Billboard JAPAN


NEWS

2018/07/15

『サマー・パック』 チャイルディッシュ・ガンビーノ(EP Review)

 本作『サマー・パック』は、夏をテーマにした「サマータイム・マジック」と「フィールズ・ライク・サマー」の2曲を収録した、2004年の『Kauai』以来4年振りとなるEP盤。EP盤というと、通常4~6曲は収録されるものだが、特に何曲以上という規定はなく、大ヒットしたドレイクの『スケアリー・アワーズ』(2018年)など、2曲で構成されるものもある。昔懐かしい、両A面シングルみたいなものか。

 チャイルディッシュ・ガンビーノは、今年5月にリリースしたシングル「ディス・イズ・アメリカ」が、自身初の全米No.1を獲得したばかり。日系監督のヒロ・ムライが担当した同曲のミュージック・ビデオは、頭に袋を被せられた黒人男性を背後から射殺するシーンや、ゴスペル隊を乱射する衝撃の内容が大きな話題となり、公開2か月で3億回視聴を超える大ヒットを記録した。

 アメリカの社会情勢を深刻に訴えた「ディス・イズ・アメリカ」とは一転。新曲は、どちらも良い意味でサラっと聴き流せる、爽やかなサマー・チューン。両曲とも、「ディス・イズ・アメリカ」や前作『アウェイクン、マイ・ラヴ!』(2016年)をプロデュースした、ルドウィグ・ゴランソンとの共作。

 「サマータイム・マジック」は、シンプルすぎるくらいシンプルに綴られたラブソング。サウンドも、ドライブやフロアで映えそうな、レゲエベースのエレクトロ・ポップで、チャイルディッシュ・ガンビーノらしからぬライトな仕上がり。さざ波の音や風通しの良いコーラスなど、夏らしい演出が曲のイメージをかきたてる。個人的にはこの“サマータイム”、セピア色の雰囲気を感じさせる「夏の夕暮れ」という印象を受けたのだが、みなさんにとってはどんな “サマータイム”だろうか。

 一方の「フィールズ・ライク・サマー」は、マックスウェルやザ・ウィークエンドあたりを彷彿させる、オルタナティブ・R&B~ネオソウル。宙に浮くようなファルセットや強くきかせたエコーが、涼しさを音で体感させる。「ディス・イズ・アメリカ」ほど重くはないが、「世界が変わることを望んでいる」と社会問題についても軽く触れている。この曲の方が、今までのチャイルディッシュ・ガンビーノらしい。

 この2曲と、大ヒット中の「ディス・イズ・アメリカ」が収録される新作は、今年中にリリースされる予定だが、発売日やタイトルなどの詳細は明らかになっていない。 チャイルディッシュ・ガンビーノは、その4作目となるスタジオ・アルバムが最後の作品になると宣言しているが、また違う名前でアーティスト活動を再開してくれるかもしれない。9月からは、レイ・シュリマーとアリーナツアーを開催する。


Text: 本家 一成

チャイルディッシュ・ガンビーノ その他の画像・最新情報へ

関連商品

アウェイクン、マイ・ラヴ!
チャイルディッシュ・ガンビーノ「アウェイクン、マイ・ラヴ!」

2017/01/11

[CD]

¥2,592(税込)

アウェイクン、マイ・ラヴ!
チャイルディッシュ・ガンビーノ「アウェイクン、マイ・ラヴ!」

2017/01/11

[CD]

¥2,592(税込)

ACCESS RANKING

アクセスランキング

  1. 1

    <インタビュー>YUTA(NCT) ミニアルバム『Depth』に込めたソロアーティストとしての挑戦――「たくさんの経験があったから今がある」

  2. 2

    和楽器バンド、活休前最後のツアーが開幕 10年分の感謝をこめた渾身のステージ

  3. 3

    JO1、ワールドツアー開催を発表「ここから世界に羽ばたいていきます」

  4. 4

    <インタビュー>米津玄師 新曲「Azalea」で向き合った、恋愛における“距離”――「愛情」の源にある“剥き身の生”とは

  5. 5

    <ライブレポート>ano「次に会う時まで必ず生きて」――ツアー追加公演完走、音楽でたどり着いた“絶対聖域”

HOT IMAGES

注目の画像