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2019/12/17

『アナ雪2』の不思議な“声”AURORA(オーロラ)が語る、音楽観と死生観「人間として生きることは難しいこと」

 2015年にデビューEP『Running with the Wolves』を<Decca>より発表し、その天使のような歌声、独特な音世界とメッセージ性の高い楽曲で人気を博す、1996年生まれのノルウェー人シンガー・ソングライター、AURORA(オーロラ)。

 今年6月には、昨年の『Infections of a Different Kind (Step 1)』に次ぐ新作『A Different Kind of Human (Step 2)』を発表。ケミカル・ブラザーズの最新アルバム『ノー・ジオグラフィー』への参加やディズニー映画『アナと雪の女王2』でイディナ・メンゼル演じるエルサを導く不思議な“声”としても注目を浴び、映画のメイン楽曲「Into the Unknown」にもフィーチャーされている彼女が、2019年11月下旬に初来日し、2日間のソールド・アウト公演で日本の“ウォーリアー”たちを魅了した。

 日本文化が大好きで、MCでも日本語を勉強していると話していた彼女だが、渋谷・SPACE ODDでの公演直前に行われたこのインタビューには、ヴィンテージの着物をファッショナブルに着こなして登場。待望の日本でのライブ、音楽観や死生観、『アナ雪2』への参加、ビリー・アイリッシュに対する想いなど、様々なトピックについてざっくばらんに語ってくれた。


◎日本テイストなスタイリング素敵ですね。今回の来日で購入したものですか?
オーロラ:ありがとう!中面がウールになってて、とても暖かいの。70年代に作られたものみたい。ずっと昔から持ってるものなんだけど、どこのヴィンテージ・ショップで購入したかは忘れてしまった。ノルウェーで買ったのかも。でも日本からインポートされたものよ。

◎日本での初ライブがいよいよ今夜行われますが、今の心境を教えてください。
オーロラ:そうなの!とても興奮している。あれがステージ?

◎はい、こういった親密な会場であなたのライブを観れるのは、今となっては貴重ですよね。
オーロラ:そうね。私自身もとても楽しみにしている。観客を間近に感じることは素敵なことで、好きなこと。今はそれがあまりできなくなってしまって恋しいから、今日ここでパフォーマンスするのが待ちきれない。

◎親密と言えば、ノルウェーのTV局NRKのために森で撮影したコンサートも観客との距離が近く、感動的でした。
オーロラ:言葉に表せないほど、素晴らしい経験だった。あのように自然と深くつながれることは、とても美しいことだと思う。本当は裸足でパフォーマンスしたかったけれど……さすがにノルウェーだからちょっと寒すぎたわね(笑)。

◎「The Seed」の途中で、男性コーラスが加わった時のあなたの表情も印象的でした。あれはサプライズだったんですよね?
オーロラ:そう(笑)。本当に魔法のような体験だった。音楽を塞き止める壁がなく、それが流れ続け、もしかしたら世界中を駆け巡って、再びあの森へ戻ってきていたかもしれない。生き生きと、自分らしくパフォーマンスすることができて最高だった。




◎ノルウェーの大聖堂で行ったライブも印象的でしたが、オーロラ自身が特に印象に残っているパフォーマンスはありますか?
オーロラ:ニーダロス大聖堂で行ったライブね。あのライブもとても素敵で、私にとってすごく特別だった。いつもと違うアレンジを楽曲に加えるのは刺激的だったし。音楽をプロデュースしたり、リアレンジするのが大好き。魂は同じだけれど、新たな外観を与えることができるから。クワイア、ストリングス隊、ハープなどに演奏に加わってもらうのはワクワクした。自分にとってしっくりくるから、今後はそういったオーガニックな楽器を積極的に取り入れていきたいと思っている。




◎パフォーマンスを重ねる上で、最も進化を遂げたと感じる楽曲はありますか?中には12歳の頃に書き上げたものもありますよね。
オーロラ:そう、例えば「Runaway」ね。確か11歳の時に書いた曲だったと思うけれど、とっても古い曲。不思議なものよね。1stアルバムに収録されている「I Went Too Far」という曲は9歳の時に書いたけど、今でもライブでパフォーマンスしている。当初はピアノを弾き語りしながら披露していたけれど、今はアルバムとも異なるアレンジになっていて、クラブでかかるようなテクノっぽい感じになっている(笑)。 だから大分進化を遂げている。

◎あなたの曲に対する想いや理解なども徐々に変化していると思いますし。
オーロラ:もちろん。でもポジティブな風に。例えると誰かをより深く知るような感じで、曲に対する理解が深まっている。音楽を作ることはややスピリチュアルで、まるで物事が起こる前にそれを書き留めているよう。今となっては、曲をより理解できている。あたりまえだけど、音楽というのは私個人よりも大きな存在で、曲も自分が制作段階で込めたもの以上のものに変貌を遂げていく。自分の曲が人々へどういった影響を与えたか知ること……これはライブのたびに実感している。前方にいるファンの人々が、どのように曲を感じ取っているかを目の当たりにすることで、曲の本質への理解がさらに深まり、彼らにとって、そして私にとって曲が持つ本当の意味がわかる。重みが増したことで、今はそれらを抱えるのがさらに大変になった感じる。とてもいい意味でね。書いた時と比べて、はるかに意味があって、重要なものになったから。それってとてつもなく美しいことだと思う。




◎多くのリスナーへ影響を与えているのはもちろんですが、現代のポップ・アイコンとなったビリー・アイリッシュも、あなたの曲「Runaway」と出会ったことが、アーティストを目指すきっかけの一つだったと公言しています。
オーロラ:素敵なことよね。彼女と彼女の兄フィニアス、そして2人の両親に、たしかオーストラリアで会う機会があったんだけれど、本当に美しい人々だった。彼女が「隅っこでもいいから」って私のライブを観て、挨拶をしたいって言ってくれたみたいで。本当にスウィートな子だった。今の世の中には、彼女のように意味のあることを発信したいアーティストがもっと必要で、彼女のような存在が現れたことを嬉しく思っている。

◎彼女は、同世代を動かすような類まれな共感力と発信力を持ち合わせています。
オーロラ:本当にそう。現代社会において人間として生きることはとても大変なこと。ソーシャル・メディアなどの影響で、自分の本来の姿を発見するのがとても難しくなっていて、若者たちが自分自身を心から愛することができにくい環境を世の中が作っている。誰にも自分自身を愛する権利がある。けれど自分を他人と比較することが当たり前になってしまったことで、それがより難しくなった。これは深刻な問題だと思う。様々なメンタル・ヘルスの問題を抱える人が増えてきてる。そういった面において、彼女が若者たちと繋がれることはとても美しいことで、ポジティブなことだと感じている。




◎幼い頃は主にダンス・パフォーマンスに取り組んでいたと聞いたのですが、そんな中で自分に合った自己表現が音楽だと気づいたのは?
オーロラ:そう、6歳から16歳の頃はダンサーだった。ダンスするのは大好き。自分ひとりで、自分のために。今でもよく踊っていて、レイヴ・パーティーに行くのが好き。そこで一晩中踊って過ごすのが大好きなの。それはあくまでも自分のためで、踊ることが自分の体を元気にしてくれる。じっと座っているより、踊っている方が私にとって自然だから。音楽は、何か自分が重要なことができるかもと思って始めた―自分より大きなことを。音楽のいい点は永遠に残るということ。ダンスは披露したその瞬間だけに存在するもので、その瞬間を保存し続けることはできないけれど、曲は私が死んだ後も生き続ける。永遠に存在し続けるということが、私にとっての音楽の魅力の一つね。

◎元々は自分の作った音楽を人と共有したり、それを披露することを好まなかったようですが、その考えはどのように変わっていったのですか?
オーロラ:わからないわ…。

◎実際にやってみることで徐々に慣れていったのでしょうか?
オーロラ:多くの人々がアーティストになることを夢見る……例えばさっき名前が挙がったビリー・アイリッシュは、昔からアーティストになりたいと思っていた。でも自分はそうじゃなかったし、それに魅力を感じなかった。私はものすごく有名にはなりたくない。嫌なの。

◎どんな部分が嫌なのでしょうか?
オーロラ:何だか妙だもの。授賞式とかそういったものは嫌い。仮に行かなくて、失礼だと思われるもの気に障るし。難しいバランスよね。よく知らないと人とおしゃべりしたり、仲良くしたりしなければならなかったり……自分についてたくさん話さなければならないのも心地いいわけではない。もちろん本当に私のことを知りたいと思ってくれているのであれば、喜ばしいことだけど。そういったことすべてが妙だと感じるし、私はそれを子供の頃から夢見ていたわけではない。一人でいることや、自分がハッピーになれること、自分ために何かをやるのは好き。とはいえ、今この場にいれること、自分を取り巻く状況には感謝している。私には伝えたいことがたくさんあるから、人々がそれに耳を傾けて、受け止めてくれていることは嬉しい。




◎ここ最近は楽曲がより外向きで政治的になっていますが、あなたが今最も関心を持っている問題について教えてください。やはり環境問題でしょうか?
オーロラ:環境問題は、重大な政治的問題……私たち全員に影響を与え、今後も長く続く、エモーショナルで政治的なもので、とても関心がある。団結して、一緒に行動を起こすには、今が最も最適な時だと思う。過去に私たちは絶え間なく対立してきた。今も戦争や衝突が続いているけれど、地球のために戦うことは、みんなが一丸となってできること。味方同士だから。自分たちよりも大きなことをするのは、私たちのメンタル・ヘルスにもいい効果があって、日々の小さな問題が些細なものに思える。未来のために人々が一つになって戦うことは、とても美しいことで有益なこと。自然については、特に興味があって、情熱を持っている。そして人々のメンタル・ヘルスにも関心がある。人間として生きることは難しいことだから。

◎楽曲も含めて自然からインスパイアされている部分が大きいと思いますが、やはり都市から都市へ移動するツアーが続くとタフですか?
オーロラ:その通りね。でもライブで歌うことで、ある程度助けられている。そうすると再び繋がりを感じることができるから。ライブを行うことで、すべてから解き放される。自然が私にもたらしてくれる同じ効果がある。そして自分が存在しているという気持ちにさせられる。同じような効果は多少得られるけれど、やはり自然が恋しいのは確か。特に静寂が。私が生まれ育った場所はとても静かなところで、人もいないし、建物もなくて、あるのは私たちが暮らす森の中の家だけだったから。そういった生活がとても恋しくなる。これまでの人生の大部分……17歳ぐらいまで、そんな暮らしをしていた。その環境からツアー生活へ飛び込んでいったから、私にとって大きな変化だった。




◎話は変わって、ディズニーとのコラボレーションについても伺わせてください。実写版映画『ダンボ』のトレイラーに歌声が起用され、映画『アナと雪の女王2』では、物語の鍵を握る“声”を演じていますね。
オーロラ:とても楽しいコラボレーションをさせてもらっている。どうやってこうなったのかはわからないけれど(笑)。スタッフの人々も心優しい人ばかりで。今回の『アナ雪』に関しても、ディズニー側からオファーがあった。その昔、彼らのオフィスでスタッフがランチをしている時に一度演奏したことがあるの。それを憶えていてくれたのかもしれない。次々と企画をオファーをしてくれるから、とても感謝している。私はディズニーの作品が好き。彼らは子供を見くびらないし、作品が恐ろしかったり、悲しかったり、挑発的だったり、もちろんハッピーだったりすることを恐れていない。それはとても素晴らしいことだと思う。

◎あなたの声が印象的な映画のメイン・ソング「Into The Unknown」のレコーディングはいかがでしたか?色々なテイクを試みたり、実験する余地はあったのですか?
オーロラ:多少はあった。自分の役柄で特に気に入っていたのは、そのスピリチュアルな部分。(エルサ役の)イディナ・メンゼルのヴォーカル・パートは、既にレコーディングされていたから、私に課せられたタスクは曲の上からではなく、彼女と一緒に歌うこと。一部デュエットしているようなパートがあるから。とても楽しかった。レコーディングは二晩かけて、美しい教会で行ったんだけど、窓にステンド・ガラスが飾られていたから、そこからこぼれるスポットライトのような光がとても綺麗だった。私は冬と冬に関連したものが大好きだから、早く映画が観たくてたまらない。地元ノルウェーでは、ちょうど今回のツアーのために出発する時に公開されたばかりで、帰ったらすぐに観に行くつもり。

◎『アナ雪』シリーズに限らず、共感するディズニーのキャラクターはいますか?
オーロラ:小さい頃、『ノートルダムの鐘』のカジモドが大好きで、彼はクールだと思った。家にディズニー映画のVHSがあって、今もあるけどよく観ていたわ。




◎そして昨年から今年にかけて、2部作『Infections Of A Different Kind (Step 1)』と『A Different Kind of Human (Step 2) 』を発表しましたが、次回作はこれらとは全く違うものになるそうですね。
オーロラ:そう。制作を始めてから、既に数週間……1か月ぐらいになる。2枚のアルバムに同時に取り掛かっていて、どちらを最初にリリースするかまだ決めていないけれど、来年には新しい音楽を発表したいと考えている。今とってもハングリーで、寝る時間も惜しまずにずっと曲を書いている。だから、たくさんの音楽をリリースして、みんなに聴いてもらうことを楽しみにしている。やりたいことは無限にある。音楽をリリースして、みんなを考えさせるような映像作品も発表したい。今度は、自分の音楽と合わせた映像プロジェクトを考えていて、単なるミュージック・ビデオ以上のものにしたい。あとは、世界中を旅して、そこに溢れる音色を捉えたい。そして自分の作品に取り入れていきたい。世界が奏でる音色やその彩り豊かな文化が本当に大好き。古くからある民族音楽や伝統的な音楽にも惹かれるから、それをどんどん自分の音楽と融合させたい。

◎逆に、音楽を作っていない、また音楽について考えていない時はどんなことをするのが好きですか?
オーロラ:何らかの形で音楽に触れていないのは、とても稀なことだけれど、絵を描くことは好き。静かに行なえる趣味が多いかな。作っている音楽がラウドだから(笑)。静かに座って油絵を描いたり、じっと座っていたり。瞑想ではないけれど、色々な物事について考えたり、哲学的に思索して、自分なりに理解することが好き。これは時間があると結構よくやること。

◎最近だと、どんなことについて考えましたか?
オーロラ:昨日東京へのフライトに乗った時、人生について考えた。全体像を見据えながらも、人生の些細なことや美しいことを楽しむこと。人生の見方は、自分で変えられるということ。もし問題を抱えているのであれば、全体像を把握することで、それは一時的なものだということがわかる― 他のすべてのものと一緒で。太陽や雨など素敵なことを体験してるのであれば、小さなことにも目を向け、それに感謝しなければならない。そういった出来事を、自分の幸福に当てはめていくことができるのは良いこと。そんな風にハッピーなことを考えていた。

◎でもハッピーな考えばかりではないですよね。
オーロラ:もちろん。私は死に関してよく考える。それもかなり頻繁に。これは今始まったことではなくて、小さい時からそうだった。でも死を恐れてはいない。みんないつかは死ぬという現実に不思議と気分が安らぐ。その文化ごとに死の受け止め方や個人としてもどのように悲しみと向き合うのか違うのは興味深い。今後もう一生会えないという事実とどうやって折り合いをつけるのか。とても奇妙よね。死は、自分の音楽でもよく取り上げているトピックだけど、それがネガティブだとは全く思わない。それについて考えていると、時にダークな気分になるけれど、悲しくはない。ただそうであるだけ。




◎これに関連して、年を取ることについては考えたりしますか?女性のアーティストにとっては、特に繊細なトピックです。
オーロラ:本当にそう。私自身は、年を取ることが待ちきれない。自分で言うのもなんだけど、合うと思うんだ。ずっとずっと心は若いままでいると思うけれど、体が老いていくことへの準備は万端だし、とても楽しみにしている。適切な言葉が浮かばないけれど、不安はない。年を重ねた人が近くにいると感じる、重厚感みたいなのがあるじゃない?そのフィーリングを、同じ部屋にいる人々に自分がもたらせることを考えるとワクワクするの。彼らが培ってきた知識や人生経験には何か惹かれるものがある。それに色彩に溢れた、カラフルな服装をしているお年寄りほど美しいものはない、と個人的に感じる。その人がそうすることを毎日選択しているということだから。

◎最後に、ウォーリアーたちのためにフェスをキュレートすることに興味はありますか?どんなフェスになるでしょうか?
オーロラ:やってみたい!何でも挑戦してみたいから。ゴミを最小限にとどめて、できればミートフリーにしたい。新人アーティストを多めにブッキングして。場所は絶対に自然の中で、まずはノルウェーで開催したいな。色々な人が来れるようにチケットは低価格にする。森の中で開催するのはマストね。平和な場所で、安らげるような音楽をフィーチャーしたい。地面に寝っ転がって、音楽を楽しめるような。

Live Photo: Sotaro Goto


◎プレゼント情報
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<受付期間> 2019年12月17日(火)~24日(火)12:00

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