。もちろん光栄だね。
Q&A by Phil Gallo / 2014年9月12日 Billboard.com掲載
"Funky Bahia" Music Video
リリース情報
関連リンク
マジック
2014/06/18 RELEASE
SICP-4140 ¥ 2,640(税込)
Disc01
- 01.ワン・ネイション feat.カルリーニョス・ブラウン
- 02.マイ・マイ・マイ・マイ・ラヴ
- 03.ドント・セイ・グッバイ feat.ジョン・レジェンド
- 04.ソウ・エウ feat.セウ・ジョルジ
- 05.ホエン・アイ・フェル・イン・ラヴ feat.グラシーニャ・レポラーセ
- 06.メウ・リオ feat.マリア・ガドゥ
- 07.マジック feat.スコット・マヨ
- 08.サンバ・ヂ・ホーダ feat.アイラ・メネゼス&グラシーニャ・レポラーセ
- 09.アトランティカ feat.アナ・カロリーナ
- 10.オーリャ・ア・フーア feat.ミルトン・ナシメント
- 11.ヒドゥン・ウォーターズ feat.グラシーニャ・レポラーセ
- 12.シンボーラ feat.カルリーニョス・ブラウン
- 13.ドント・セイ・グッドバイ (radio version) feat ジョン・レジェンド <日本盤ボーナス・トラック>
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