2020/03/28
先週も書いた通りに引き続き、今週のHot100はちょうど1月クールのドラマが最終回を迎えるタイミングということもあり、ドラマ主題歌がじわじわと上昇している。今回注目したいのは、そんなドラマ・タイアップであるUruの「あなたがいることで」だ(【表1】)。TBS系ドラマ『テセウスの船』の主題歌であるこの曲は、2月9日にデジタル・リリースされ、じわじわとチャートを上昇。今週は最高位である9位を記録した。
このシングルはフィジカルのCDがリリースされておらず、ダウンロードとストリーミングのみ。Uruにとっては初のデジタル・オンリーのリリースである。3月18日にセカンド・アルバム『オリオンブルー』が発売され、その中にも収録されているので、あえてCDリリースをしなかったのかもしれないが、それでも楽曲単体のポイントが伸びているので、戦略は成功といってもいいだろう。特にストリーミングや動画再生数が右肩上がりなのが注目すべき点だ。これはまさに、ロングヒットの傾向といえるかもしれない。
彼女の楽曲では2018年リリースの「プロローグ」も同様にドラマ・タイアップだったが、こちらはフィジカルのCDもリリースしていた(【表2】)。比較してみると、ダウンロード数は上位で横ばい状態だったが、動画再生数もストリーミングも、今回ほど伸びてはいない。カラオケやルックアップ(PCによるCD読み取り数)では健闘していたとはいえ、CDのセールスが下降するとまもなくチャートも圏外になっている。しかし、今回の「あなたがいることで」の伸び方を見ていると、さらなる上昇も期待できる。Official髭男dism「Pretender」やKing Gnu「白日」も似たような動きをしていたといえばわかりやすいだろうか。
もちろん、アルバムのセールスやテレビ出演の有無、カラオケでの歌われ方など様々な要素によって長くヒットするかどうかは変わってくるが、もともとUruはYouTubeでカヴァー動画を配信して人気を集めたということもあり、ストリーミングを利用するグレーユーザーとの親和性も高いはず。なんとか粘ってこの曲をロングヒットさせることができれば、さらなる大ブレイクが待っているかもしれない。Text:栗本斉
◎栗本斉:旅&音楽ライター、選曲家。レコード会社勤務の傍ら、音楽ライターやDJとして活動を開始。退社後、2年間中南米を放浪し、現地の音楽を浴びる。その後フリーランスとして活動した後、2008年から2013年までビルボードライブのブッキングマネージャーに就任。フリーランスに戻り、雑誌やライナーノーツなどの執筆や音楽評論、ラジオやストリーミングサービスにおける構成選曲などを行っている。
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