2019/03/16
先日、友人と、人生をねじ曲げられるほど衝撃や影響を受けたアルバムは何か?という話になった。タイムラインを眺めていると、さまざまな情景が浮かんでいた。ほんの一部だが、私の場合は、このようなラインナップだった。
■「The Age of Plastic」バグルス (1980)
類は友を呼ぶというか、小学校では、洋楽好きな友人が周りに集った。私たちがディーヴォと並んで夢中になったのがバグルスだった。ジェフ・ダウンズのキーボードがカッコよくて、学校の電子オルガンで、一所懸命、耳コピした。
■「増殖」YELLOW MAGIC ORCHESTRA (1980)
小学生時代の私は、ラジオを抱えるようにして、音楽を貪り聴いていた。YMOのアルバムを買おうと、小遣いを貯めてレコード屋に行ったところ、「増殖」は他より安価だったので、中身を知らずに購入した。「え!こういうこともやっていいんだ!」とのけぞった。
■「Abacab」ジェネシス(1981)
中学に入ると、学校に嫌気がさし、勉強もせず音楽にのめり込んだ。トニー・バンクスの超絶技巧に心を奪われ、中学の入学祝いに買ってもらったローランドで、一日中、このアルバムを耳コピをしていた。「No Reply at All」だけは、どうしても弾くことができなかった。
■「Building the Perfect Beast」ドン・ヘンリー (1984)
高校に進学すると、教科書すら読まない問題児となった。ただ、聡明で快活な、洋楽好きな友人と英米のチャートについて語り合い、音源を交換することは、至極の喜びだった。その頃の、友人との共通の愛聴盤だ。「Boys of Summer」のMVも秀逸だった。
■「Low Life」ニュー・オーダー (1985)
事情があり、高2の夏休みは、箱根に暮らしていた知人の元に居候していた。その時に持っていったのが、このアルバムだ。「The Perfect Kiss」のイントロでL-Rが一気に振れるところを聴くと、暑く、辛く、悶々としていた、あの夏の青空を思い出す。
■「So」ピーター・ガブリエル (1986)
高校生活も終わりに近づいた頃、1曲目の最初の音から、最後の曲の余韻まで、一寸の隙もない傑作に出会った。鳥肌が立ち、涙が溢れた。2016年、シアトルでスティングとのジョイントコンサートを観たが、その頃と同じように、涙が止まることはなかった。
■「Wrong Way Up」ブライアン・イーノ&ジョン・ケール (1990)
大学に進学してまもなく、昭和が終わり、東西の壁が崩壊した。希望と混沌が入り混じるような時代に、シンプルでありながら、味わい深い音世界を知った。「世界中の人々に会って、話をしたい」という夢を描いていた、学生時代の私の背中を押してくれた一枚だ。
この他にも数多くのアルバムが、人生を楽しく豊かに彩り、それまでとは違う方向へと誘ってくれた。皆さんも、自分の中の音楽成分がどのように組成され、人生を変えてきたのか、見つめ直してみてはいかがだろうか?Text:原田悦志
原田悦志:NHK放送総局ラジオセンター チーフ・ディレクター、明大・武蔵大講師、慶大アートセンター訪問研究員。2018年5月まで日本の音楽を世界に伝える『J-MELO』(NHKワールドJAPAN)のプロデューサーを務めるなど、多数の音楽番組の制作に携わるかたわら、国内外で行われているイベントやフェスを通じ、多種多様な音楽に触れる機会多数。
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