2019/02/12
ウィントン・マルサリスが5月28日に来日し、23年ぶりとなる、クインテットでの公演を行うことが発表された。
“エリート”。米国のジャズ界の中でもっともその言葉が当てはまる逸才がトランペッターのウィントン・マルサリスではないだろうか。ジュリアード音楽院時代に CBS コロムビアと契約を結び、以後ずっとジャズ界の前線を歩んでいるその経歴は本当に輝かしい。
ニューオーリンズの名門音楽一家に生まれ、抜群のジャズ素養とクラシック教育享受で培った秀でた技量のもと、当初からジャズとクラシックの両分野で彼は活動を始めた。まだ20代前半だった1983年にはジャズとクラシックの両方でグラミー賞を受賞するなど、その歩みはまさに秀逸の極み。とはいえ、活動の軸はジャズにあったことは疑いがなく、彼は先達たちのジャズ表現の積み重ねを吟味した先に、自らが考える王道のアコースティック・ジャズ表現を創出してきた。
また、彼は1996年以降、NYの総合芸術施設であるリンカーン・センターのジャズ部門=ジャズ・アット・リンカーン・センターの芸術監督に就き、20世紀米国最良の音楽様式であるジャズの啓蒙にいそしみ、そこではジャズ・オーケストラを組織しヴァリエーションに富む公演をずっと行っている。その八面六臂の活動の様は、まさに米国きってのジャズ実力者と言うにふさわしい。
と、書くと堅い感じになってしまうが、2000 年代を回ると彼はヴォーカルやラップを大胆に取り込んだプロテスト作(2007 年『自由への誓い』)を作るなど、しなやかさを増している。さらに、リンカーン・センター企画で、エリック・クラプトンやウィリー・ネルソンやボブ・ディランたちポップ・ミュージック側の大御所と重なったり、はてはパキスタンのサッチャル・ジャズ・アンサンブルやサルサ界のスーパー・スターであるルーベン・ブラデスとも共演。そうした好奇心旺盛にして、一皮むけた彼の音楽活動の様には目が離せない。
さて、そんなウィントンが本当に久しぶりに来日公演を行う。しかも、今回はジャズ・アット・リンカーン・センター・オーケストラとの公演ではなく、クインテットによる公演。彼の最後のクインテットの来日公演は1996年であったので、なんと23年ぶり(!)のバンド公演となる。
その構成員はもちろんウィントンの諸表現に関わって来た奏者で、うちドラマーのジェイソン・マルサリスはウィントンの弟だ。皆、それぞれにリーダー作を持つ名手たちである。クインテットというモダン・ジャズ 基本の楽器編成による実演は、ジャズ賢人たるウィントンの素の姿、リアルなジャズ・トランペッターとしての現在の立ち位置を直裁に映し出すのではないだろうか。(音楽ライター:佐藤英輔)
◎公演情報
【ウィントン・マルサリス in Tokyo 2019】
2019年5月28日(火)
新宿文化センター 大ホール
Open 18:30 Start 19:00
チケット:S席 12,000円、A席 8,000円、SS席 18,000 円、当日座席引換B席 6,000円、U-20チケット 3,000円
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