2019/03/26 11:15
2019年3月22日に中国で公開された『ボヘミアン・ラプソディ』から2分以上のLGBT関連シーンがカットされていることがわかった。
過去にゲイやレズビアンの恋愛を含む“異常な性行動”の描写をテレビや映画からカットしてきた中国の検閲当局は、クイーンの成功への道のりと故フレディ・マーキュリーの半生を描いた同作から男性同士のキスシーンや“ゲイ”という言葉を削除したとCNNが伝えている。
『ボヘミアン・ラプソディ』では、奔放だったフレディが男性も女性もナンパし、関係を持っていた様子が描かれているが、カットされているにもかかわらず、映画が公開されたこと自体が“勝利”であるとCNNに話す中国のLGBTコミュニティーのメンバーもいる。
だが中国人ドキュメンタリー映画監督でLGBT活動家のファン・ポポ(范坡坡)は、この映画の公開そのものが賞賛される動きについて、「皆がこのような“勝利”で満足していたら、世界全体が常に権力に屈することになり、クリエイターは尊重されず、観客の利益が保護されなくなる」と批判的だ。中国では極めて限られた数の西洋映画しか公開されない。
カットされているのは、フレディの腰が動いているクロースアップ、彼とボーイフレンドのポール・プレンターとのキスシーン、フレディの長年の恋人で友人のメアリーが彼の性的指向について問いただす場面で、自分はバイセクシャルであると答える彼に「フレディ、あなたはゲイなのよ」と返すセリフなどだ。
さらに、イメチェンしたフレディがロジャー・テイラーに意見を聞くシーンで“gayer”(もっとゲイっぽい)という単語が削除されているほか、バンド・メンバーが女装している「ブレイク・フリー(自由への旅立ち)」のミュージック・ビデオの場面も丸々カットされている。また、パーティーでフレディが未来のパートナー、ジム・ハットンの股間を掴むシーンがなくなっていることから物語に大きな穴が開いてしまい、この場面から発展した二人の恋愛関係の経緯が分かりづらくなってしまっているようだ。
ほかにも、記者会見でフレディが性的指向について質問されるシーンで、中国語字幕が“性生活”と表示されて質問の意味が変わっているなどの微妙な変更も含まれる。だがこのようなカットをもってしても、フレディがハットンの手を握りながら両親にカミングアウトする場面などから、一般的な中国人客はフレディの性的指向を読み取ることができるとCNNは伝えている。
中国で同性愛は違法ではないが、偏見や差別は依然として多いと活動家や専門家は指摘している。20世紀フォックスの広報担当者からコメントは得られなかった。
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