2018/12/02
若者を中心に絶大な支持を集めるヒップホップクルー“YENTOWN”所属のAwichが、キャリア初となるワンマンライブツアー【Double EP Release Tour 2018】を開催し、12月1日に沖縄・桜坂セントラルにてファイナル公演を迎えた。本稿では、11月23日に渋谷 WWW Xにて行われた東京公演の模様をレポートする。
Awichは沖縄出身のラッパー/シンガー。2006年にEP『Inner Research』でデビューし、2007年に1stアルバム『Asia Wish Child』を発表。結婚、出産、活動休止などを経て、2017年に約10年ぶりとなるアルバム『8』をChaki Zuluの全面プロデュースによってリリースした。また、YENTOWNの盟友・kZmとの楽曲を始め、KOJOEやSOIL&“PIMP”SESSIONSの作品への客演など、ヒップホップの枠を越え多方面からの注目を集めている存在だ。 10月10日にリリースされたEP『Beat』『Heart』は、『8』同様にChaki Zuluがトータル・プロデュースを務めており、ダブルEPという形で<二面性>が表現されている。この日のライブでも、Awichはアーティストとしても女性としても母としても実に多彩な表情を見せ、ヒップホップのヘッズからティーンの女子まで幅広く虜にしてしまうその理由が十分に伝わってきた。
YENTOWNの盟友でもあるu-leeのDJで「So What」のイントロがスタートすると、「誰に何と言われようとAwich好きって人どんだけいんのー?!」とエネルギッシュなマイクパフォーマンスでAwichが登場。「マジで皆愛してます。このライブを自分が1番楽しんでやると思ってるけど、私に負けないって人いる?」とオーディエンスに問いかけ大きな歓声を受けると「最高です。どっちの方が楽しめるか勝負しましょう!」と序盤からフロアのテンションを一気に上げる。
最新作のダブルEP『Beat』『Heart』からも「Fade Away」「Long Time」などの楽曲を披露し、さらに「Boss Run Dem」「Come Again」と息をつく暇もないほどキラー・チューンを畳みかける中、「スペシャル・ゲスト呼んでいいですか!」と自身の愛娘でもあるYomi Jahを呼び込みYomi Jahが4歳の頃に作られたという「Uptown Top Ranking」を息の合ったダンスとともにパフォーマンス。「この子(Yomi Jah)は今10歳なんですけど、波乱万丈な人生を生きてきてるんです。迷惑をかけたこともあるし危険な目に合わせたこともある。だけど私が辛い時にいつも傍にいてくれて、本当に支えられています」と母娘の強い絆を語り「Jah Love」を披露した。
その後も、Chaki ZuluやYENTOWNとともに歩むきっかけとなった「Crime」やKANDYTOWNのIOを客演に迎えた「What You Want」など、時には攻撃的なラップで、時には妖艶なフロウで曲ごとに変化する表情を見せつつ、「初ワンマンで出したばっかの曲やるのは緊張するけど、こうやってプレッシャーを乗り越えて強くなっていくんだと思います」というMCから「Pressure」、そして「私もたくさん乗り越えていくんで、皆も他の誰でもなくあなた自身でいてください」と観客にエールを送り「WHOUARE」を歌い上げた。
DJプレイを挟み、前半の真っ赤な服装から白を基調としたスタイルにチェンジして再び登場すると、EGO-WRAPPIN’の代表曲「色彩のブルース」をオフィシャルでサンプリングした「紙飛行機」を披露。そして、「皆に観てほしいものがあるんだよね」と切り出すと、Yomi Jahと海辺で会話する映像が流れ始める。「“Ashes”は遺灰という意味なんですが、私は旦那さんを亡くしていて。その時にトヨミと一緒に彼の灰を海に流したんです。それが正解だったかどうかなんて分からないけど、海に流すことで私たちを取り巻くエネルギーになればいいなと思って。」と語り、ミュージック・ビデオをバックに「Ashes」を歌い上げた。
後半には、「WHORU?」でまさかのシークレット・ゲストANARCHYが登場。大歓声とともに<お前誰?>のパンチラインがフロアからも響き渡るとANARCHYは「みんな、Awichのこと大好きだろ! だけど、皆より俺の方がAwich大好きだ!!」と高らかに叫び、会場はこの日のハイライトとの一つとも言える盛り上がりとなった。
Awichから「本当にありがとうございます。皆の事が本当に大好きです。」と感謝の気持ちが告げられ、SNSでファンがミュージック・ビデオの振付を踊る動画が話題となった「Love Me Up」で会場が一体感に包まれる中大団円を迎えると、「これからも私を愛してくれますかー!」という彼女の言葉に惜しみない歓声と拍手が贈られライブの幕が閉じた。自身の経験を糧にした芯のある強さと女性らしい美しさを持ち合わせながら、不意に弱さもさらけだす自然体なAwichのライブを一度観れば、誰もが惹かれてしまうに違いないと感じさせられた一夜だった。
Photo:KEITA SUZUKI
Text:神人未稀
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