2020/11/16
2020年11月16日付のHot 100では、King Gnuの新曲「三文小説」が先週の11位から10位へじわりとチャートの順位を上げている(【表1】)。この曲は彼らにとっておよそ9か月ぶりの新作ということもあってそれだけでも話題だが、日本テレビ系のドラマ『35歳の少女』の主題歌にもなっている。
「三文小説」のチャートの動きはとてもオーソドックスで、きっちりと段階を踏んで話題作りをしているという印象だ。9月に主題歌となったことが告知され、10月に入ってから正式にリリースを発表。その時点の10/26付のHot 100では、ツイッターのポイントのみ32位まで上昇している。その後ラジオのオンエアが始まったことにより、11/2付ではラジオのオンエア回数が14位と一気に上位に入ってきた。しかしこの時点で総合チャートはまだ圏外である。
大きなアクションとなったのが、先週11/9付。10月30日からダウンロードとストリーミングで先行配信がスタートしたことにより、ダウンロードでは4位、ストリーミングでは47位という好スタート。Hot 100でも11位にまで上昇した。そして今週はダウンロードが3位、ストリーミングが一気に16位まで右肩上がりとなっているのだ。
ここで注目したいのはストリーミングの動きだ。彼らのブレイクした楽曲「白日」は、ストリーミングと動画再生で大きくポイントを伸ばしてロングヒットとなった。今回もストリーミングが一気に伸びたことに加え、11月6日にMVがプレミアム公開されており、動画再生数も今週は12位を記録している。おそらく彼らの特性を考えると、配信や動画に関わるポイントは大きく落ちることは無いだろうし、そこを粘り強く上位でキープさせた上で、12月2日のフィジカルのリリースを迎えることにより、一気に上位に食い込んでいくのではないだろうか。
King Gnuは配信に強いアーティストであるが、ビッグになったことでフィジカルの動きも無視できない状況となった。そのため、このように段階を踏んで話題を積み上げている。逆にいえば、アイドル系などフィジカルをメインにするアーティストにとってもKing Gnuのやり方はヒントになるはず。ヒットの法則は一律ではないが、ある種の“型”がこの「三文小説」にあるといってもいいだろう。Text:栗本斉
◎栗本斉:旅&音楽ライター、選曲家。レコード会社勤務の傍ら、音楽ライターやDJとして活動を開始。退社後、2年間中南米を放浪し、現地の音楽を浴びる。その後フリーランスとして活動した後、2008年から2013年までビルボードライブのブッキングマネージャーに就任。フリーランスに戻り、雑誌やライナーノーツなどの執筆や音楽評論、ラジオやストリーミングサービスにおける構成選曲などを行っている。
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