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2018/03/10

BiS「止まってしまった時間を……進めます!」プー・ルイ卒業で呪縛の物語終焉……WACK(BiS/BiSH/ギャンパレ/EMPiRE)新フェーズへ

 2011年のデビュー以来、2014年の解散、2016年の再始動、そして今日に至るまでアイドルシーンに様々な伝説を残してきたBiS。その渦中でリーダー兼ヨゴレ担当として活躍してきたプー・ルイが3月4日、両国国技館での公演を最後に卒業し、WACK(BiS/BiSH/ギャンパレ/EMPiRE)の物語は新たなフェーズへと突入した。

<BiSとプー・ルイのあらすじ「武道館に立って伝説を残す」「世界を変える」>

 2011年のデビュー~2014年の解散に至るまでの旧BiSは、元々はリーダーのプー・ルイがソロ活動に苦戦し、険悪な仲であった渡辺淳之介マネージャー(現WACK社長)を困らせてやろうと勢いで立ち上げたアイドルグループであり(アイドルを選んだ理由は、高橋愛率いるプラチナ期のモーニング娘。にハマっていた為)、アイドル活動に関する一切のノウハウを持ち合わせていなかった彼女達は、自ら「可愛くもない、歌もダンスも上手くない、誇れるものは松隈さん(松隈ケンタ/サウンドプロデューサー)の音楽だけ」と口にしながら、だから他と同じ事をしても仕方ないと“悪ふざけ”とも捉えられるアプローチを次々展開。PV撮影で電車の中を勝手にデコレーションしたり、同じ曲(今やアイドルシーンのアンセム化している「nerve」)を連発したり、全裸で樹海を駆け回ったりした。また、メンバー間の内紛公開やそれに伴う脱退劇、過酷過ぎる24時間100kmマラソン、宿飯なしの車中泊ツアー、その果てにメンバーボイコットや乱闘騒ぎまでと、センセーションの呪いに疲弊しながらも、いつしか何も持たざる者たちが「武道館に立って伝説を残す」「世界を変える」と夢に向かって邁進するようになっていく。

 その結果、訳あって日本武道館での解散ライブは実現しなかったものの、武道館以上の高みと言える横浜アリーナでの解散ライブ【BiSなりの武道館】を実現(http://bit.ly/1qqUMcn)。黒人SPと研究員(BiSファンの呼称)の激しいバトル含め、会場中がいろんな意味でぐっちゃぐちゃになるという、最後の最後まで賛否両論巻き起こる特大花火を打ち上げて、文字通りBiSは散り散りとなった。

<プー・ルイ卒業発表「私はただ変われなかっただけ」「続けていくほうが正義」>

 その解散から2年。2016年7月8日にBiS再始動が発表。プー・ルイは【BiSオーディション】合格者であるキカ・フロント・フロンタール、ペリ・ウブ、アヤ・エイトプリンス、ゴ・ジーラと5人で新たなBiSの活動をスタートさせる。「CHANGE the WORLD」では「笑われたっていい どうなったっていい 絶対に世界変えるんだ 絶対に世界変えようね」とかつてのBiSを思い起こさせる宣言もしたりと、新しい仲間たちと再びアイドルシーンに革命を起こすべく躍起になっていた。翌年4月には【WACKオーディション】合格者であるパン・ルナリーフィとももらんども加入し、ビジュアルも性格もてんでバラバラの個性派集団というBiSらしいグループに進化。しかし、その最中でプー・ルイはダイエット企画に失敗し活動休止になったり、運営やメンバーのお情けで復活したりと、どうにもかつての異彩を発揮できず。そして、2018年初頭、奇しくもBiS初ワンマンの地である中野ヘビーシックにて卒業を発表。3月4日の両国国技館ワンマンにてBiSから去ることが明らかになった。

 何があろうとBiSから離れることのなかった彼女が、誰も予想だにしていなかった卒業を選んだ理由。それは当編集部による卒業インタビュー(http://bit.ly/2p0xNfK)でも語ってくれたが、アイドルシーンがかつてのアイドルシーンではなくなったように、BiSもまたかつてのBiSではなくなっていたこと。かつてプー・ルイの世界そのものであったBiSは、時代の移り変わりによって別の世界になっていた。格好良く言えば、かつてのBiSの象徴であるプー・ルイはそれに迎合することが出来なかった。格好悪く言えば、BiSのプー・ルイは新しい世界で戦い続ける人生に挫折したのである。だから彼女はこう語った。「新しいBiSが楽しいと思っているんだったら誇りを持ってこれからも通えばいい。私はただ変われなかっただけなんで、そこだけは本当に間違わないでほしい。続けていくほうが正義だから。」―――続けていくほうが正義。これは数多くのメンバーが脱退していくBiSの中で、何があろうと続けていく道を選んだプー・ルイが言い続けてきた言葉だ。

<カミヤサキ「変わっていた世界」の変遷をすべて体感してきた者の苦悩>

 そんなプー・ルイのBiS卒業前日まで共にステージに立っていた旧BiS時代からのメンバーがいる。カミヤサキだ。横浜アリーナでの解散ライブで大暴れしたのち、プー・ルイら他のメンバーが新天地での活動へ突き進んでいく中、彼女は渡辺淳之介が立ち上げたプロダクション・WACKに所属。現在のギャンパレの始まりとなるプラニメで再デビューを飾る。しかしこのユニットはその活動を短命で終え、ユメノユアやヤママチミキらと結成したPOPでリベンジを図るも自らが無期限活動休止になってしまったり、その間に後輩グループであったはずのBiSHがブレイクしていったり、ギャンパレ改名後にようやく軌道に乗り出すもBiSへのレンタルトレード移籍(アヤ・エイトプリンスがギャンパレへ)を命じられたりと、言うならばプー・ルイが感じた「変わっていた世界」の変遷をすべて体感してきた。その上で何があろうと苦悩しながらも続けていく道を選んできた。

 そして訪れた再びBiSでプー・ルイと共に活動していく日々。身も心もBiSと一体化していった彼女は、自由を体現するように振り切れたパフォーマンスを展開していき、後輩たちからも絶大な信頼を得ていく。このBiSならBiSHにもギャンパレにも負けないグループが作れると信じていただろう。しかし運命はまたもや彼女を苦しめる。ギャンパレでなくBiSのカミヤサキに誰もが違和感を覚えなくなっていた昨年12月、カミヤとアヤのレンタルトレード終了が発表され、しかもその日付が2018年3月3日(このときはまだプー・ルイ卒業は発表されていなかったが)、今思えば、プー・ルイ卒業の舞台である3月4日 両国国技館ワンマンにBiSメンバーとして立てないこともこの時点で確定していた。あくまでレンタルトレード。いつか終わりは来るものではあるが、この状況に彼女は困惑。その後のツアー【BiS 2nd BEGiNNiNG TOUR】中にも突然泣き出したりと、明らかに情緒不安定になっていた。

<「BiSの曲は呪いではなく魔法でした!」そしてレンタルトレード終了の儀へ>

 しかしカミヤは不器用であると同時に真っ直ぐだ。ゆえにすぐ悩んでしまうところもあるのだが、ギャンパレならギャンパレ、BiSならBiS、そこに人生を注ぐ形でしか未来を切り開けないことを知っている。プー・ルイのBiS最後の日まで共にパフォーマンスできなかったとしても、どんなに困難が目の前に立ちはだかろうとも、カミヤがステージに全身全霊を注がなくていい理由にはならない。それは彼女のアイドル人生が物語っている。だからカミヤにとってBiS最後のライブとなった3月3日【BiS FREE WiNTERLAND】@臨海副都心・青海南臨時駐車場J区画でも彼女は、歌もダンスも表情も誰よりも振り切れたパフォーマンスを繰り広げた上でこう語ってみせた。「2014年のBiSを引きずっていましたが、こうやってトレード期間があったからこそ、自分の中にあるBiSを終えることが出来たんだと思います。明日からは「元BiSのカミヤサキ」という枕詞に囚われないカミヤサキとして歩いていくことが出来そうです」と、そして「BiSの曲は呪いではなく魔法でした!」と「nerve」を歌い踊った。

 翌4日、両国国技館。事前のアナウンス通り、BiSのライブの前に【BiS×GANG PARADEレンタルトレード終了の儀】が行われた。まずはこの10か月間、アヤと共によく泣いて笑った日々=青春(http://bit.ly/2Fp7mLc)を駆け抜けたギャンパレによるラストアクトで、この7人の象徴的な楽曲であったビヨマンこと「Beyond the Mountain」が披露される。トレード終了発表の際には困惑していた7人だが、決して崩れることのない絆を全員で築いてきた彼女たちに相応しい、この上なく清々しいパフォーマンスをお届け。そして「以上、私たち! エンジョイプレイ、みんなの遊び場! GANG PARADEでした! ありがとうございましたぁ!」とひとつの物語を締め括ると、アヤは6人のもとから凛々しく立ち去っていく。その先に現れたカミヤとハイタッチを決めると(1回で決まらなかったが、それもまたアヤらしい)、今度はカミヤが戻ってきたギャンパレ初のアクトとして「FOUL」を披露。この日を迎えるまでは、メンバーもファンも「どうなるか読めない」と不安視していた部分もあったようだが、再会を果たした7人は一撃で「BODY&7SOUL!」体も魂をひとつにし、ギャンパレ以外の何物でもないパフォーマンスを繰り広げ、自分たちの力でレンタルトレードを大成功に導いてみせた。

<バラバラな魂がぶつかり合いながらひとつのカタマリになっていく様>

 そんなカミヤの門出を見届け、アヤを再び迎え入れたBiSは、プー・ルイ含む7人による最初で最後のライブへ。首吊り台に7つの巨大な鎌、開演前のSEはかつて脱退するメンバーへのアイロニーとして捧げられた「豆腐」。卒業式というよりは、死刑台と呼んだほうがしっくり来るBiSらしいステージと演出だ。1曲目はBiS再始動に向けて制作された再デビュー曲とも言える「BiSBiS」、失くしたアレを取り返す為のはじまりの歌が響き渡ると、BiS再始動後最大の熱量でもって凄まじいミックスとコールが巻き起こる。「アリーナァァァァ! 升席ぃぃぃぃ! 2階より上ぇぇぇぇ! 最後だからって2階より上も埋まりやがって! でも、愛してるよぉぉぉぉ!」2013年の両国国技館ワンマン(http://bit.ly/OWBWgA)では「アリーナァァ! 枡席ぃぃぃ! 2階、居なーい!」と笑いを誘ったプー・ルイだが、この日は満員の観客にご満悦の様子。そこに続けざまに披露される「Give me your love全部」「nerve」「My lxxx」「レリビ」と旧BiSから歌い継がれる名曲の数々。あの頃とはスケールもクオリティも何もかも違う世界の中で、愛も嫉妬も希望も絶望も入り混じった叫びがステージに向けられていく。

 そんな異様な空間の中で新旧ナンバーを繰り広げていく7人のメンバー。アヤはギャンパレで自信をつけた笑顔を振りまきながらプーへの愛情を幾度となくスパーク。キカは白塗りキャラに相応しく道化師のように振舞いながらも憂いが溢れてしまう。ゴジは寡黙でありながらも鋭い眼差しでこの歴史的瞬間を懸命に受け止めているようだった。ペリはとにかく前だけを向いてネガティブな感情を振り払うように歌い続ける。ももはプー・ルイが安心して卒業できるように少しでも立派になったところを見せようと奮闘。パンは「国技館でプーちゃんを超えたいです」という宣言を体現するように全身全霊でパフォーマンス。プー・ルイはそんな6人に奮い立たされるように、そして超えられない壁として抗うように過去最もエモーショナルな歌声を響かせていく。想いも在り方もバラバラ。けれどもそのバラバラな魂がぶつかり合いながらひとつのカタマリになっていく様は、まさにBiS。決して他のアイドルグループには真似できない唯一無二の特徴である。特に終盤の「primal.」「gives」「BiS」におけるソレは凄まじかった。

<「私もBiSという……愛しい呪いを断ち切らないといけません」>

 「2018年3月4日、私、プー・ルイはBiSを卒業します。再結成したばっかりのときは、みんなアイドル初心者で、私しか教える人がいなくて「これはどうしたもんか」ってすごく悩んだりもしました。ゴ・ジーラは感情が無かったし、キカは良い奴だけど不器用すぎる人だし、アヤは美人だけど残念だし、ペリは途轍もなく生意気だし、パンはすぐ泣くし、ももは最初から可愛かったけど、でも「おはようございます」も言えなかったもんね。でも今はそんなの感じないくらい、みんな頼もしくなりました。そうやってみんなが成長して、進化していく中で……私だけの時間が止まったままで、私だけが2014年に取り残されていました。みんながこんなに頼もしく変われたんだから、私もBiSという……愛しい呪いを断ち切らないといけません。世界は変えられなかったけど、BiSを作って、私の世界は変わりました。BiSはこれからも姿形を変えて、どんどん続いていきます。そうして続いていった先で、もっともっと面白い未来を見せてくれると信じています。

 ゼロから始まったアイドル研究会。「アイドルになりたい」という私のただのワガママで始まったBiS。今日はこんなにたくさんの人が来てくれていて、本当に嬉しいです。ありがとうございます。何者でもない私をこんな風なアイドルにしてくれたのは、研究員のみんなです。本当にありがとうございます。BiSは私の人生の一番の汚点であり、一番の誇りです。今日はBiSと私の戦いに自分の手で決着をつけてやろうと思います。止まってしまった時間を……進めます! BiSと私のはじまりの曲「BiS」」

<WACK(BiS/BiSH/ギャンパレ/EMPiRE)のこれから>

 こうしてBiS創始者自らの手で呪縛を断ち切ったことで、BiSの正真正銘新しいストーリーへの扉が開かれると、キカ・フロント・フロンタール、ペリ・ウブ、アヤ・エイトプリンス、ゴ・ジーラ、パン・ルナリーフィ、ももらんどの6人は再びステージへ。そして「今、私たち6人がBiSとしてここに立っています。BiSはいつだって最高でした。でも、私たちが最高の、最高の、最高のBiSを作ります!! 私たちがBiSです!!」とペリが叫び、新曲「WHOLE LOTTA LOVE」を初披露した。……あれから1週間。BiSは「これからのBiSはこの6人で作っていく」と全国各所でライブを繰り広げ、4月からは47都道府県ツアー【I don't know what will happen TOUR】を敢行。真新しいグループとして日本中に爪痕を残すべく駆け巡っていく。

 また、同じくWACKファミリーのBiSHは名実共に世界を変えるべく、かつてBiSが解散した地でもある横浜アリーナにてワンマンライブ【BiSH“TO THE END”】を5月22日に開催。ギャンパレはカミヤサキとの新体制でアヤがいた時代に負けない“最高”を更新するべく奔走、4月17日には勝負の大一番【ワンマンライブ「GANG 2」】をZepp DiverCity(TOKYO)にて開催する。BiSHの妹分として結成されたEMPiREも5月1日、いきなりマイナビBLITZ赤坂で初ワンマンを開催するということで下克上を起こす気満々である。そして、来週3月12日~18日には合宿型オーディション【WACK合同オーディション2018】が開催。昨年、WACK全グループのストーリーリーを激動させた企画なだけに何が起きるのか、否応なしに注目が集まるだろう。

 WACK(BiS/BiSH/ギャンパレ/EMPiRE)物語は完全なる新フェーズへ。

取材&テキスト:平賀哲雄
撮影:Jumpei Yamada

◎ライブ【BiS 2nd BEGiNNiNG TOUR FiNAL WHO KiLLED IDOL??】
2018年03月04日(日)両国国技館 セットリスト:
01.BiSBiS
02.Give me your love全部
03.nerve
04.My lxxx
05.レリビ
06.CHANGE THE WORLD
07.IDOL
08.SOCiALiSM
09.太陽のじゅもん
10.ロミオの心臓
11.NOT the END
12.Never Starting Song
13.SAY YES
14.I can't say NO!!!!!!!
15.明日が来るなら
16.NOT SPECiAL
17.Human after all
18.primal.
19.gives
20.BiS
21.WHOLE LOTTA LOVE

◎ツアー【I don't know what will happen TOUR】
2018年4月15日(日)沖縄・output
2018年4月28日(土)神奈川・F.A.D YOKOHAMA
2018年4月30日(月)埼玉・HEAVEN'S ROCK さいたま新都心VJ-3
2018年5月02日(水)千葉・柏PALOOZA
2018年5月05日(土)群馬・高崎clubFLEEZ
2018年5月12日(土)北海道・札幌KLUB COUNTER ACTION
2018年5月13日(日)北海道・札幌KLUB COUNTER ACTION
2018年5月19日(土)和歌山・SHELTER
2018年5月20日(日)奈良・NEVERLAND
2018年5月26日(土)宮崎・SOUND GARAGE MONSTER
2018年5月27日(日)鹿児島・SR HALL
2018年5月31日(木)東京・Shibuya WWW

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