2018/08/14
7月20日、代官山UNIT/SALOONにてヒップホップ・クルー<YENTOWN>による主催イベント【YENJAMIN】が開催された。本稿では、kZmの1stアルバム『DIMENSION』リリースツアーファイナルに加え、Awichの新曲「What You Want ft. IO」のリリースパーティーも兼ねたスペシャルなイベントの模様をレポートする。
前回の【YENJAMIN】は、MONYPETZJNKMNのリリースを記念して開催された2017年7月。1年ぶりにYENTOWNが集結――彼らのこの1年の縦横無尽な活躍ぶりを考えても、その期待度は昨年とは比べ物にならないほど膨れ上がっていた。そして結果的に、この日の【YENJAMIN】は記憶に残る名シーン尽くしだったと言えるだろう。
本日の主役の一人、kZmは初っ端から『DIMENSION』収録の「Rari-狂-」で会場の沸点を上げにいく。そしてこの日は、同アルバム収録の「Wolves」で5lack“師匠”も援護射撃し、その相性の良さと破壊力を改めて見せつけた。ただし、今日のkZmは止まらない。畳み掛けるように「昔からYENTOWN好きなやつどんだけいんの?」と観客を煽ると、不穏な旋律とともに流れ始めたのは「BMW」。まさか――kiLLa、そしてYDIZZYの登場だ。
YDIZZYは休養を経て復活の狼煙を上げたばかり。さらにこれまでの経緯を踏まえても、このタイミングでの登場は予想外だった。本人たちにとっては必然かもしれないが、YENTOWNとkiLLaのリユニオンは、ヘッズたちにとってはビッグサプライズだったはず。「BMW」に「Ice Cold City」……この夜における盛り上がりの頂点のひとつが、ここで訪れることになった。
続いてAwichの時間が到来。「YENTOWNのことヤバくないって言うヤツがいたら何て言うか知ってる?」と煽った後に登場するのは、もちろんANARCHY。“まじお前誰?”という、昨年随一のパンチラインを生んだ「WHORU?」を炸裂させた。続いてKANDYTOWN・IOと魅せる新曲「What You Want」をしっとりと歌い上げると、IOと同じくKANDYTOWNのKEIJUとともに、『8』収録の鉄板サマーチューン「Remember」をフロアに投下! この日はこれだけに収まらず、KOJOEが「BoSS RuN DeM」で登場するという豪華さだった。
ただし個人的には、この日のイベントを“興奮”だけで片付けるにはもったいない気がした。それは、あの空間に溢れていたYENTOWNファミリーの愛に、“感動”を覚えたからだ。思い返せば、YENTOWNの絆は常に現場で目撃してきた。クルーの誰かがライヴをする時は皆で掛け付け、ライヴではMARZYを筆頭に主役をサポートしながら観客を盛り上げ、ライヴ後はヘッズたちと同じように皆で街へ消えていく――そんな光景をこれまでも幾度と見てきた。
そんな愛は、ライブ後にステージ上で行われたChaki Zuluのサプライズバースデーからも垣間見た。そしてこのイベントの後に開催された【FUJI ROCK FESTIVAL'18】でChaki Zuluが一夜限りの復活を遂げた時も、YENTOWNのメンバーは、“兄貴”“先生”“天使”などと呼んで尊敬する仲間の晴れ舞台に駆けつけ、会場にいる誰よりもその場を盛り上げにいった。仲間たちとともに好きなことを曲げずに生きていく彼らの姿は、多くの若者たちにとって眩し過ぎる憧れであり、「僕も私もYENTOWNみたいに生きたい」――そんなヘッズたちの想いも背負って、彼らは今のTOKYOを象徴するような存在になったように感じる。
ライブのラスト、kZmの言葉が印象的だった。「こんなクズでもできるんだから、みんなもやりたいことを見つけて、やれば絶対できるから。みんな若いし、なんかやりたいと思ったら絶対に続けた方がいい。それだけ。俺らでもできるんだから」。ケータイのライトでフロアが照らされた中での盟友BIMとの「Dream Chaser」は、いつもにまして温かく響いた。
さらにPETZは、「俺ら、もうひとりメンバーがいるんだ。いなくて悲しいっしょ。でも俺らがこうやっていいパーティーをすることで彼に還元できるんだ」と語った。ここにいるべき男――JNKMNへの想いも、彼らは素直に言葉にしていた。この日、PETZ とMonyHorseはMONYPETZJNKMNのEP『下』から「mirage」、1stアルバム『磊』から「SPACY」、「44」などを披露したが、それはなによりも「JNKMNはここにいる」……そんな彼らのメッセージだったように感じる。それを踏まえても、JNKMNが戻ってきた後の次の【YENJAMIN】は、きっとこの日以上の狂乱が待ち受けているであろうことは、容易に想像がついた。
熱狂と感動が幾重にも重なり合った【YENJAMIN】。ステージ上でYENと書かれた旗を振る光景は、まるでYENTOWNが次の航海へ進むことを宣言しているようだった。ただし彼らは何も変わらない。YENTOWNは、仲間とともにZUTTOこのまま進んでいく。
text:ラスカル(NaNo.works)
photo:Ryohei Anbo
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