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2021/04/30

<ライブレポート>降幡 愛「一人一人に愛を届けたい」 自身初となるツアーの初日公演

  2020年ソロデビューを果たした降幡 愛が、横浜、名古屋、大阪、東京の4会場で【降幡 愛1st Live Tour APOLLO】を開催。初日の18日は神奈川・KT Zepp Yokohamaで開催され、このツアーのテーマ曲とも言える楽曲「AXIOM」をはじめ、新曲でウェディングソングの「シークレット・シュガー」も本邦初披露した。シルバーの宇宙服(のような衣装)を身にまとい、スペーシーな世界観とシティポップのレトロな味わいが実にミスマッチした、全16曲を熱く歌い上げた。

 「AXIOM」のミュージックビデオにも登場する宇宙人がスクリーンに登場して、「楽しむ準備はいいかな?」と呼びかけると、会場の期待値は一気に高まった。「AXIOM」のイントロと共に月が映し出され、昔のSF映画に出て来そうなシルバーの宇宙服を着た降幡が登場する。そしてアポロ11号のアームストロング船長が月面に星条旗を立てたように、降幡は大きなフラッグをステージに突き立てた。

 このツアーのために制作された、「AXIOM」で幕を開けたライブ。高揚感をあおるリズムや、独特な浮遊感を生み出すシンセとギターによって、ここはまさしく月面の特設ステージといった雰囲気だ。その中でちょっと無機的なクールさで同曲を歌った降幡は、サビでは、西城秀樹の「ヤングマン」のように、体で<A><X><I><O><M>をかたどる振り付けを踊って会場を盛り上げた。

 続く2曲目の「プールサイドカクテル」は、「AXIOM」からのスペーシーな流れを引き継いだ、特別なアレンジで披露された。客席にクラップが広がる中で降幡は、腰をくねらすように踊りながら、切なく儚いメロディーを歌い上げた。また「ラブソングをかけて」は、一気に南国のムード。観客はタオルを回しながら、宇宙空間に浮かぶ南国の孤島といった、ファンタジックなシチュエーションを楽しんだ。

 最初のMCでは、自分のアーティストとしての在り方が、回りの光を受けて輝く月のようであること、ツアーはそんな自分の象徴である月にみんなを連れて行くことをテーマにしたことを説明。そして「AXIOM」に込めた意味を話した上で、「運命よりも先の何かの大きな引力で、皆さんと出会うことができました。全力で一人一人に愛を届けます」と、ツアーにかける意気込みを語った。

 ここからは、2020年12月にリリースした2ndミニアルバム『メイクアップ』から、3曲を連続で披露した。低音が実にクールなサウンドに合わせて、バンドメンバーとピタッと動きを合わせた「パープルアイシャドウ」。グリーンのエレキギターを手にしてギターソロを披露した「RUMIKO」。そして「桃源郷白書」は、エキゾチックなサウンドに合わせて、中国の民族舞踊のようにゆったりとした動きと共に甘美な歌声でファンを魅了した。

 このツアーには、降幡のライブではすでにお馴染みになったコーラス/サックスの会原実希、降幡が「振り向けば安心のnishi-kenさん」と絶対的な信頼を寄せるバンマスでキーボーディストのnishi-ken。また、この日がデビューライブだったという20歳の女性ドラマーのたにお、ベースのタケウチカズヒロ(フラチナリズム)、ギターの木島靖夫と、音にこだわりを持つ降幡も大満足のメンバーが集まった。MCではタケウチの占いの話なども飛び出すなど、ツアー初日とは思えないチームワークの良さを見せつけ、グルーヴ感溢れるサウンドで降幡を支えた。

 「今日も不安な気持ちで会場に来てくださった方もいると思います。そんな方の不安を取り除いて、活力をあげたい」と、観客への心配りを感じさせる場面も多々あった。「ルバートには気をつけて!」では客席に手を振るなどして愛を振りまき、「シンデレラタイム」ではしゃがみこんで、最前列の観客に直接語りかけるように歌う。「一人一人に愛を……」との言葉の通り、積極的に目を合わせに行く姿が印象的だった。

 この日唯一のバラードナンバー「OUT OF BLUE」は、非常に聴き応えがあった。80年代のメガヒットバラード、シカゴの「素直になれなくて」を彷彿とさせる、スケールの大きなサウンドが秀逸で、<もうあの頃には戻れない>という冒頭のフレーズが、今の時代に実に響く。終わってしまった愛を大切に抱きしめるように、情感たっぷりに歌い上げた降幡のボーカルに、ギュッと胸が締め付けられる思いをしたファンは多いだろう。

 ライブ終盤は、これぞライブといったノリのいい楽曲で会場を熱くさせた。アカペラで歌い上げるように始まり、途中でテンポアップして、サビでこぶしを振り上げた「SIDE B」。抑えていたものを爆発させるように、まるで絶叫するようなロングトーンを響かせると、会場から心の大歓声と大きな拍手が贈られた。

 「踊る準備はいいですか!」と声をかけて始まった、アッパーのスカロックナンバー「Yの悲劇」。<もう、YADA・YADA・YADA・YADA>というサビは、歌に合わせて体でYの字を作る振り付けで盛り上がる。間奏ではコーラスの会原実希が前に出てサックスソロを披露。降幡はステージを跳ね回るように動き回りながら、熱い歌声を響かせた。そして降幡のデビュー曲で夜の街を疾走するような「CITY」では、ギターの木島と背中合わせになって歌う場面もあり、最後はジャンプで決めた。

 「初めてとは思えない一体感です!」と、うれしさを爆発させた降幡。本編の最後には、「さよならは、悪いことばかりではない。先へ進むきっかけにもなる」とコメントして、「AXIOM」のB面に収録の「うしろ髪引かれて」を歌った。どこか大陸的なムードのリフ、ボーカルとユニゾンで鳴り響くソリッドなギター。そして別れの切なさを振り切るような、力強さとかっこよさが同居したボーカル。サビの<Bye bye・・・>というフレーズと共に、降幡は笑顔で手を振った。

 アンコールでは、何の前触れもなく新曲「シークレット・シュガー」を初披露してファンを驚かせた。モータウンを思わせる軽快なリズムのポップな楽曲で、冒頭には鐘の音、間奏ではギターによる「結婚行進曲」のフレーズが飛び出す。会場は「まさか」とザワついたものの、真相はレーベルのスタッフの結婚祝いのために作った曲であるとのこと。まるでドッキリを成功させたかのような、したり顔で、「驚いた?」と笑った降幡が実にお茶目だった。

 アンコールの2曲目には「真冬のシアーマインド」を披露。スキーの動きを取り入れた振り付けも楽しく、<スリーツーワン!>というかけ声に合わせて、パパンパパンとクラップが会場に響く。そしてアンコールのラストには、「「AXIOM」を、みんなと心の中で歌いたいです」と、ツアーのテーマ曲である「AXIOM」をもう一度。今度はギターを提げ、曲中でも印象的なギターのハーモニクスを降幡が演奏する。彼女とバンドがより一体となった「AXIOM」に、すでに覚えた振り付けを踊って応えた観客。初ツアーの初日とは思えない一体感で、ライブを締めくくった。

 「一人一人に愛を届けたい」。ライブを通して、何度もこの言葉を口にしていたのが印象的だ。自分を輝かせてくれるファンに自分がしてあげられることは、一人一人に愛を贈ること……。コロナ禍というアーティストにとっては最悪の状況でソロデビューした彼女にとって、自分を支えてくれるファンの存在がどれほど大きいかは、想像に難くない。それに応えたいという、彼女の思いを遂げたツアー。降幡が標榜する80年代とシティポップの世界観で、ファンの声援と期待に見事に応えてくれた。

Text by 榑林史章
Photo by 江藤はんな ( SHERPA+ )


◎公演情報
【降幡 愛1st Live Tour APOLLO】
2021年4月18日(日)神奈川・KT Zepp Yokohama
アーカイブ配信:2021年5月5日(水)23:59まで
生配信ライブ視聴券販売中

◎配信情報
シングル『AXIOM』
配信中

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