2021/02/08
ザ・ウィークエンドが、現地時間2021年2月7日に開催された【第55回NFLスーパーボウル】のハーフタイム・ショーで、自身のヒット曲を網羅しながら最新アルバム『アフター・アワーズ』のきらびやかで不穏な世界観を、ポップなライブ・エンターテインメントに昇華させた。
今やトレードマークとなった赤いスパンコールのジャケットを着た彼は、「コール・アウト・マイ・ネーム」のイントロで颯爽とオープンカーで登場し、ロボット風の無機質なコーラス隊をバックにまず「スターボーイ」からセットを開始した。大量のコカインを吸引できる恋人が好きだという歌詞が登場するこの楽曲の次に、歪んだ性的関係を歌っている「ザ・ヒルズ」を屋外で披露した彼は、無数のライトが輝くステージ裏の狭い空間に移動し、「キャント・フィール・マイ・フェイス」を、顔面が白い包帯に覆われた多数のドッペルゲンガーにもみくちゃにされながら歌い切った。
ウェディングでもかけられるような、尊敬する故マイケル・ジャクソンを彷彿とさせると評価されたこのアップテンポの楽曲ですら、狭苦しい空間で不安感をあおる演出がなされていたが、どれほど楽曲や演出が奇妙であろうとも、ザ・ウィークエンドのショーマン・エネルギーに迷いはなく、2年前のハーフタイム・ショーで「シュガー」を上半身裸で歌っていたアダム・レヴィーン(マルーン5)と自身の間には何も違いはないと言わんばかりの態度を崩さなかった。(フルコーラスでパフォーマンスを披露した上記3曲は全て全米No. 1を獲得しているので、本当に違いはないのかもしれない。)
音響面で若干トラブルがあったほかに、あえて欠点を挙げるとするならば、圧倒されるような瞬間の欠如だろう。彼は事前の記者会見で、“物語にはめ込む余裕がないから”という理由でゲストの出演は予定していないと宣言しており、その物語が主に自身のソロ・スーパースターダムへの進化過程を描いているものであることを考慮すれば、この判断は驚くことではなかったのかもしれない。しかし、ゲストを呼ばなかったことで、ライブの中盤における効果的なブーストがなかったこともまた事実だ。ザ・ウィークエンドの成長を大なり小なり支えてきたドレイク、ラナ・デル・レイ、ダフト・パンク、ケニー・Gなどのアーティストが登場することにより、彼のトレードマークとなった“モノマニア”(偏執狂)的なエネルギーとは異なる要素が加わり、より厚みのある世界観になっていたかもしれない。
とはいえ、往年のファンにとっては嬉しいサプライズも盛り込まれていた。満を辞してフィールドで展開されたクライマックスは、ザ・ウィークエンドの初期を代表する「ハウス・オブ・バルーンズ」から開始された。スージー・アンド・ザ・バンシーズを引用したこの楽曲がマーチング・バンドのテンポで演奏され、フィールドを多い尽くす仮面のドッペルゲンガーたちが規則正しく行進する。そして徐々にスピードアップしながらシームレスに現在のヒット曲「ブラインディング・ライツ」に移行すると、不気味さと華々しさが混沌としたエネルギーを放つ会場から、ザ・ウィークエンドは渾身のパフォーマンスでハーフタイム・ショーを締めくくった。
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