2018/09/03
オープニング・アクトのキトリは、姉モナと妹ヒナによるピアノ&ボーカル・デュオ。クラシカルなフレーズを挟み込みながら展開されるポップは非常にユニークで、カバーの「硝子の少年」は鳥肌モノだった。来年、メジャーデビューする予定で、今後も注目していきたい。
THE CHARM PARKは、浴衣姿で登場。憶えやすいメロディの背後に高い音楽的素養をにじませて、大人の音楽ファンは大喜び。オーディエンスが自然とコーラス・パートを歌ったり、楽しいライブになった。
優河は、ピアノ、ベース、ドラムをバックに、自らギターを持って歌う。1曲目のたゆたうようなミディアム・バラード「さざ波よ」で観客の耳を捉えて以降、トラッド・フォークに通じる清らかな魅惑が最後まで続いたのだった。
コトリンゴは、このステージで初のライブ・レコーディングを敢行。映画『この世界の片隅に』でも一緒に演奏した、徳澤青弦の率いるストリングス・カルテットとのセッションは、ほどよい緊張感で進行する。3曲目の「漂う感情」あたりから歌と弦の絡みがエモーショナルになり、最後の「たんぽぽ」では客席の子供が楽しげに身体を揺らす光景が見られた。11月3日にリリースになるライブ・アルバムは、きっと素晴らしい作品になるに違いない。
奇妙礼太郎はシュールでロマンティックな歌を次々に歌う。3曲目「天王寺ガール」は、ただ“君”がダンスしてたのさと歌うだけなのに、歌の主人公がどれほど“君”を愛しているかがよく分かる。すべてがこの調子で、インスピレーションに富んだパフォーマンスがオーディエンスの心を開いたのだった。
15周年を迎えた安藤裕子は、最新ミニアルバム『ITALAN』からの「至らぬ人々」でスタート。「これでいいんだよ」など、人間の業を感じさせるナンバーが、本門寺の境内によく似合う。ピアノのみでの「のうぜんかつら(リプライズ)」に、オーディエンスは静かに聴き入り、しっとりとライブは終った。
3日目の大トリを務めるのは、大橋トリオ。デビューして間もない頃から出演していて、オーディエンスも思い入れが深い。大橋が登場しただけで大きな歓声が上がる。1曲目「そんなことがすてきです。」で早くもハンドクラップが起こった。
新旧織り交ぜたセットリストが嬉しい。アーシーな曲調を洗練されたアレンジにするのが得意な大橋は、ギターやピアノ、マンドリンなど楽器を持ち替えて自ら演奏を楽しむ。その楽しさが会場に伝わって、オーディエンスが和んでいく。15周年となる“Slow LIVE”を象徴するハッピーなステージだった。
最後に一人で現われた大橋はピアノで「生まれた日」を弾き語り、ミュージシャンとしての風格が漂うアンコールとなった。
Text:平山雄一(音楽評論家)
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