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「俺はキャリア重視じゃない、もうそうだったらまったく違う道を辿ってた」― ライアン・アダムス インタビュー
現代におけるアメリカン・ロックを代表するシンガーソングライター、ライアン・アダムス。名プロデューサー、グリン・ジョンズが手掛け、米ビルボード・アルバム・チャートで7位を記録した前作『アッシズ&ファイア』のリリース後は、主にプロデューサーとして自身がLAに所有する<PAX AM>スタジオでジェニー・ルイスやフォール・アウト・ボーイの作品を手掛けていた彼が、ソロ14作目となる最新作『ライアン・アダムス』を遂にリリース。妻のマンディ・ムーアを通じて出会い、意気投合したマイク・ヴァイオラとともにセルフ・プロデュースされた今作やプロデューサー業についてライアン節全開で語ってくれた。
セックス、トラブル、そしてちょっとした危険も
匂わせる最高のアルバムを作った
??10万ドルをかけ、プロデューサー/エンジニアのグリン・ジョンズと制作したアルバムをボツにしたそうですが、なぜですか?
ライアン・アダムス:レコーディング終盤に、これは次の作品にはならないんじゃないか、ってなんとなく感じたんだ。今、エネルギーが再び馴染んできたけど、あの頃作ってた音楽は虚空だった。とにかくもっと色々探究したかったんだ。だから150曲書き上げ、このセックス、トラブル、そしてちょっとした危険も匂わせる最高のアルバムを作った。
??1stシングル「Gimme Something Good」は、現在ラジオでも好評ですが、ヒット曲になる可能性については?
ライアン:いや、そうはならないと思う。だけど、大胆でビューティフルだ。とにかく素晴らしくて、デモでさえショッキングなんだ。俺はキャリア重視じゃない、もうそうだったらまったく違う道を辿ってた。俺はソングライターで、それが俺がやってることだ。
??エルヴァイラをミュージック・ビデオに起用したのは?
ライアン:エルヴァイラと何か一緒にやりたかったのは、今ピンボールに超ハマってて、エルヴィラの2つのピンボール・マシーンが大好きだからだ。3台目のデザインを考えていた時に、それを通じて彼女に会うことになった。で、(「Gimme Something Good」の)ビデオを制作することになった時に、モノクロでスプーキーな感じのビデオが作りたいと思って、そのまま作った。パフォーマンスがベースで、彼女にも出て欲しい、って感じで、かなりミニマルなアイディアだったよ。
??これからはもっとプロデュース業をやっていきたい?
ライアン:わかんないな。責任重大なわりには、そこまで称賛されない。利他的なんだ。この例えは、前にも使ったことがあるけど、俺はこの例えが正しいと心から思ってる。映画『ロード・オブ・ザ・リングス』の出演者で『グーニーズ』に出てた俳優(サム役のショーン・アスティン)がいるだろ?劇中で奴の役目は主人公のフロドがモルドールへ辿り着く手助けをすることだ。目的地が近くなって、あともう少しというところだけど、最後までは一緒に行けないだろ?後はフロドが、自分の足で指輪をあのマグマみたいなやつの中に投げ入れなきゃいけない。プロデューサーの役目は、その『グーニーズ』のやつと同じなんだ。一緒にいて、旅の手助けをする。励まし、投げ出そうとしている時に、「カモン!きっと一緒にやり遂げられる、ベストな道を見つけるんだ。」って、ポジティヴィティを注入し、前進させ、オープンな見解を持ち続けるように働きかける。それが仕事なんだ。
▲ Live @ Newport Folk Festival 2014
??今作の共同プロデューサーを務めるマイク・ヴァイオラは、奥様であるマンディ・ムーアが2009年にリリースした『Amanda Leigh』を手掛けていますが、彼女を通じて出会ったのですか?
ライアン:1997年頃に、(イースト・ヴィレッジで)1ブロックぐらい離れたとこに住んでたんだ。同じワイン・ショップでいつも買い物してて、道でもすれ違っていたのをなんとなく憶えてる。でも、その当時話したりはまったくしてない。で、マンディと一緒に仕事をしているのを見た時、彼は天才的な音楽の才能を持ってるのがわかった。俺たちのレコード・コレクションが違うところは、彼はビートルズのファンで、俺はそうじゃない。でもビッグ・スターやザ・リプレイスメンツは大好きだから、その共通点がある。俺がこれまで聴いたことがないものを彼はよく聴いてるんだ。俺が木のテーブルだったら、彼はその上に飾られているビューティフルなものなんだ。今となってはまるで兄弟みたいで、お互いから離れられないから、面白いもんだよ。彼を知らない人生なんて想像できないね。
??もうすぐ40歳になりますが、このアルバムはその節目を象徴するものと言っても過言ではない?
ライアン:39歳になって、人生、子供、自分たちの世界観に深い入りしすぎてしまった友人たちや長く知り合いの連中が、自分を見つめ直した時に世の中の構造が個人のエゴやアイデンティティーを壊している、という凄まじいことが起ってる。自分の道を見つけられず、さまよいながらも幸福だが、今後がヤバイようなのもいる。そして亡くなってしまった人々もいる…このアルバムは、俺が近かった人々を失った喪失感に憑りつかれていているとともに、俺の知り合いたちが両親を亡くしていくのを見るという経験に基づいている。そして俺が、変わってしまった周りの奴ら…似たようなことを経験し、どうやって持ちこたえてるかを観察している作品でもある。だって今俺が置かれてる人生のステージでは、一般的に大変なことが起きるヤバイ時期だから。
??他のソングライターと共作してみるのは?
ライアン:興味深いね。でも彼らにとって実りがあるのは稀だな。これまでの経験上から言うと、嗅ぎ回ってるって印象を受けるんだ。その辺にマジカルな音楽が落ちてないか探して、それを自分を向上させるために利用する。そういうのを見ると正直ちょっと吐きそうになる、だってそれ以上にやることあるだろ。
Q&A by Shirley Halperin / 2014年9月8日 Billboard.com掲載
"Gimme Something Good" Music Video
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