2012/09/12
異色の経歴を持つ23歳のシンガーソングライター 木村竜蔵が、メジャーデビューを飾るミニアルバム『6本の弦の隙間から』を9月12日にリリースした。
昭和の演歌 / 歌謡界を象徴する大御所の1人 鳥羽一郎の長男である彼は、17歳の時にインディーズシングル『愛しい人よ / FLOWER』でシンガーデビュー。と同時に共同プロデューサー 岩見邦生氏と事務所を立ち上げ、時には制作や予算の会議といったシビアな場にも参加するなど、新人らしからぬ経歴を辿ってきた異色のミュージシャンだ。
ただ、幼少の頃より父の現場に足繁く通ってはいたものの、当初から音楽家を目指すと公言していた訳ではない。むしろ音楽とは距離を置いていた所があったそうだ。「二世の人って皆さんそうだと思うんですけど、“やっぱりその道でしょ?”って目で見られるじゃないですか(笑)。だから“そっちの世界には行きたくない”みたいなことを言ってましたね」
<そこで本当にひとりきりになった>
とはいえ内心ではずっと憧れていた彼は、高校の転校を機に音楽活動を開始。前述通り若くしてCDデビューする幸運に恵まれるのだが、その後の活動も順風満帆とはいかなかった。シンガーとしての活動が本格化していく最中、彼が20歳の時に岩見氏が急逝してしまうのだ。
「それからは1人で地道に活動を続けていたんですけど、岩見さんが亡くなられたことで離れていく人は多かったですね。そこで本当にひとりきりになった。そういう状況でいざ音楽をやろうとしても、そんなに簡単に上手くはいかないんですよね」
それでも木村は誰に頼ることなく、地道に音楽家としてのスキルを磨くことを選んだ。大学卒業を迎える頃、就職していく友人たちに劣等感を覚えたこともあった。しかし、インディーズデビュー当時から「今は若さだけで成り立っている」と悟っていた彼は、ギターを手にひらすら弾き語りライブを繰り返し、去来する寂しさや孤独感を曲にしていく日々を続けることになる。
<見てろよ!?って気持ちはあります>
環境の変化は表現にも影響を与えた。当初は「万人受けを狙っていた」という楽曲も、より自由で生々しい表現を目指すようになった。昨年夏には鳥羽一郎デビュー30周年を記念した【鳥羽みなとまつり】で初めて父と肩を並べてステージに立ち、その存在感を改めて痛感した。そうした様々な活動の中で成長を重ねた木村は2012年秋、遂にメジャーデビューというチャンスを手にしたのだ。
全5曲が収録されたミニアルバム『6本の弦の隙間から』では、名うてのミュージシャンが演奏面をバックアップ。HEATWAVEのキーボーディストとしても活躍する才人 細海 魚がプロデューサーとして参加した。それもまた恵まれた環境であると十二分に理解している彼は、臆することなくより自由でスケール感のあるサウンド作りに挑戦したという。
「今こういうことができる方はそんなにいないと思います」と胸を張る23歳の眼差しは、並々ならぬ輝きをたたえている。寄せられる好奇の目に対し、「今に見てろよ!?って気持ちはあります」と不敵に笑う23歳の新星は、偉大な父をも超える存在を目指して大海に帆を揚げた。
◎ミニアルバム『6本の弦の隙間から』
2012/09/12 RELEASE
CRCP-40328 1600円(tax in.)
取材・文 杉岡祐樹
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