2020/07/22
ギターとボーカル(時にソプラノ・サックス)という最小限の編成で次々と紡がれる、ミュージカルや映画由来の名曲に不朽のポップ・スタンダードの数々。劇団四季の名俳優として長くキャリアを重ねた後に近年はより幅広いフィールドで活躍を続ける石丸幹二と、超絶ギタリストにしてこちらもジャズだけにとどまらない多彩な音を自在に弾きこなす吉田次郎のデュオは、新型コロナウイルスの影響で2月末から公演中止が続いてきたビルボードライブ大阪に改めて音楽の息吹きを注入していくような、上質にして感慨深いライヴ・パフォーマンスで会場と集まった観客を満たしてくれた。
まずは拍手に迎えられてギタリストの吉田のみが登場し、スウィンギンなギターを奏で始めると、続いて黒いマスクを着けた石丸が登場してさっとマスクを取り、陽気なパリの街角へと誘うような「オー・シャンゼリゼ」からハートフルに幕開け。続く「ネバーランド」では、石丸が前奏と間奏でボーカルだけでなくソプラノ・サックスも演奏し、シンプルなデュオながら変化に富んだステージングで魅了した。
カリビアン・スウィング調のギターを伴って聴く者を高揚させる『リトル・マーメイド』でおなじみの「アンダー・ザ・シー」、一転して叙情的な『ラ・マンチャの男』で知られる「見果てぬ夢」など。ミュージカル関連の名曲を続けると、ちょうどビルボードライブ大阪と同じビルの上階で公演を再開した古巣の劇団四季のことについてMCで触れながら、「では、次は『ライオン・キング』の曲を」とエレキ・ギターをバックに劇中歌である「お前の中に生きている」をミュージカルの一幕を思わせるシアトリカルなタッチで熱唱。続いては、コロナ禍での生活のことにも言及しながら「新しい生活の中で、励みになる曲を2曲用意しました」とMCした後に、しっとりと聴かせるなかにも前向きなメッセージを含んだナンバーを取り上げ、観客からマスク越しの"スマイル"を誘った。
ここで再び石丸がミュージカル歌手の道へと進む前に東京音楽大学で学んだソプラノ・サックスを手にして、映画『ラ・ラ・ランド』と名作『ウェスト・サイド物語』の劇中曲をジャジーなインストで演奏。付け焼き刃ではない本格的なプレイでマルチな才を示すと、「お客さんと一緒にステージを過ごす。こんなに嬉しいことはない」と今回の公演が実現できたことに改めて感謝の意を伝え、ライブはいよいよ佳境へ。本編ラストは、情感豊かな歌声で心を揺さぶるシャンソンの名曲「愛の讃歌」、そしてジャズ、ブルース、ボサノヴァなどの多彩な要素を自在に横断しながら高揚感を高めていく吉田の巧みなギターワークを伴って大団円にふさわしい「マイ・ウェイ」を高揚感たっぷりに歌い上げて、古今東西の様々な名曲を織り 込んだ全11曲を豊かに駆け抜けた。
アンコールでは、ナット・キング・コールの名唱で親しまれる軽快なスタンダード「L-O-V-E」、そして吉田がグランド・ピアノを弾き、満天の星空を模した照明も印象的だった「見上げてごらん夜の星を」と続け、心地よい余韻を残してステージは幕へ。ビルボードライブ大阪の再開を飾ったこの実力派デュオでの公演は、7月26日にこちらも本格的に始動したばかりのビルボードライブ横浜にて行われる。
Photo by 桑島 薫
Text by 吉本秀純
◎公演情報
【石丸幹二&吉田次郎
KANJI & JIRO“Something’s Coming“アルバムリリース記念ツアー】
ビルボードライブ大阪
2020年7月21日(火)※終了
ビルボードライブ横浜
2020年7月26日(日)
1stステージ 開場14:00 開演15:00
2ndステージ 開場17:00 開演18:00
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