Billboard JAPAN


NEWS

2018/06/23

『エヴリシング・イズ・ラヴ』ジェイ・Z&ビヨンセ(Album Review)

 2018年6月6日からスタートした【オン・ザ・ランII】ツアーを行っているジェイ・Z&ビヨンセ夫妻が、“ザ・カーターズ”というファミリー・ネームを起用したユニット名で、アルバム『エヴリシング・イズ・ラヴ(Everything Is Love)』をサプライズ・リリースした。

 6月16日に発売されると、2日間でアルバムについてのツイートが210万を記録。中でも、パリのルーブル美術館を貸し切って撮影されたミュージック・ビデオが話題の先行シングル「エイプシット」は、すさまじい記録を更新している。同曲は、夫妻に加えファレル・ウィリアムスがプロデューサーとして参加し、制作陣にはミーゴスのクエヴォとオフセットもクレジットされている。ポップな要素は皆無の真っ黒いヒップホップ・トラックに乗せた、ビヨンセのラップが超クール。一列になって揺れるフォーメーション・ダンスも完璧だ。一方、ジェイ・Zは今年2月開催の【第52回スーパーボウル】で、ハーフタイム・ショーのパフォーマンスを断ったことを暴露している。出演について曖昧にしていたのは、この曲のためだったのか(?)。

 エディ&アーニーの「You Make My Life a Sunny Day」がサンプリングされた、ラストの「ラヴハッピー」では、ビヨンセが「あなたは“あること”をしたけど、 私は変わってくれると信じてる」と意味深なフレーズを歌う。これは、2~3年前に報じられたジェイ・Zの浮気について、今の心境を語ったもの。当時ビヨンセは、6thアルバム『レモネード』(2016年)で反撃、ジェイ・Zは翌2017年にリリースしたアルバム『4:44』でそれを認め、謝罪したことが話題となった。一方、ライブでは手をつないでステージに登場したりと、円満っぷりをアピール。夫婦のイザコザもビジネスに変えてしまう、この2人のプロ意識には感服する。

 ファレルが制作に参加したもう1曲の「ナイス」は、2000年代初期に自身がプロデュースしたタイトルに近い、ファレル節全開のヒップホップ。参加する作品によって、こうもカラーを変えられる彼のプロデュース能力もすばらしい。

 ファット・ジョーやリル・ウェインなどの作品で知られるプロデューサー・チーム=クール&ドレーによるプロデュース曲「サマー」は、70年代ソウルとレゲエをミックスしたような、レトロな曲。タイトルが示す直球の“夏ソング”で、レゲエ/ダンスホールのサウンド・システム=ストーン・ラブ(Stone Love)がフューチャーされている。ビヨンセは、2016年のアルバム『レモネード』でも、「ホールド・アップ」や「ソーリー」など、レゲエを取り入れたナンバーを軽々歌いこなし、あらためてボーカリストとしての実力をみせつけた。

 売れっ子ラッパーのタイ・ダラー・サインがコーラスと制作に参加した「ボス」は、ホーンの音が鳴り響く、ファンクに通じるループ感覚がたまらない。プロデューサーにはブルックリンのDJ/プロデューサー=メロー・Xとマイク・ディーンも参加している。ヒットメイカーのボーイ・ワンダと、ドレイクのプロデュースでもおなじみとなったトロントのビートメーカー=Navが制作に参加した「フレンズ」は、ボーカルとラップを交互に絡ませた、そのドレイク直結のナンバー。流行もしっかり取り入れている。

 リアーナの「ラブ・オン・ザ・ブレイン」(2016年)などを手掛けるノルウェー出身の音楽プロデューサー=フレッド・ボールが参加した「713」は、ソウル・ユニットのハイエイタス・カイヨーテによる「Sphinx Gate」(2012年)と、コモンの人気曲「The Light」(2000年)の2曲が、「ハード・アバウト・アス」には、故ノトーリアス・B.I.G.のヒット曲「Juicy」(1994年/ラップ・チャート1位)がネタ使いされている。そして「ブラック・エフェクト」には、内田裕也率いる日本のロック・バンド=フラワー・トラベリン・バンドの名曲「Broken Strings」(1973年)がサンプリングされた。カニエの“早回し”的な使い方が絶妙で、ノスタルジックな雰囲気に包まれる。

 続行中のツアーは、今年10月まで行われる予定。今後、本作からも数曲がパフォーマンスされるだろう。 なお、『レモネード』に続くビヨンセのソロ・アルバムについては、何もアナウンスされていない。

Text:本家一成

◎リリース情報
『エヴリシング・イズ・ラヴ』
ザ・カーターズ(ジェイ・Z&ビヨンセ)
2018/06/16 RELEASE

ビヨンセ・ノウルズ その他の画像・最新情報へ

関連商品

ルネッサンス
ビヨンセ「ルネッサンス」

2022/09/14

[CD]

¥2,750(税込)

B’DAY
ビヨンセ「B’DAY」

2019/03/13

[CD]

¥1,100(税込)

デンジャラスリィ・イン・ラヴ
ビヨンセ「デンジャラスリィ・イン・ラヴ」

2019/03/13

[CD]

¥1,100(税込)

4:44
ジェイ・Z「4:44」

2017/07/28

[CD]

¥2,750(税込)

レモネード
ビヨンセ「レモネード」

2016/07/06

[CD]

¥3,630(税込)

メイド・イン・アメリカ
(V.A.) ディアンジェロ ジェイ・Z リタ・オラ パール・ジャム ラン・DMC ジル・スコット カニエ・ウェスト「メイド・イン・アメリカ」

2015/06/03

[DVD]

¥4,180(税込)

ルネッサンス
ビヨンセ「ルネッサンス」

2022/09/14

[CD]

¥2,750(税込)

B’DAY
ビヨンセ「B’DAY」

2019/03/13

[CD]

¥1,100(税込)

デンジャラスリィ・イン・ラヴ
ビヨンセ「デンジャラスリィ・イン・ラヴ」

2019/03/13

[CD]

¥1,100(税込)

4:44
ジェイ・Z「4:44」

2017/07/28

[CD]

¥2,750(税込)

レモネード
ビヨンセ「レモネード」

2016/07/06

[CD]

¥3,630(税込)

メイド・イン・アメリカ
(V.A.) ディアンジェロ ジェイ・Z リタ・オラ パール・ジャム ラン・DMC ジル・スコット カニエ・ウェスト「メイド・イン・アメリカ」

2015/06/03

[DVD]

¥4,180(税込)

ビヨンセ「4」

2011/06/29

[CD]

¥2,420(税込)

ビヨンセ「4」

2011/06/28

[CD]

¥1,584(税込)

アイ・アム… ワールド・ツアー
ビヨンセ「アイ・アム… ワールド・ツアー」

2010/12/22

[CD]

¥4,180(税込)

WOMAN 5
(オムニバス) ビヨンセ アシャンティ ジェニファー・ロペス ケリー・ローランド メイシー・グレイ ピンク アリーヤ「WOMAN 5」

2003/09/21

[CD]

¥3,353(税込)

デンジャラスリィ・イン・ラヴ
ビヨンセ「デンジャラスリィ・イン・ラヴ」

2003/06/25

[CD]

¥2,640(税込)

ワーク・イット・アウト
ビヨンセ「ワーク・イット・アウト」

2002/07/10

[CD]

¥864(税込)

ACCESS RANKING

アクセスランキング

  1. 1

    <ライブレポート>ano「次に会う時まで必ず生きて」――ツアー追加公演完走、音楽でたどり着いた“絶対聖域”

  2. 2

    <インタビュー>米津玄師 新曲「Azalea」で向き合った、恋愛における“距離”――「愛情」の源にある“剥き身の生”とは

  3. 3

    【先ヨミ】timelesz『because』24.9万枚で現在シングル1位独走中

  4. 4

    【ビルボード】ロゼ & ブルーノ・マーズ「APT.」総合首位、洋楽としては約11年半ぶりの快挙

  5. 5

    ロゼ&ブルーノ・マーズ、11/22大阪開催【MAMA】で「APT.」世界初披露へ

HOT IMAGES

注目の画像