2018/01/26
活動休止から約6年、今年ライブツアーを控えている宇多田ヒカルが、配信シングルとしては前作「Forevermore」より約4か月振りとなる、新曲「あなた」を2017年12月8日に配信リリースした。
同楽曲は、映画『DESTINY 鎌倉ものがたり』の主題歌として書き下ろされたもの。楽曲のリリースと映画の公開が同タイミングだったことも併せて、12月18日付のHot 100では3位を記録。このチャートアクションを追う形で、Music Videoの再生回数も伸び、12月25日付のHot 100では2位にランクアップを果たした。リリースから1ヶ月半が経った現在でもダウンロードが好調で、1月22日付のHot 100で15位にチャートインしている。
では、楽曲はというと、チャート内の上位の楽曲たちは、音数が多めの煌びやかな打ち込みサウンドが溢れている中、この「あなた」は生楽器主体のシンプルなバンドアレンジが施されている。レコーディングメンバーはというと、Chris Dave(ドラム)、Jodi Milliner(ベース)、Reuben James(ピアノ)など、世界基準のトップミュージシャンたちがセッションしている。レコーディング場所は、ロンドンのRAK Studiosにて行われており、サウンドエンジニアはStephen Fitzmaurice (Sam Smithの「In The Lonely Hour」など)と、鉄壁の布陣で制作された。
コードの展開は、ほぼ4つのコードをループさせて作られていて、そこにピアノ、ドラム、ベース、コーラスが乗っており、更にブルー・アイド・ソウルのマナーに則った、Swing Out Sister、Bobby Caldwellばりのストリングスやブラスが温かみを演出している。RAK Studiosという環境も相まって、とても響きが美しく耳なじみの良い、どこか母親の胎内にいるような心地よいサウンドに仕上がっている。
宇多田ヒカルは、「活動休止中に普通の生活をするようになってから『言葉(歌詞)』が変わったと言われる」と、インタビューで答えていた。確かに以前の歌詞と比べると、よりリアリティーが増して、より人間的になったように感じる。しかし、彼女がデビュー当時から表現している、人間の根底にある「寂しさ」「孤独」「疎外感」など、彼女だからこそ書ける歌詞の存在感の力強さは、何も変わっていない。そこに、彼女自身の「声」が乗ると、切なさやしなやかさが何百倍にも増して、何度も何度も聴きたくなる不思議な魅力に変わることで、多くのリスナーにも届いているのだろう。
子どものために書いた母親からの目線の曲だが、母親に対する子どもからの目線にも感じられる「あなた」という曲。この曲を締めくくる最後の歌詞のフレーズだけでも、彼女印全開でグッときてしまう。母親になって確実に愛情の幅が広くなっている彼女の、今後のメッセージを聴きたくて耳がワクワクしている。Text:横山裕章(agehasprings)
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