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2018/04/09

アン・ヴォーグ『エレクトリック・カフェ』(Album Review)

 およそ3年前からリリースをニオわせていた、 アン・ヴォーグの新作『エレクトリック・カフェ』が遂にリリースされた。

 本作は、名盤『ソウル・フラワー』に続く通算7作目のスタジオ・アルバムで、14年もの時間を費やしただけはあり、ファンの期待を裏切らない質の高いソウル・アルバムに仕上がっている。これまで、メンバーの脱退や再結成が繰り返されていたが、本作は初期メンバーのテリー・エリス、シンディ・ヘロンに加え、前作でメンバー入りしたローナ・ベネットの3人体制で制作された。

 プロデューサーには、先行シングル「アイム・グッド」を手掛けたラファエル・サディークや、日本でも高い人気を誇るR&Bシンガーのニーヨ、 ジャネット・ジャクソンやブランディー、リアーナ等トップスターを手掛けたコンプトン出身のデム・ジョインツ、そしてデビュー曲「ホールド・オン」(1990年)や最大のヒット曲「マイ・ラヴィン」 (1992年)等、アン・ヴォーグのキャリアを語る上では欠かせないプロデューサーチーム=フォスター&マッケルロイがクレジットされている。

 ネオンライトのタイトルに、シルバー&ゴールドのドレス、レトロなヘア・スタイルと、70年代を彷彿させるカバー・アートまんま、本作は70年代のリメイクとも言い切っていいほど、当時のコーラス・グループやディスコ・ヒットを意識したナンバーが目白押し。

 前述の「アイム・グッド」は、ラファエル節炸裂のネオ・ソウル・チューン。生音の質感が活かされた、70年代と90年代を行き来するような曲で、エイドリアナ・エヴァンスを彷彿させるフレーズもちらほら。ラファエル・サディークのプロデュースによるもう1曲の先行トラック「ハブ・ア・シート」は、同時期に大ブレイクしたスヌープ・ドッグをゲストに招いたナンバー。こちらも70年代と90年代をミックスしたようなトラックで、三重奏のコーラス・ワークをバックにスヌープのラップが良くハマる。本作には、スヌープのラップを取り除いたノー・ラップ・バージョンも収録されている。

 その他にも、フィリー・ソウルの代表格=ジョーンズ・ガールズをカバーしたかのような「デジャヴュ」や、爽やかなハーモニーで曲の世界観を表現する「ブルー・スカイズ」、ゴスペル風のコーラスで壮大に仕上げるスロウ「ソー・シリアス」等、彼女たちが影響を受けたであろう70年代ソウルっぽい曲がひたすら続く。

 浮遊感あるコーラスとデジタル・サウンドを組み合わせ、宇宙的なイメージを表現した 「ロケット」や、スピード感のあるダンス・トラック「リーチ・フォー・ミー」、 エフェクトをかけたボーカルにうねるベースを掛け合わせたタイトル曲、ドナ・サマーのようなディスコ・ホールを意識した「ラブ・ザ・ウェイ」等、70年代ディスコっぽいアップも秀逸。 EDMっぽい捨曲(?)の「ライフ」 も、彼女たちにかかればナインティーズ以前のリスナーも違和感なく聴ける傑作に…。Text: 本家 一成


◎リリース情報『エレクトリック・カフェ』
2018/4/25 RELEASE
VICP-65485 2,700円(tax in.)

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