2018/11/10
J-MELOの主たる視聴者層は、00年代にアニメを通して日本音楽に接触した人たち。そんな日本愛好家が最初に知ったアーティストの第1位が、L’Arc-en-Cielだ。彼らのファンベースは、アジア、北中米、欧州など、世界各地に存在し、お揃いのTシャツを着たグループ写真や、hydeさんのモノマネをして歌うビデオなどが、たくさん送られてきた。
※J-MELOリサーチ2013 http://www.nhk.or.jp/j-melo/nhkworld/japanese/research/2013.html
世界的知名度を高めた鍵は、アニソンにある。メジャー初CDシングルである「Blurry Eyes」(1994年『D・N・A2~何処かで失くしたあいつのアイツ~』オープニングテーマ)を端緒として、「the Fourth Avenue Café」(1997年『るろうに剣心-明治剣客浪漫-』主題歌)、「Driver’s High」(1999年『GTO』主題歌)など、数多くのアニソンを手がけ、ヒットを重ねた。
L’Arc-en-Cielの海外初ライブは、2004年にアメリカ東海岸・ボルチモアで開催された【OTAKON】、その名の通り「オタク・コンベンション」の略称だ。日本ではスタイリッシュでクールなロックバンドの代表格である彼らは、アメリカではアニソン・バンドとして受け入れられたのだ。2012年にニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンのメインアリーナで開催された記念碑的ライブでの、「READY STEADY GO」(2004年『鋼の錬金術師』オープニングテーマ)の客席の大合唱は、いまだに私の耳に響いている。
2015年に「一番好きなアニソン・アーティストは?」という質問を視聴者にしたところ、首位はL’Arc-en-Cielだった。この状況を、本人たちはどのように捉えていたのだろうか?同じ年に、番組の放送10周年を記念して出版された本で、ヴォーカルのhydeさんは、こう語った。「ラルクの功績は、アニメによるものが大きいと思います。アニメの主題歌でラルクを知った人がファンになって。(中略)特に【OTAKON】の時はね。『僕が知ってるアニメの曲歌ってる~』って反応だけでもすごくうれしいですよね」(『J-MELO』が教えてくれた 世界でウケる「日本音楽」 ぴあ 文・まつもとあつし 監修・原田悦志)
入口はアニメがきっかけだったとしても、彼らは「89秒」というアニソンの枠をすぐさま飛び越えた。「アニメの主題歌を聴いて好きになり、それから彼らの曲を次々に聴くようになり、大ファンになった」多くの視聴者が、同じ意見だった。豊かな音楽性と、唯一無二の魅力がなければ、ニューヨークのみならず、ロンドン、パリ、シンガポール、ジャカルタなど、10の国と地域・14都市に及ぶ単独公演【WORLD TOUR 2012】など、実現しなかっただろう。
10年代も終盤に差し掛かり、この「アニソン・モデル」は転換期を迎えている。もはや、アニソンが日本音楽の希少な入口である時代は、過去のものとなったからだ。だからこそ、L’Arc-en-Cielが世界と日本に架けた虹は、世界志向のアーティストたちの道標として、眩い光を放ち続けている。
2018年12月、彼らの公演が東京ドームで開催される。未来に向けて進化を止めない彼らの姿を五感に焼き付けに、私も駆けつけるつもりだ。Text:原田悦志
◎公演情報
【L’Arc-en-Ciel LIVE 2018 L’arChristmas】
2018年12月19日(水)~20日(木)
東京ドーム
原田悦志:NHK放送総局ラジオセンター チーフ・ディレクター、明大・武蔵大講師、慶大アートセンター訪問研究員。2018年5月まで日本の音楽を世界に伝える『J-MELO』(NHKワールドJAPAN)のプロデューサーを務めるなど、多数の音楽番組の制作に携わるかたわら、国内外で行われているイベントやフェスを通じ、多種多様な音楽に触れる機会多数。
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