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2018/02/27 12:00

ゴーティエ・カピュソン 音楽との「直感的な」交歓(Album Review)

 綺羅星の如き名チェリストたちが居並ぶフランスは、いまやチェロ王国だ。そんな国の中堅世代で人気・実力ともに抜けているのが、1981年生まれのゴーティエ・カピュソン。このアルバムは、彼がライナーノートで述べているように、演奏家としてのキャリアのみならず、これまでの人生全体に回顧的な視線を向けた15曲のアンコール集である。

 彼によると、このアルバムは人生の4つの行程を表している。まず、最初の演奏会で弾いたサン=サーンスの『白鳥』や、『タイスの瞑想曲』、フォーレ『夢の後に』は、これらをこよなく愛した母方の祖母と幼少期の思い出と結びついている。

 続いてチェロを本格的に学び始めた時期の作品として、エルガー、ラフマニノフ、パガニーニ、ピアソラや『鳥の歌』がある。演奏家として立って後にはポッパー、ジョプリン、チャイコフスキーにドヴォルザークが、そしてつい最近「発見」したソッリマと、長年相棒を務めるコンポーザー=ピアニストのデュクロが作曲した、その名も『アンコール』、といった具合だ。

 この極めて個人的なパースペクティヴを宿すアルバムは、「わたしの世界を発見する旅に誘う」と語るとおり、その人生をギュッと凝縮したポートレートになっている。

 珍しいのは、ゴーティエと長らくデュオを組んでいるコンポーザー=ピアニストで、このディスクでもピアノを担当しているデュクロの手になる、その名も『アンコール』そしてイタリアの作曲家でチェリスト、ソッリマによる作品と、

 一デュクロの作品は、三拍子で規則的に打ち込まれるピアノの和音に乗せ、チェロが無窮動的なパッセージをゴリゴリと弾きまくる。主題部は、ヴァイオリンのアンコール曲として名高いバッツィーニ『妖精の踊り』、あるいはここに収められているポッパーの小品とも雰囲気が似ている。チェロもピアノもノリよく派手に突っ走る。そのぶんメランコリック歌い口が魅力的な中間部がとの対比が映える。全体として演奏効果が高く、いかにもアンコール向きの作品だ。

2艇のチェロと弦楽のためのソッリマの『チェロよ、歌え!』は、弦楽合奏による、静謐な主題からはじまるも、沈黙していたチェロが入った途端、明らかにピアソラの影響を受けた2ビートの音楽へ変貌したり、チェロが敢えて粗野な響きをたてる箇所もあるが、基本となる音素材はほぼ同一ゆえ、単一主題によるポスト・ミニマル風の音楽で、チェロの2人とパリ室内管はそれら諸相を鮮やかに照らし出す。残る曲群は編曲ものが多いが、いずれ劣らぬ超有名曲ばかり、通して聴いても耳にもたれない、後味爽やかなものになっている。

 添付されるDVDでは、なんとスイス・アルプスの高峰を遥かに望む、標高3600メートルを超えるプチ・コンバンの雪原でサン=サーンスの『白鳥』を弾く映像などが収められていて、そこに幻想的なダンスの映像が挿入されるなど、映像づくりは全篇これゴーティエのプロモーション・ビデオ。指とボウをこれでもか、とクローズアップするので、技術を確かめたい向きにも、あるいは彼のイケメンっぷりを堪能したい向きにもたまらない特典だろう。

◎リリース情報
ゴーティエ・カピュソン『Intuitions』
2018/3/7RELEASE
WPCS-28126/7 3,200円(tax out.)

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