2018/11/26
新国立劇場が西村朗作曲、佐々木幹郎台本による新作オペラ【紫苑物語】世界初演を、2019年2月17日、20日に上演する。
事前に開催されたトークイベント【『紫苑物語』~ 一の矢「知の矢」石川淳の原作からオペラへ】は、満員の聴衆のもと、台本の佐々木幹郎、作曲の西村朗、指揮の大野和士、演出を手掛ける笈田ヨシ、そして監修を務める長木誠司の5名が一堂に会し、これまでの創作過程、本作の魅力などを、2時間にわたって語った。
『紫苑物語』は、石川淳が1956年に書いた短編。舞台は平安時代で歌の名家に生まれた国司の宗頼と、権勢を振るう家の娘、うつろ姫の婚礼の儀が執り行われる。歌の道を捨て弓術に邁進する宗頼を父は責め、宗頼は彼の妻に身持ちの悪いうつろ姫をあてがわれたことに怒る。宗頼は、第一の矢(知の矢)、第二の矢(殺の矢)の弓術を習得し、人を殺すたびに、紫苑(忘れな草)を植えさせる。狩りに出た宗頼は怪しい魅力を持つ千草と出逢うが、千草は宗頼が射た狐の化身だった。狐の妖術に触れた宗頼は第三の魔の矢を悟る。
今年から芸術監督に就任した大野和士は「私の第1シーズンから、日本人の作曲家に委嘱をして、日本から発信する新しいオペラを新国立劇場で創造したいという希望は、相当早い段階から持っていました」と語り、喜びをあらわした。また音楽の作り方についても、「オペラの、オペラたる所以の1つというのは、重唱という形で、複数の人間が、それぞれのテキスト、リズム、フレーズを持って、全く違うパーソナリティーというものが横の流れのなかに収まるということです」というこだわりを、ずっとお願いをし続けたと語り、日本初の新作オペラというものへの明確な意思を感じさせた。
作曲の西村朗は、「2017年10月の初め頃から、音符を書き始めました。まず、歌のパートを作って、主にピアノで管弦楽の部分を表現するという、ヴォーカルスコアを作り始めたんですね。それから、ちょうど1年少し。その間私は、大体夜明け前、朝4時頃には起きて、1日平均9~10時間ずっと作曲しました」とその充実度と苦悩を垣間見させた。演出の笈田ヨシは、セットプランのイメージ画を提示しながら、「平安朝をお客様の想像力でイメージしていただくような装置です。平安朝時代の空気を想像していただけるように、非常に単純化しています。衣裳についても、時代考証に基づいた写実的なものではなく、非常に新しい感覚で、イマジネーションを起こしたい」と、どこか異世界を感じさせるプランが舞台への想像力と期待を高まらせた。
石川淳の描く、幽玄で摩訶不思議な、魑魅魍魎のうごめく世界観が、新しい時代の“オペラ”として眼前に現れる、2019年の世界初演を楽しみに待とう。
◎公演情報
オペラ【紫苑物語】
新国立劇場
2019年2月17(日)~24日(日)全4公演
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