2018/04/23
2018年1月25日にリリースされた先行シングル「ドント・メイク・ミー・ウェイト」が話題となった、スティングとシャギーのコラボレーション・アルバム『44/876』は、当初アルバムとして発売する予定はなかったそう。2人はスティングのマネージャーによって引接され、ルーツであるレゲエに取り組みたいという意欲から、アルバムの制作に至ったとスティングがインタビューに答えている。昨年あたりから、レゲエ~ダンスホールが再燃していることもあり、タイミング的にもベスト。
シャギーの全米No.1ヒット「イット・ワズント・ミー」(2000年)などを担当したプロデューサー=スティング・インターナショナルや、スティングの作品ではおなじみとなったドミニク・ミラー、レゲエ界の重鎮=ロビー・シェイクスピア(スライ&ロビー)、前作『ニューヨーク9番街57丁目』(2016年)のプロデューサーであるマーティン・キーゼンバウムなど、ジャマイカ~ニューヨークのミュージシャンたちが参加した本作。伝統的なレゲエのスタイルとUKロックが融合した作品であることは、言うまでもない。
タイトルの『44/876』も、スティングの出身地イギリスと、シャギーの故郷ジャマイカの国際電話の国番号をコラボさせたもの。そのタイトル曲は、エレクトロ・サウンドを起用した近代的なダンスホールで、曲間では番号をコールするダイヤル音が楽器のように飛び交う。この曲には、【グラミー賞】の<ベスト・レゲエ・アルバム>を受賞したモーガン・ヘリテイジと、キングストン出身のレゲエ・アーティスト=アイドニアがフィーチャーされていて、4者それぞれのレゲエ・スタイルが楽しめる。
アップでは、 シャギーっぽさが出たリズミカルな「ドント・メイク・ミー・ウェイト」や、ポップにクロスオーバーした「ドリーミング・イン・ザ・USA」、ピアノやホーンの生音を生かした、スリリングなマイナー調の「ウェイティング・フォー・ザ・ブレイク・オブ・デイ」がいい。
一方、 ボブ・マーリーを意識したような「サッド・トロンボーン」 や、 どこか懐かしいメロディラインが聴き心地良い「22ndストリート」、お経みたいなシャギーの歌いまわしがユニークな「クルーキッド・トゥリー」など、 ユルめのレゲエ・ソングも完璧で、それを歌いこなすスティングの才能には感服する。特に、ラヴァーズ・スタイルに合わせソフトに歌う 「トゥ・ラヴ・アンド・ビー・ラヴ」は最高の一言。 アルバムのコンセプトであるロックとレゲエが融合した「ガッタ・ゲット・バック・マイ・ベイビー」や「ジャスト・ワン・ライフタイム」~「ナイト・シフト」もすばらしい。
現在の荒んだアメリカの情勢を嘆くのではなく、改めて偉大な国だということ、理想の国に向けて進んでいこうという意思を、本作で示したというスティング。シャギーとのコラボについても、国やジャンルは違えど、音楽でひとつに繋がれるという“PEACE”な意味合いが込められているような気がする。
予断だが、49歳になったシャギーが大ブレイクした2000年当初よりも若々しくなった気がするが、それはもともと老けていたせいだろうか……(?)。
Text: 本家 一成
◎リリース情報
『44/876』
スティング&シャギー
2018/4/23 RELEASE
2,808円(tax incl.)
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