2019/07/09
豊かな音楽が溢れるキャリア
今年の3月24日でニック・ロウは70歳になった。18歳だった1967年にブリンズリー・シュウォーツの前身バンドであるキッピントン・ロッジでシングルをリリースしているので、すでにプロのミュージシャンとしても半世紀以上活動していることになる。
ブリンズリー・シュウォーツが解散し、ソロとしてキャリアを歩み始めたのが1976年。1979年にはブリンズリー時代にメンバーのイアン・ゴムと共作していた曲「Cruel To Be Kind(恋するふたり)」が本国イギリスのみならず、アメリカでもシングルチャート最高12位まで上昇する大ヒットとなり、ソロ・アーティストとしての名声を確立した。旧友デイヴ・エドモンズのバックバンドが発展してデビューしたロックパイル、ライ・クーダー、ジョン・ハイアット、ジム・ケルトナーらと結成したルーツロックのスーパー・バンド、リトル・ヴィレッジでも、それぞれ1枚ずつアルバムを残す。また、同時にスティッフやレイダーといったレーベルでプロデューサーとしても多くの作品に関わるようになり、その最大の成功例として初期のエルヴィス・コステロに対する功績が挙げられる。
甘酸っぱいポップ・ソングを得意とするシンガー・ソングライターであり、かっこいいバンド・サウンドに貢献するバンドマンでもあり、他のアーティストの魅力をうまく引き出すプロデューサーでもある。パブロック、パワーポップ、カントリーロック、ルーツロックなど、彼の音楽を紹介してきたジャンルは多岐にわたるし、たどってきたキャリアや相関図を紐解くだけですごく豊かな音楽に触れるきっかけをくれる。
まるで「永遠のロックの兄貴分」
だけど、本人はいつだってどこ吹く風。時流に乗せたサウンドや芸術的なコンセプトを持ち出すこともなく、日々しなやかに自分の音楽を作り奏でる根っからのミュージシャンだ。職人とアーティストの間を自由に行き来できるから、きっと気が詰まることもないんだろう。2010年代に入っても『The OldMagic』(2011年)、キャリア初のクリスマス・アルバム『Quality Street : A Seasonal Selection for Allthe Family』(2013年)と充実したリリースもあったし、しばらく新作の便りがないなと思っていたら、去年の4曲入りEP『Tokyo Bay』、さらに今年もEP『Love Starvation / Trombone』(こちらも4曲入りで、CD発売は日本のみ)を届けてくれた。
来日回数も多く、いつだって弾き語りでもバンドでも変わらない魅力を伝えてくれる。白髪になった時期がロックンローラーにしては早い部類だったニックだが、その分だけ年齢を重ねてロックすることのかっこよさをここ30年ほどは教えてくれてきた。なので「もう70歳」とも思えるし、「まだ70歳」とも思える。まるで永遠に面倒見のいいロックの兄貴分。きっとまた今回も「恋するふたり」で、僕らの相談に乗ってくれるだろう。
Text:松永良平(リズム&ペンシル)
Photo:Yuma Totsuka
◎公演情報
【ニック・ロウ】
ビルボードライブ東京
2019年8月13日(火)- 14日(水)
1stステージ 開場17:30 開演18:30
2ndステージ 開場20:30 開演21:30
ビルボードライブ大阪
2019年8月15日(木)
1stステージ 開場17:30 開演18:30
2ndステージ 開場20:30 開演21:30
URL:http://www.billboard-live.com/
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