2020/12/22
LiSAが12月12日、配信ライブ【ONLiNE LEO-NiNE】を開催した。
デビュー当初から数々のアニメ作品を音楽で彩り、TVアニメ『鬼滅の刃』オープニング・テーマの「紅蓮華」、そして10月に公開された『劇場版「鬼滅の刃」 無限列車編』主題歌の「炎」の社会現象的なヒットによって、いよいよその知名度をお茶の間レベルにまで広げたLiSA。一方で、フェスや対バンなどでバンド・シーンとの高い親和性も見せた彼女は、ファンとのコミュニケーションを“LiVE”という場にこだわり続けるミュージシャンシップと、その生き様を刻みつけるようなアツいパフォーマンスが支持を集めるロック・ヒロインでもある。
そんな彼女のアーティスト像を分かりやすく象徴する開幕2連打となったのが、「僕を待ってる幕 ほら開け幕/段取りを待てないんだ」と歌い出す、田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)の作詞作曲による圧倒的なボジティビティに満ちたオープナー「マコトシヤカ」と、同じく田淵が作曲した映画『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』主題歌の「Catch the Moment」だ。バンド陣を含む演者のパフォーマンスも前のめりモードで、のっけから助走なしの容赦ないロケット・スタートとなったわけだが、巨大な骨組みに照明を設置したセットはライブハウスを連想させる景色で、チェックシャツをリメイクしたようなインナーに穴だらけのデニム・ジャケットを羽織ったLiSAの衣装も、パンキッシュなムードに拍車をかけていた。舞台上から放たれる激しい熱はすぐに画面の向こう側にも伝播し、チャット上ではものすごいスピードでコメントが流れていく。
「この特別、全部届けるからね。受け取って!」と叫んで披露した3曲目は「晴レ舞台」。昨年末の『第70回NHK紅白歌合戦』に際しての気持ちをリファレンスとしながら、歌と向き合ってきたLiSA自身を思い描いたこの曲は、コロナ禍の苦境を経て2度目の“晴れ舞台”を間近とした今、特別な感慨が溢れるナンバーでもある。
10月14日にシングル『炎』と同時リリースされた最新アルバム『LEO-NiNE』の名を冠した今回のライブで展開されたのは、アルバムの新曲群を軸にしながら、随所に定番ソングも配置した盤石のライブセット。カラフルな毛皮のジャケットに着替え、「最高に楽しんでいきましょう。ピース!」とお決まりの挨拶から始まった「エレクトリリカル」は、目の覚めるようなチップチューン・シンセを鳴らすダンス・ポップで、振付レッスン付きのオーディエンス巻き込み型ナンバー。二人のダンサーを加えた布陣、レトロ・ゲームを思い出させるピクセル・アートの映像エフェクトといった視覚的演出も楽しい。
続いては一転、アンビバレントな愛憎の炎にオリエンタルな趣を纏わせるミドル・バラード「愛錠」へ。アルバム『LEO-NiNE』を一聴して気づくのは、LiSA史上最多方面に広がるサウンドのバラエティだ。それは、このアルバムがライブ・アーティストを自称するLiSAにとって、おそらく初めてライブが日常から切り離されてしまった状況下で送り出した作品であり、“デート(ライブ)”に誘うための“ラブレター(CD)”ではなく、もっと根源的な“曲を通して思いを伝える”ための音楽作りの意義について自問した1枚だからだ。その結果として『LEO-NiNE』の楽曲は、むしろ彼女のライブ・パフォーマンス面においても、新たな可能性を切り開いたように思う。とりわけ「愛錠」から静謐なエレクトロニカに味わい深いストリングスを重ねる「わがままケット・シー」への流れは白眉で、LEDモニターと化した床に寝そべり、内から漏れ出す情念に疼き悶えるようなLiSAのパフォーマンスは、同じくコケティッシュ路線の「DOCTOR」や「蜜」とはまた違う、マチュアな妖艶さが表出した一幕だった。
いつの間にか床だけでなく全方位をLEDモニターが囲み、躍動する幾何学模様の赤い光が幽玄な世界観を作り上げた「unlasting」に続き、急転直下でなだれ込んだオルタナ色強めのモダン・ロック「cancellation」は、背後の眩いライトに照らされた演者のシルエットが浮かび上がる絵面。そして、バンドのジャジーなセッションが先導した「赤い罠(who loves it?)」の高速ビートに導かれるように、いよいよショーはクライマックスへと向かっていく。なんといっても「炎」と「紅蓮華」の2連打は文句なしのハイライトで、底抜けの哀愁と図抜けたハイエナジー、調和と暴走を自由に行き来する静と動の表現は、彼女のパフォーマーとしての真骨頂だろう。
力強いストンプとクラップ、惜しみなく吹き上がる炎柱、ダンサーとの息の合った踊りでも魅せた「play the world! feat.PABLO」、もはや鉄板キラーチューンとしての貫禄すら感じる「Rising Hope」、そして極大のサウンド・スケープを描くアンセム「ADAMAS」を経て、フィナーレを飾ったのは「ハウル」。ラストスパートでまさしく心身を削るような迫真のパフォーマンスを展開しながら、最後まで「枯れるまで吠えてやれ」と自他共に鼓舞する締めくくりは、アルバム『LEO-NiNE』に込められた「未来を最高だと信じながら、どこまでも進んで行けますように。」という祈りとも重なり、かくも彼女らしい。このライブから数日が経った今でも、最後に彼女が叫んだ言葉が、頭の中で山びこのように反響し続けている。「もっともっと最高の未来が、私たちに待っていますように! 今日を超えていけ! もっともっと超えていけ!」
Text by Takuto Ueda
Photo by 上飯坂一
◎公演情報
【LiSA ONLiNE LEO-NiNE】
2020年12月12日(土)
<セットリスト>
1. マコトシヤカ
2. Catch the Moment
3. 晴レ舞台
4. エレクトリリカル
5. 愛錠
6. わがままケット・シー
7. unlasting
8. cancellation
9. 赤い罠(who loves it?)
10. 炎
11. 紅蓮華
12. play the world! feat.PABLO
13. Rising Hope
14. ADAMAS
15. ハウル
関連記事
最新News
関連商品
アクセスランキング
インタビュー・タイムマシン
注目の画像