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2018/01/22

2018年第一弾シングルは攻撃性と屈折感のある重厚且つヘヴィな1曲 / 「シック・ボーイ」ザ・チェインスモーカーズ(Song Review)

 超ハイテンションのEDM「#セルフィー」(2014年)でブレイクしていた頃、ザ・チェインスモーカーズがこんな形で進化し、ここまでブレイクすると誰が予想していただろうか。

 初の全米TOP10入りを果たした「ローゼズfeat.ロゼス」(2015年)以降、2016年リリースの「ドント・レット・ミー・ダウンfeat.デイヤ」が全米3位/全英2位の大ヒットを記録し、同年夏に発売した「クローサーfeat.ホールジー」が全米14週のNo.1をマーク。2017年は「パリ」(全米6位/全英5位)と、コールドプレイとのコラボ曲「サムシング・ジャスト・ライク・ディス」(全米3位/全英2位)が2曲連続でヒットし、同年の年間シングル・チャートでは、「サムシング・ジャスト・ライク・ディス」と「クローサー」の2曲がTOP10にランクインする快挙を達成した。

 “一発屋”と思ったリスナーも多かったであろう(?)、彼らがトップ・アーティストに上り詰めたのは、その時の流行をいち早く取り入れ、楽曲を進化させてきたことが理由として挙げられる。例えば、EDMが徐々に衰退し始めた頃には、トロピカル・サウンドや彼らの代名詞である“哀愁系”メロウ・チューンを取り入れたり、昨年4月に発表したデビュー・アルバム『メモリーズ...ドゥー・ノット・オープン』では、日系アメリカ人のR&Bシンガー=ジェネイ・アイコや、カントリー・デュオのフロリダ・ジョージア・ラインといったバラエティ豊かなゲストを招き、また新しいサウンドを届けてくれたり。

 2018年第一弾シングル「シック・ボーイ」も、これまでのタイトルとは全くタイプの違う、攻撃性と屈折感のある重厚且つヘヴィな作品。最近のアーティストでいえば、トゥエンティ・ワン・パイロッツやイマジン・ドラゴンズなどを参考にしたようなロック要素、ロジックやGイージーなど、ポップ寄りのヒップホップ系アーティストを彷彿させる節もある。グラフィティ・タッチなジャケットも、ロックやヒップホップを意識してのもの、かもしれない。

 タイトルが示す通り、歌詞もポジティブに見せたネガティブな内容で、生い立ちやコンプレックスが恨み節に綴られたフレーズや、「自分の人生にはどれだけの“いいね”が付くか?」という、現代のSNS依存を問題視したような一節もあり、重い。同日公開のミュージック・ビデオも、後退色~寒冷色をバックに、淡々と、時に感情的に演奏する彼らの表情が恐ろしく、ピアノが燃え上がったり、ライトの当たった部分を透けて見せたり、身体が溶けだしたりするホラーっぽい仕上がりが、「シック・ボーイ」という曲の世界観を表現している。曲の意味(内容)を理解した上で見ると、結構コワい(もちろん、悪い意味での“怖っ”ではなく……)。

 楽曲は、メンバーのアンドリュー・タガートとアレックス・ポール、(ショーン・メンデス、デュア・リパを手掛ける)米ニューヨーク出身の女性シンガー・ソングライター=エミリー・ウォーレンが制作し、プロデュースは彼らに加え、カナダ出身のDJ/プロデューサー、ショーン・フランクが担当している。

 「クローサー」路線の新曲を期待していたファンには、衝撃を与えたであろう、ザ・チェインスモーカーズの新曲「シック・ボーイ」。同じところには留まらない、常に進化していく彼らの貪欲さと、それを形にしてしまうセンスに感服する。恒例となったフィーチャリング・アーティストなしというのも、売れ線を無視した、この曲に対する情熱のようなものを感じるが、果たして世間の反応はどうだろう。


Text: 本家 一成

◎リリース情報
「シック・ボーイ」
ザ・チェインスモーカーズ
2018/1/18 RELEASE

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