2019/11/29
2019年9月6日から行われたジャズ・フェスティバル【かわさきジャズ】の最終公演【まらしぃ With 初音ミク、鏡音リン piano acoustic live】が11月17日にカルッツかわさきにて開催され、ピアニストのまらしぃとヴァーチャルシンガーの初音ミク、鏡音リンが出演した。
【かわさきジャズ】とは川崎市を大きなステージととらえ、まちや土地に息づく記憶に寄り添いながら、ジャズを通じて様々な出会いと交流の機会を創出する「川崎らしさ」にこだわったジャズ・フェスティバル。2015年から始まった本フェスティバルは、“ジャズは橋を架ける ~Jazz goes beyond generations.~”を今年のコンセプトとし、様々な公演やイベントが開催された。【まらしぃ With 初音ミク、鏡音リン piano acoustic live】は、本フェスティバルの最終公演となり、動画投稿サイトなどで人気のピアニストまらしぃと、初音ミク、鏡音リンがコラボするということで、会場の内外では公演が始まる前から熱気であふれていた。ちなみに、2018年の【かわさきジャズ】ではジャズピアニストの佐藤允彦が初音ミクや巡音ルカと共演している。
本公演は第1部と第2部で分かれている。第1部ではまらしぃが単独で登場し、人気ボカロ楽曲をピアノ1つで次々にカバーしていった。まらしぃは現在ソロピアノコンサートツアー【marasy collection piano live tour 2019】を開催中。その勢いそのままの状態で公演に臨む形になったと言えるだろう。「僕は今日を楽しみに生きてきましたので、今日が終わったら明日から何を楽しみに生きればいいんだろうと正直思ってます。【かわさきジャズ】の最後のイベントをやらせてもらえるというのは本当に光栄で嬉しいのですけど、残念なことに僕はジャズが弾けません(笑)。ただ、気持ちで弾こうと思いますので、最後までよろしくお願いします。」と、まらしぃは明るく挨拶していた。
その気持ちを持ったまらしぃから繰り出されるピアノの音色は、はっきりとした輪郭を持って会場に響き渡っていく。例えば、ソリッドなギターや抜けるビートが特徴の「砂の惑星」を披露した時は、左手で低音域をうまく表現しながらも、右手で「砂の惑星」が本来持っている心地よくも内角をえぐってくるメロディがより明瞭に聴こえてきた。会場のオーディエンスは時に手拍子を起こし、時にペンライトでリズムをとっていたが、そのような動きをしつつも基本的にはピアノのメロディに聴き入っていたような空気であった。
休憩をはさみ、第2部では初音ミクと鏡音リンがまらしぃと共にステージに登場した。昨年の【かわさきジャズ】に出演した時からバージョンアップしたという初音ミクと鏡音リン。まずは鏡音リンが捌け、初音ミクとまらしぃだけで曲を披露していった。まらしぃは初音ミクの大ファンとしても有名だが、今回の公演はまらしぃにとって特別なものになっただろう。「「空想少女への恋手紙」は実は画面の向こうのミクさんに会いたいなと思って作った曲なんです」とコメントしたまらしぃ。初音ミクと目を合わせながら、幸せな空間を演出した。
「天照ラセ」からは初音ミクに代わって鏡音リンが再び登場。その「天照ラセ」では、サビ終わりで声を高らかに歌いあげ、歌い終わりの声の抜け方にライブとしての臨場感が伝わってきた。伸びやかな高音域の声を響き渡らせた「炉心融解」、ピアノの音をベースにドライブ感のある歌唱を見せつけた「ロストワンの号哭」と、鏡音リンの様々な歌唱面を表現した。
第2部本編の最後には初音ミクも再登場し、3人全員で「千本桜」を披露した。あくまで初音ミクと鏡音リンの歌声にフォーカスを置きながらも、まらしぃのダイナミックなピアノも相乗的に歌声に混ざり、本編ラストにふさわしいクライマックスを迎えた。そしてアンコールでは、まらしぃ制作の新曲「霖と五線譜」を初音ミクと、そしてまらしぃのボカロデビュー作「夢、時々…」を鏡音リンも加わって披露。まらしぃのキャリアの両端を一気に披露したことになり、曲の特徴にも変化が身をもって感じられたが、どちらも簡単には比較できない輝きを持って響いた。最後は、鏡音リンが「まだ歌い足りないです」と「アマツキツネ」を披露した。イントロは鏡音リンが単独で歌う部分があるなど、今回の公演で一番“歌”にフォーカスが置かれた曲だと思われ、その歌声に圧倒されたまま終演した。
まらしぃと初音ミク・鏡音リンが共演することもさることながら、初音ミクの大ファンであるまらしぃが本当に初音ミクと共演したこと。そして、ジャズではないものの【かわさきジャズ】の最終公演として今回のライブを行ったこと。同じ文化圏が合わさり、そして異なる文化圏が交わることで生まれるカルチャーほどエキサイティングなことはなく、満足感と共に本公演の意義を帰路で考えてしまう公演であった。
また、今回の【かわさきジャズ】の公演を受け、同コラボが2020年2月10日に【Live Session!//まらしぃ with 初音ミク&鏡音リン Piano acoustic live in SNOW MIKU】として札幌・カナモトホールでも実現されることが決定した。【SNOW MIKU】とは【さっぽろ雪まつり】に併せて開催される「雪ミク」が主役のフェスティバル。【SNOW MIKU】シーズンに合わせて企画された【Live Session!// まらしぃ with 初音ミク&鏡音リン Piano acoustic live in SNOW MIKU】は、【かわさきジャズ】の後継企画として位置づけられ、かわさきで演奏された楽曲に、さらに新曲を加えたパワーアップバージョンとなる予定だ。11月29日よりイープラスにてチケット先行販売が開始している。
Text by Akihiro Ota
◎公演情報
【まらしぃ With 初音ミク、鏡音リン piano acoustic live】
2019年11月17日(日)
神奈川・カルッツかわさき
<セットリスト>
[第1部]
1. メルト
2. ローリンガール
3. エイリアンエイリアン
4. マトリョシカ
5. からくりピエロ
6. ウミユリ海底譚
7. シャルル
8. 砂の惑星
9. 六兆年と一夜物語
[第2部]
1. Cat’s dance
2. 空想少女への恋手紙
3. チョコレイト・ディスコ
4. 天照ラセ
5. 炉心融解
6. ロストワンの号哭
7. 千本桜
-Encore-
1. 霖と五線譜
2. 夢、時々…
3. アマツキツネ
【Live Session!// まらしぃ with 初音ミク&鏡音リン Piano acoustic live in SNOW MIKU】
2020年2 月10 日(月)
北海道・カナモトホール(札幌市民ホール)
OPEN 17:30 / START 18:30
チケット:6,500円(tax in.)
オフィシャル先行:https://eplus.jp/marasy/showmiku/
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