2018/07/20
2018年6月29日にデジタル・リリースされたドレイクのニュー・アルバム『スコーピオン』のCDが7月13日に発売されたが、6月末の時点で全米の音楽小売業者にCD発売の有無がまだ知らされていなかった。
前作『モア・ライフ』のCDが結局発売されなかったこともあり、半ば諦めムードが漂う中でのCDリリースとなったわけだが、仮に『スコーピオン』のCDがデジタルと同時に発売されていれば全米で25万から30万枚の初週売上は堅かったところを、タイムラグを挟んでのリリースとなった今回は初週に5万枚売れれば良い方だと業界アナリストは見ている。
年々CDの売れ行きが落ち込んでいるとは言え、全米における2017年のCDセールスは10億ドル(約1,124億円)を超えている為、何故レーベル側がCDの発売を渋るのかと小売業者たちは途方に暮れている。ある小売業者は、CD1枚につき2セントの印税が入ることを念頭に、「ドレイクがやっていることは、10万ドルと50万ドルがそれぞれ入った2つの袋がテーブルに置いてあるのを見て、多い方の袋を残しているようなものだ」と戸惑う。
CD発売を遅らせる理由についてレーベル側は、リリース前の流出と海賊版をある程度防止できるからだと説明しているが、現在はストリーミングからも比較的容易に音源をリッピングすることが可能だ。『スコーピオン』に関してあるメジャー・レーベルの社長は、ドレイクは50万ドル(約5,620万円)以上のCD収益よりも、ストリーミングでトップになったという名誉が欲しかったのではないかと見ている。もちろん、この50万ドルにはドイツや日本など、現在もCD人気が高い主要な音楽市場は含まれていない。
全米の小売業者は、発売日が告知されないことや年々減少する事前情報など、大きなリリースに関するメジャー・レーベル側の非協力的な態度が、CDの売り場面積の縮小に繋がっていると危機感を抱いている。
2018年前半の27週における全米でのCDセールスは3,590万枚で、昨年の同時期と比較して19.9%下落している。レコード・ストア・デイの共同創立者マイケル・カーツは、「毎週何千人もの客に“そのアルバムは(CD版が)ない”と言わなければならず、帰ってもらうしかない店側にとっては悔しいことだろう」と憤る。
全米最大手のCD/レコード卸業アライアンス・エンターテインメントのマーケティング・ディレクター、ジャセリン・プライヤーは、情報公開が禁止されたサプライズ・アルバムは、売り上げの損失とデータ取得にかけなければならない労力という意味でさらに業界の首を締めると指摘する。
プライヤーは、リスナーの好みの細分化が進む中、よく考えられたマーケティング計画が役立つのはむしろ大きなアルバムだと話す。「データは最大のセールス要因だ。販売の鍵を握っている。ネットの通販サイトにデータがなければ、うちの営業担当者が情報を持っていなければ、小売店に何も売ることができない。情報公開が禁止されているせいでデータが混乱している状態はセールスにとって非常に大きな問題だ。(レーベル側が)この慣行をやめなければ、フィジカル販売の息の根を止めてしまうだろう」と彼女は述べている。
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