2019/08/03
ロックバンドのRhythmic Toy Worldの全国ツアー【PLACE TOUR】、そのファイナル公演が7月25日に東京・恵比寿LIQUIDROOMで開催された。
2019年3月に結成10周年記念LIVE【Rhythmic Toy World EBISU de ASOBOYA~もういくつ寝ると10周年~】を同じくLIQUIDROOMで開催しているRhythmic Toy World。そして、4月には4thミニアルバム『PLACE』や、内田直孝(Vo.Gt)のソロデビューシングル『Adversity is the first path to truth.』をリリースしている。2018年にメジャーデビューしたのち、2019年に再びインディーズに戻ったRhythmic Toy Worldが、“居場所”や“心の拠り所”の意味を込めた“PLACE”の言葉を付けた今回のミニアルバム、そしてツアー。そのファイナル公演を本記事ではレポートする。
須藤憲太郎(Ba)がいつも裏でやっているという前説をステージ上で行い、オーディエンスのボルテージを上げたところで、BOOM BOOM SATELLITES「KICK IT OUT」が流れメンバー全員が登場。「始めよーぜ!恵比寿!」と内田が声をかけ、「はじまり」を披露。内田のクリアな歌声にオーディエンスは広げた手を挙げて応える。「BOARD」ではその手がグーに代わり、「s.m.p」ではオーディエンス全体がジャンプしていた。冒頭3曲だけにも関わらず、Rhythmic Toy Worldの様々な魅力を改めて実感した人もいただろう。
早くも最高潮の熱気の中、「改めまして、こんばんは、Rhythmic Toy Worldです、どーぞよろしく!」と内田が挨拶。そして、ライブステージだからこそできるジョークで笑いが起きた後、「アンダンテ」へ。とても“アンダンテ”とは言えない曲調ではあるものの、彼らなりの歩調を示した楽曲を軽快に披露した。披露し終えると、内田が「中身を知ることもなく、うわべだけで決めつけてくる、クソ野郎どもをぶち殺すために作ったこの曲を、クリティカルヒット」と語り、「クリティカルヒット」を披露。ところどころで赤いライトが彼らを照らし、内田の口から発せられる歌詞も相まって、挑発的な雰囲気が最大限に会場に広まった。「いろはにほへと」では、オーディエンスとのコール&レスポンスも起こり、この世はLIQUIDROOMの中だけで完結しているような、ここ以外の世界を忘れた時間が会場にはあった。「クリティカルヒット」から「いろはにほへと」への流れを考えると、当然のことかもしれない。
そして2回目のMCで内田は、「さすがにさ、ファイナルだからってさ、そわそわしないかなって思ったのよ。思ったんだけど、やっぱりファイナルにはファイナルって感じの空気あるし、一音一音鳴らすと、鳴らすたびになんか胸がくーってなるんだよね。俺だけじゃなくて、みんなにとってそういう日になればいいと思ってる」とファイナルに込めた思いを吐露。そして、「ステージに立ってる立ってないとか関係なく、俺たちが一音鳴らした瞬間にみんなの股間がキューってなったりとか…、えーー、そこは笑うんだよ」と、神妙な空気が流れだしたところに突然の笑いを提供した。「とりあえずあいつ(内田)がなんかキメ顔で言ったなって時は、イェーイって言うか、笑うか。それ、ライブハウスの鉄則だから、わかったみんな?」と続けると、「イェーイ!」としっかりオーディエンスは反応した。さらに内田は最後、「心のど真ん中ぶっ刺しに行きます、よろしく!」と、勢いをつけた。
そして、「ライブハウス」から「波紋シンドローム」まで、本編で一番長く、ほぼシームレスで楽曲を披露していった。会場の一体感はさらに増し、「とおりゃんせ」でのオーディエンスのオイ!オイ!の掛け声に内田が思わず「すごい」と漏らしたほどである。Rhythmic Toy Worldの作り出した空気にオーディエンスが加わることでさらにそれは増大し、今回の公演は高まるところまで高まった様相であった。盛り上がりという点においては、高まりきっていただろう。
「波紋シンドローム」が終わると、高まりきったことへの得も言われぬ満足感が会場に充満していた。メンバー同士の仲の良さがうかがえる冗談もあって再び会場が笑いに包まれた後、内田が今回のツアー、そしてRhythmic Toy Worldの10年を振り返った。そして、最近の内田が一番リアルに感じていることとして、家から駅までの道のりの話をした。どっかに向かって歩いているわけではなく、いつも同じ道を行ったり来たりしている。そして季節が変わり風景が変わる。それらが変わることで、喜怒哀楽が生まれることを繰り返す。これからもそれが続く。しかし、家にこもれば、今までに手に入れたものをずっと眺め、端からずーっと腐っていくのを見るだけ。それはいやだから、20年30年迎えられるように同じ道を行ったり来たりして、そこで得たものをみんなに見せる。知らないことっていっぱいあるねって。俺たちが音楽にして歌うことで、少しでも俺たちが見た景色をみんなに見せられるような、そういう関係すごいカッコいいなって思って。だから、いろいろな曲を手紙みたいに作るから、読んでくれ。そしてたまには返事書いてくれ。それを50、60くらいまで続けていけたらいいなと思ってます。ほんとに今日は来てくれてありがとう。
オーディエンスはずっと静かに耳を傾けていた。内田が語り終わると、声を発することなくオーディエンスは拍手をした。これは決意表明である。オーディエンス自身もこれから10年20年彼らと一緒に歩むことを胸に刻んでいる時間である。声はもはや必要ない関係なのかもしれない。会場の雰囲気は完全に変わった。「ユメイロ」「2019」と、彼らからのメッセージをオーディエンスは真正面から聴いた。内田が30歳の時の目印として未来に残したいと思って作った「2019」では、会場に響き渡るエコーの効いたギターが、内田の言葉を反芻させた。
「あなたに出会えて」以降、Rhythmic Toy Worldの底抜けに楽しく盛り上がる楽曲が再び会場を動かした。しかし、その盛り上がりの底には、さっき内田がMCで語りかけた言葉が残っていて、じわじわと浸透していたように見えた。「ネバギバ」の最後では「キミへのエールだ キミのためのエールだ」のパートをもう1度ゆっくりと内田は大きな声で歌った。この公演はずっとそうだった。Rhythmic Toy Worldはずっとオーディエンスにエールを送っていたはずだ。MCで真剣な空気が流れると急に恥ずかしく感じてみんなを笑わせようとしたり、でもやはり自分が思うことを真摯に語り掛けたり、そしてアーティストとして楽曲に乗せてメッセージを送ったり。彼は生粋のエンターテイナーなのかもしれない。
「ASOBOYA!ASOBOYA!」とオーディエンスが何度も声をかけると、アンコールでRhythmic Toy Worldが再登場。翌々日の27日が内田の誕生日ということで、サプライズでハッピーバースデーを会場全体で熱唱。プレゼントを渡し、和やかな空気が流れる中、なんとさらにサプライズで翌日の26日に誕生日を迎えるプロデューサーの川原祥太をお祝い。そこから、岸明平(Gt)、須藤憲太郎(Ba)と何日遅れか不明の誕生日祝いが、“幸せの連鎖”が続いた。そして、東京・渋谷CLUB CRAWLで【ヤンキーナイト 四代目】に出演すること、そして同じ会場で10日間ツーマンライブ【Q10】を開催することが発表され盛り上がる中、「フレフレ」「いつか」「ASOBOYA」を披露。そして、ダブルアンコールでは「Team B」も披露し、一連のアンコールはフレンドリーな空間のように感じた。Rhythmic Toy Worldはオーディエンスにとってアーティストなのか友達なのかは私の中でははっきりしない。だが少なくとも、彼らは隣に来て、「最近調子はどう?」とか「大丈夫だって!」とか「いや、それはダメだよ」と声をかけてくれる、そういう存在のように見えた。彼らにとっての心の拠り所というものは、一人では成立しないものである。
Text by Akihiro Ota
Photo by 飯島春子
◎公演情報
【PLACE TOUR FINAL】
2019年7月25日(木)
東京・恵比寿LIQUIDROOM
<セットリスト>
1. はじまり
2. BOARD
3. s.m.p
4. アンダンテ
5. クリティカルヒット
6. いろはにほへと
7. ライブハウス
8. JIGOKU
9. ブッシャカ
10. 未来へのセッション
11. とおりゃんせ
12. 波紋シンドローム
13. ユメイロ
14. 2019
15. あなたに出会えて
16. 輝きだす
17. 僕の声
18. ネバギバ
-Encore-
19. フレフレ
20. いつか
21. ASOBOYA
-W Encore-
22. Team B
◎公演情報
Rhythmic Toy World 10周年企画【10Q】
東京・渋谷CLUB CRAWL(※全日共通)
OPEN 18:00 / START 19:00(※全日共通)
《Quest1》~炎と未来の二重螺旋~
2019年9月1日(日) w/ グッドモーニングアメリカ
《Quest2》~脱出不可の妖精の森~
2019年9月6日(金) w/ GOOD ON THE REEL
《Quest3》~二物を与えし才の狂宴~
2019年9月10日(火) w/ アルカラ
《Quest4》 ~革命の道化師~
2019年9月14日(土) w/ 感覚ピエロ
《Quest5》~天をも貫く歴戦の塔~
2019年9月16日(月・祝) w/ LACCO TOWER
《Quest6》~桃源郷の語り人~
2019年9月20日(金) w/ シナリオアート
《Quest7》 ~導かれしは真空の館~
2019年9月22日(日) w/ 真空ホロウ
《Quest8》 ~魔王猿の咆哮~
2019年9月23日(月・祝) w/ KNOCK OUT MONKEY
《Quest9》 ~全てを喰らい尽くす轟音~
2019年9月27日(金) w/ WOMCADOLE
《Quest10》 ~星空の冒険者~
2019年9月29日(日) w/ MAGIC OF LiFE
前売:3,000円(+1ドリンク)
全日通し券:20,000円(※SOLD OUT)
オフィシャル二次先行受付URL:https://l-tike.com/st1/rtw10q-hp2
※受付期間:8月3日(土) 12:00~8月12日(月) 23:59
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