2018/06/15
フジコ・ヘミング初のドキュメンタリー映画『フジコ・ヘミングの時間』が、明日6月16日からシネスイッチ銀座ほか全国にて順次ロードショーが開始となる。
60代で世界に見いだされたピアニスト、フジコ・ヘミング。本作では、その音楽はもちろんのこと、プライベートな空間やライフスタイルを存分に見せてくれる。フジコお気に入りのアンティークが飾られ、猫たち犬たちと共に過ごす、パリのアパルトマンの様子は、まるで映画のワンシーンのような雰囲気だ。そのほか宮大工がリフォームした町家で過ごす京都滞在など、フジコが家にかける愛情とこだわりがその映像美から伝わってくる。
5歳のときから、母の手ほどきでピアノを始めたフジコは、10歳からレオニード・クロイツァー氏に師事。東京藝術大学卒業後、28歳でドイツへ留学。一時は、聴力を全て失い、現在は左耳の聴力のみ40%まで回復しているという苦難の時を歩んできた。日本とドイツという2つの国の間でアイデンティティが揺れ動いてきた人生、厳しい母からのピアノの指導、ある日突然いなくなった父への複雑な思い。弟である大月ウルフとの「姉弟」対談も興味深い。
映画の中では、フジコが14歳の時に綴ったという絵日記が何度も登場する。終戦翌年の1946年の東京。配給のこと、家族のこと、ピアノの練習、そしてお裁縫など、話題はあちらこちらに飛びながら、ひとりの少女のリアルな日常が描かれている。鮮やかな水彩画、丁寧な日本語とところどころのドイツ語のペン字が愛らしい。デザイナーの父ゆずりの才能か、今のフジコのファッションや自宅のインテリアの好みにも通ずるセンスが垣間見える、貴重な記録だ。本日記は暮らしの手帖社から『フジコ・ヘミング14歳の夏休み絵日記』というタイトルにて6月23日発売が決定している。
今や80代となったフジコ・ヘミングは今も世界中で演奏活動を続けている。映画では、ワールドツアーでの演奏と裏側、2017年12月1日に東京オペラシティで行われたソロコンサートの「ラ・カンパネラ」フルバージョンを収録。その生きざまがにじみ出るような演奏から、波乱万丈の人生と、それでも音楽と共に生きつづけるフジコの姿が立ち上ってくる。ちいさなことからおおきなことまで、さまざまな困難に相対しているひとに、旅をするように見てほしい映像だ。 text:yokano
◎公開情報
映画『フジコ・ヘミングの時間』
2018年6月16日(土)シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー
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