Billboard JAPAN


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2020/09/25

<ライブレポート>結成20年目の再始動で紡ぐブレない意思と繊細な心模様 ソロ活動を経たWyolicaが発する、デビュー作に込められた癒しと勇気のヴァイブレイションに浸る秋の夕べ

 デビュー20周年の節目に再始動したWyolica(ワイヨリカ)が初のビルボードライブツアーを開催。2020年9月19日に行われたビルボードライブ東京公演のライブレポートが到着した。

 細かい粒子になった音、そしてデリケートに揺れる歌声が会場の隅々まで広がり、身体の奥深くまで染み込んでいく――。

 「ようやく念願が叶ったんです。マスク越しでも、みんなの笑顔が伝わってくるよ。今日は、20年を振り返りながら、ライブを楽しんで」と満面の笑みをこぼすAzumi。彼女もso-toも、もちろんファンも心待ちにしていた、空間を共にするひととき。2人にとって初となった『ビルボードライブ東京』のステージは、何度かの延期を経ての仕切り直し。しかし、音楽を共有したいという両者の“想い”が舞台と客席を1つに繋げ、ライブだからこその“特別さ”を肌で確かめ合っていく。ポジティヴなヴァイブが滲み、溢れ、漂う、胸の高鳴る時間が流れていった。

 デビュー・アルバムのナンバーを改めて奏でるコンセプチュアルなライブ。ステージの上と下を行き来するように“観客とアーティストの20年”が反芻される。生身の息づかい。そして、SWING-O(key)、澤田浩史(b)、みどりん(dr)といった気の置けない仲間たちで固められたバックの音とシンクロしながら、Azumiの声がしなやかに舞う。ときに溌剌とパッションを弾けさせ、また別の瞬間には凍えた雛鳥のようにデリケートな声で、聴き手のハートに寄り添っていく。

 1999年に大沢伸一のプロデュースでメジャー・デビューしたAzumiとso-toのデュオ=Wyolica。2人はブレない意思と繊細な心の移ろいをピュアに表現し、「風をあつめて」や「愛をうたえ」「さあいこう」といった印象深いナンバーを放ってきた。だが、2005年にそれぞれがソロ活動に。その後、翌年にはファンクラブ対象のマンスリー・イベント「Folky Soul Night」、08&09年には沖縄・宮古島でのフェスへの参加、そして10周年の『キネマ倶楽部』や『グローブ座』などでの公演を行い、かけがえのない存在感を改めて実感させてくれたものの、13年に解散。しかし、デビュー20周年の節目となった昨年、再結成して「Beautiful Surprise」をリリース。さらには今年、名作ファースト・アルバム『who said “LaLa…”?』をアナログで再発。ふくよかなフォーキー・ソウルが、不安を抱える今の僕たちを癒し、勇気づけてくれている。

 身体の奥深くから繊細に、そして切なげに紡ぎ出される歌。時折、以前よりも、やや鎮静した印象を抱かせるシーンにも出くわすけど、それはきっとAzumiの歌声が深化し、より内省的な表現領域に踏み込むようになったからだろう。また、2人だけで奏でられるアコースティックなセットでは、瑞々しい音粒を紡ぎながら歌に寄り添うso-toのギターに鳥肌が立つ瞬間が何度も。決して他とは替えの利かない、歌心溢れる旋律がつま弾かれていく。メロディアスで美しい――ときには儚さも漂う曲がセレクトされた今回のライブは、優しい肌ざわりが渇いた心を解き放ってくれた。

 ステージが進行するにしたがい、心地好いリフレッシュ感とリラックス感が満ちていく。コロナ禍の状況を受けてフロアの座席配置も一新され、アーティストと正対する観客は、繋がった“見えない糸”を確かめるかのように、真摯な眼差しを注ぎ、大きく手を振り、身体を揺らしながら楽曲と一体になっている。終盤にはグルーヴィなナンバーも繰り出され、会場が軽快に躍動するシーンも――。

 まさに今の状況にふさわしい、ハートウォーミングな歌と演奏を満喫させてくれたWyolica。アンコールでは、昨年リリースした新曲を披露。秋の匂いが満ち始めた都会に囁きかける言葉。込み上げる感情を抑えつつ発した歌詞が、ステージの後方に広がる夕まずめのビル群と溶け合っていった。

 表現者として一段階成長した2人のステージは、ウィズ・コロナの時代を生き抜く勇気を抱かせてくれる、癒しと慈愛に満ちた90分になった。

 10月20日には大阪でも行われるWyolicaのステージは、1つの空間で音と時間を共にする醍醐味を鮮やかに思い起こしてくれる。“今”という時代の気分を2人と分かち合いながら、ささくれがちな心に癒しと潤いを! ぜひ、足を運んでみて欲しい。

 現在、Wyolicaのオンラインストアでツアーのオリジナル・グッズを販売しているのでこちらもチェックして欲しい。
詳細:https://wyolica.official.ec


Photo by Masanori Naruse

◎公演情報
【Wyolica
20th Anniversary Premium Live-who said “La La…”? Billboard Tour 2020-】
2020年9月19日(土)ビルボードライブ東京 ※終了
2020年10月20日(火)
ビルボードライブ大阪
1st Stage Open 17:30 Start 18:30
2nd Stage Open 20:30 Start 21:30

<Member>
Azumi (Vocals)
so-to (Guitar)
SWING-O(FLYING KIDS)(Piano, Keyboards)
澤田浩史(Bass)
みどりん(SOIL&“PIMP”SESSIONS)(Drums)

詳細:http://www.billboard-live.com/

Wyolicaプロフィール:
札幌市出身Azumi(vo)と大阪府出身so-to(gt,プログラミング)による音楽グループ。99年5月に大沢伸一プロデュースでデビュー。ブラック・ミュージックを軸に切ない歌詞や洒落たセンスとポップ感覚を合わせた甘酸っぱいサウンドで人気を博す。2013年の解散発表後はソロで活躍していたが、デビュー20周年を期に再結成を発表した。

TEXT:安斎明定(あんざい・あきさだ) 編集者/ライター
東京生まれ、東京育ちの音楽フリーク。11月19日のボジョレー・ヌーヴォー解禁を控え、来月あたりから欧州の“新酒”が店頭に並ぶ季節。片や5月くらいから届いていた南半球の2020年産ワインは、そろそろ出荷終了の時期だけど、今年はぜひとも試しておきたい高品質な仕上がり。例えばシュナン・ブラン種で造られた南アの『IMBUKO NOUVEAU/2020』は、リーズナブルな価格ながら、アプリコットを連想させるコクのある甘さと、シトラスに似た爽やかな酸が絶妙のバランスで寄り添い、適度な凝縮感を伴いながら口中に広がる。まさに、デイリー・ワインの理想形とも言える奇跡的な飲み心地をシンプルに楽しんでみて。

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