2020/01/11 12:00
明けましておめでとうございます。本年も、よろしくお願い申し上げます。皆様にとって、2020年が素晴らしい1年になることを祈念いたします。
いまだから話すことができるが、私にとって2019年は、「静かなストレス」にさいなまれた1年だった。他人に相談できないような悩みを抱えている方も、少なくないのではないだろうか。私は、年末に休みを捻出し、宮崎県の高千穂や熊本県の天草などを訪れ、さまざまな思いを巡らせた。そのおかげで、負の連鎖から心が解放され、気分も新たに新年を迎えることができた。
そんな2019年、私は数多くの音楽を聴いた。仕事柄、国内外のポップ・チューンは、毎日、何十曲も耳にしているが、基本的にオフィスで聴くようにしている。私にとって音楽は仕事。だから、最新の潮流は仕事場で掴むようにしているのだ。
プライベートな音空間はサブスクリプションだ。敬愛する音楽プロデューサーの牧村憲一さんは、「14歳の頃に聴いていた音楽に、人は回帰する」と言ったが、昨年は、まさにその通りの1年になった。ジェネシス、ポリス、ウルトラヴォックス、デヴィッド・ボウイ、ロキシー・ミュージック、U2、バグルス、ニューオーダー、サイケデリック・ファーズ、イエス、ピンク・フロイドらと、そのメンバーのソロ作など、10代の頃に大好きだった楽曲が、再生回数の上位を占めた。秋頃からは、チャイコフスキー、マーラー、ストラヴィンスキー、ベートーヴェンら、クラシック音楽も増えてきた。アメリカのアーティストでは、EW&F、ディーヴォ、プリンス、ドン・ヘンリー、ティル・チューズデイ、ルー・リードらが目立った。日本からは、YMOとその周辺の方々の音楽が大多数だった。大滝詠一さんや山下達郎さんの曲がサブスクにあれば、間違いなくヘビー・ローテーションになったと思う。
どれも、相模湾を見つめながら過ごしたティーンの時に心に刺さった、ルーツ・ミュージックといえる曲ばかりだ。青春時代は辛いことだらけだったが、音楽が心の傷を癒してくれた。音楽が、生きる希望だった。おそらく、ストレスとの闘いの中で、当時の音楽を無意識のうちに求めたのだろう。
仕事を納めると、不意に大学時代に好きだった音楽を聴きたくなった。東京では、私は中央線が見える部屋で一人暮らしをしていた。東海道線から中央線へと、日常風景が変わった。少し大人になった私が心を奪われたのは、ジャズだった。YMOのワールドツアーでサポートギターを務めた渡辺香津美さんをきっかけに、彼と共演した国内外のアーティストを聴きあさった。社会人になり、香津美さんとはさまざまな仕事をご一緒することとなったが、特にアメリカ・ウッドストックのスタジオで、マイク・マイニエリとスティーブ・ガットが中心メンバーである「リマ―ジュ」の取材をした時は、鳥肌が立った。
学生時代に、東西冷戦は終わりを告げた。音楽シーンでも、マンチェスターで「マッドチェスター」、シアトルで「グランジ」、モスクワで「ペレストロック」、東京で「渋谷系」など、変革を告げるムーブメントが同時多発的に誕生した。私は世界へと思いを馳せながら、夜な夜なTHE BOOMの「中央線」を口ずさんでいた。宮沢和史さんが東京で初めて住んでいたところが、私の下宿の近くだと知ったのは、つい最近のことだ。
今年も、ONで「新しい音楽」、OFFで「心地よい音楽」を聴いていきたい。旅と音楽が、いつも私を救ってくれる。やはり、感謝という言葉しか浮かばない。Text:原田悦志
原田悦志:NHK放送総局ラジオセンター チーフ・ディレクター、明治大学講師、慶大アートセンター訪問研究員。2018年5月まで日本の音楽を世界に伝える『J-MELO』(NHKワールドJAPAN)のプロデューサーを務めるなど、多数の音楽番組の制作に携わるかたわら、国内外で行われているイベントやフェスを通じ、多種多様な音楽に触れる機会多数。
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