2017/11/27
2017年10月、【BBL 10th Anniversary Premium Stage】で来日し、極上のステージを見せつけたエリカ・バドゥ。
愛、人間らしさ、そして神について直感的かつ大胆に表現し、“ソウル・フード”に飢えていた多くのリスナーに寄り添い、勇気づけたデビュー作『バドゥイズム』から20年。魅惑的な2ndアルバム『ママズ・ガン』で否定派を黙らせ、R&B界で不動の地位を築いた彼女は、今も数多くの次世代アーティストに多大な影響を与え続けている。
2015年からは【ソウル・トレイン・アワード】の司会者としても、その類まれな存在感と気の利いた率直な物言いで人気を集めている彼女に、米ビルボードが話を聞いた。
◎『バドゥイズム』20周年、おめでとうございます。少し当時を振り返っていただきたいのですが、『バドゥイズム』で一番気に入っているスタジオ・セッションは何でしたか?
実は、私がレコード契約を交わした時点で『バドゥイズム』は既に完成していたのよ。スタジオには足したり磨きをかけるために入っただけで、最初に使ったのはニューヨーク・マンハッタンにあるバッテリー・スタジオだった。私が一つの部屋にいて、ウータン(・クラン)が一つの部屋にいて、コモンが一つの部屋にいて、モス・デフが一つの部屋にいた。
建物にはエネルギーがみなぎっていた。新人だった私は、男性陣から色々な助言を受けた。例えば、「何も変えるな。奴らに何も変えさせるな。この純粋さを維持するんだ。これはいい。このままにしておかなければならない」とかね。レーベルの思いつきやらA&Rやら何やらに私が付け込まれないよう、みんな気遣ってくれていた。本当に私はみんなから強い影響を受けた。
(ウータン・クランの)RZAがいてくれたから、私は自分が持っているものが十分であることを音響的に理解できるようになった。(ア・トライブ・コールド・クエストの)Qティップのおかげで、私は変わらないでいられたし、自分を偽らないでいられたし、自分が必要性を感じた時だけ変わることができた。本当に美しかった。みんなとても楽しんでいた。素晴らしいスタジオで最高の体験ができた。
◎あなたは自身の信仰や精神性を、“ソウル・フード”という形で世に送り出してきましたが、駆け出しだった頃と比較して今の音楽業界からは神や精神性への感謝の気持ちが薄れていると感じますか?
いえ、全てにおいて感じられる。だって多くの人にとって暗闇に見えるものは邪悪じゃないから。私には90年代生まれの子どもがいるけれど、彼らは周波数やバイブス(感情)が私たちよりもずっと高いところにある。
1997年や1999年や2007年の頃とは違う周波なのね。違う場所にいるの。彼らは言葉よりも周波を必要としている。この種の憤怒やバイブスは言葉とは関係ない。私がXXXTentacionとか、ヤング・サグとか、リル・ウージー・ヴァートとか、アグリー・ゴッドとか、トリッピー・レッドとかのコンサートに行くと、みんなが恍惚状態に入っているのを観察するのよ。そこではバイブスが生まれてる。言葉の問題じゃない。
今は時代が違う。魚座の時代は言葉が重要だったけれど、水瓶座の時代は電波で送られるバイブスや感情が肝心なの。それぞれの時代には独自の言語がある。私は『バドゥイズム』で周波やバイブスを解読し、音楽の随所に取り入れていた。今は両方(魚座系と水瓶座系)いるから本当に嬉しいのよ、実際にこういうコミュニケーションができるから。私の観客の90%は90年代生まれなのよ。
◎旧世代のアーティストの中には、次世代アーティストに対して心を開いていない人が多いですが、あなたはそうではなくて清々しいです。
あのね、心を開く必要なんてないの。心を開くということは、心の一部が閉ざされているということでしょ。私は彼らなの。彼らは私の延長なの。私にとって音楽とはあなたの真実なの。あなたを信じることができれば、私はそれに合わせることができる。信じられなければ、“神が女性になって復活する”という話をしていたとしてもどうでもいい。
あなたが何について話していたとしても、私がそれを信じられなければ、そのバイブスを感じられなければどうでもいいこと。今の若者が感じていることに偽りはない。彼らはそれが何なのか分かっているから、誰かにそれを説明する義理もないところがとてもクールだ。ゴスペルがビバップになった時、変化を嫌った古い世代の人たちに避けられたのと同じよ。
そしてビバップはロックンロールになり、国を怖がらせた。そしてヒップホップは70年代の終わり頃に一時的なものとして責められた。全部同じなのよ。それが言語なの。私には19歳の息子がいるけれど、彼の真実には意味がないと私が言うのは、神や自分自身を批判するのと同じくらい間違っている。批判的でいることは有害だ。私は彼らを信じなければ。私は彼らで、彼らは私なのだから。
◎ジェネイ・アイコが、あなたの曲「Love of My Life」が現在自分の人生のサウンドトラックだと言っていたことがあります。ラプソディーは『ママズ・ガン』がそうだと言っていました。あなたの人生のサウンドトラックは何ですか?
ピンク・フロイドの『狂気 / Dark Side of the Moon』かな。引き分けだな。最初から最後までが一つの周波数で、同じモーションの一つの曲だから、あれが私の人生のサウンドトラックでしょうね。私のアルバム制作と同じ、私はシングルは作らないから。私も完全なプロジェクトを作る。それらは自伝的で、雰囲気がある。私たちは、世界や私たちの人生で起きていることについて話している。だから『狂気 』が一つ。もう一つはスティーヴィー・ワンダーの『インナーヴィジョンズ』。Heavy、heavy、heavy(重大で、重厚で、重要)。
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