2020/08/04 12:00
山下達郎が、初のオンラインライブ【TATSURO YAMASHITA SUPER STREAMING By MUSIC SLASH】を、7月30日20時より配信した。
45年に及ぶキャリアの中で、映像作品のリリースは一切なし、ライブ映像の公開もシアターライブのみであった山下達郎が、自身プロデュースのもと、満を持して開催したのが今回のオンラインライブである。映像は、2018年に京都・拾得で行われたアコースティックライブと、2017年に出演した【氣志團万博2017】、さらに、1986年に開催されたツアーより2曲がサプライズで配信された。
今回の配信で最も注目されたポイントは、音の良さだ。配信プラットフォームには、業界史上最高レベルの音質(AAC-LC 384kbps※)を実現した動画配信サービス<MUSIC/SLASH>を使用。さらにエンドクレジットには、近年の山下達郎作品のミックス、マスタリングを手掛けるエンジニアの中村辰也、菊地功両氏の名前があったことからも、本配信への意気がうかがえる。また、チケット購入者の視聴環境がそれぞれ異なるなか、最高の形でライブを届けるべく、開演前には「ブラウザ以外のアプリは終了させる」「配信ページ以外のタブはすべて閉じる」など、従来の配信ライブでは聞いたことがないアナウンスが流れたことも特筆しておきたい。
※ 主な動画配信サービスの音声ビットレートは192kbps
そんなこだわりが詰まった今回の配信ライブは、リアルなライブ体験の感覚もありつつ、リアルライブよりも“じっくり聴く楽しさ”が感じられたライブだった。前半は、2018年に京都・拾得にて開催されたアコースティックライブより、選りすぐりの6曲を配信。オープニング・ナンバーは、1991年にリリースされた「ターナーの汽罐車」だ。山下達郎(Vo.&Gt.)、難波弘之(Pf.)、伊藤広規(Ba.)の三人が繰り広げるセッションは、原曲の開放的な雰囲気を残しつつも、独特の緊張感が漂う。
軽い挨拶を挟んだ後は、エレクトリックピアノのメロウな響きが心地良い「あまく危険な香り」、快活なベースラインが印象的な「砂の女」と、各々のプレイヤビリティが光る楽曲が続いた。また、「希望という名の光」と「SINCE I FELL FOR YOU」では、山下の歌をフィーチャーするように、バックのアレンジはシンプルに。「希望という名の光」の円熟味のある歌唱と、「SINCE I FELL FOR YOU」のがなり声を交えたブルージーな歌唱のコントラストは出色だった。そしてラストは、マーヴィン・ゲイの名曲「WHAT’S GOING ON」を打ち込みドラムありでカバーし、グルーヴィーに締めくくった。
後半は、2017年に出演した【氣志團万博】のライブの模様をノーカットで配信。綾小路翔(氣志團)による紹介VTRを経て、ステージに山下達郎とバンドメンバーが登場。台風が徐々に迫り、レインコート姿のオーディエンスがフロアを埋め尽くす中、「ハイティーン・ブギ」からライブはスタートする。サックスやコーラス隊を含めた総勢10名による演奏は、画面越しでもかなりの迫力だ。「山下達郎です!よろしく!」と挨拶し、そのまま「SPARKLE」のお馴染みのギター・カッティングへ突入。さらに、強まる雨と風を考慮して、「レパートリー変えました。バラードやめます! ここから一気に行きます!」と宣言。間髪入れずに「BOMBER」「硝子の少年」へとなだれ込む展開は、映像で観ても思わず胸が熱くなる。
「アトムの子」からは、ゲストコーラスに竹内まりやが参加。ライブの盛り上がりにもいっそう拍車がかかる。「恋のブギ・ウギ・トレイン」では、山下自身が花道に出て、ギター・カッティングを炸裂。降りしきる雨さえも演出の一部かのようなその光景に、客席からは大きな歓声が上がった。「雨の中、本当にありがとうございます。また(氣志團万博)出していただけたらと思います」とオーディエンスに感謝を告げながら、「夏の最後なので、この一曲を」と、「さよなら夏の日」でこの日のライブは幕を下ろした。
そして、配信のラストには、事前に予告されていなかった嬉しいサプライズが。1986年に行われた全国ツアーより、郡山公演の「SO MUCH IN LOVE」、中野サンプラザ公演の「プラスティック・ラブ」がオンエアされたのだ。おそらく当時からライブ録音にはかなりのこだわりがあったであろうことが推測できる音の良さに加え、青山純(Dr.)らによる演奏の素晴らしさ、楽曲の色褪せなさもあってか、34年前とは思えないほど臨場感に溢れた映像だった。
セキュリティーの問題や、視聴者それぞれのパソコン、インターネット環境の違いなど、ライブ配信における課題はまだまだ多い。なかでも画質や音質といった品質の面は後回しにされがちだが、今回の“リアルなライブ体験をいかに再現するか”を追求した配信を見て、それらが改善されれば、オンラインライブの可能性はさらに広がるのではないかと感じた。今回の配信は、山下達郎とそのチームだからできたことも多いかもしれない。また、どれだけ高品質が実現しようと、リアルライブの代替にはならない。しかし、視聴者が自ら整えた環境の中でライブを楽しむという選択肢も、ライブ体験のもう一つの形として、コロナ禍収束後も残って良いのではないだろうか。
なお山下達郎は、9月より【山下達郎 Special Acoustic Live展】を全国各地で順次開催予定だ。
Photo:濵田志野(京都「拾得」)/菊地英二(氣志團万博)
◎ライブ情報
【TATSURO YAMASHITA SUPER STREAMING By MUSIC SLASH】
2020年7月30日(木)20:00~
<セットリスト>
≪京都「拾得」2018年3月17日(土)≫
1. ターナーの汽罐車
2. あまく危険な香り
3. 砂の女
4. 希望という名の光
5. SINCE I FELL FOR YOU
6. WHAT’S GOING ON
≪氣志團万博 2017年9月17日(日)≫
7. ハイティーン・ブギ
8. SPARKLE
9. BOMBER
10. 硝子の少年
11. アトムの子
12. 恋のブギ・ウギ・トレイン
13. さよなら夏の日
≪郡山市民文化センター 1986年10月9日(木)≫
14. SO MUCH IN LOVE
≪中野サンプラザホール 1986年7月31日(木)≫
15. プラスティック・ラブ
CLOSING(THAT’S MY DESIRE)
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