2017/11/20
神奈川県川崎市にて11月10日より開催中の音楽フェスティバル【かわさきジャズ2017】のプログラム一環として、11月17日、ラゾーナ川崎プラザソルにて、女性ジャズ・ボーカリスト伊藤君子によるコンサートがおこなわれた。この日の公演は【伊藤君子~ひばりを歌う~】と題され、今年5月にリリースされた美空ひばりのトリビュート・アルバム『Kimiko sings HIBARI~伊藤君子、美空ひばりを歌う』に収録されたナンバーのほか、ジャズやポップスのスタンダードが多数披露された。
平日午後の公演とあって、会場内がほぼ“ひばり世代”で埋め尽くされるなか、真っ赤なドレスを纏った伊藤君子がバンド・メンバーの待つステージに登場。伊藤が「浮き世の憂さを忘れる時間をお過ごしください」と客席に挨拶すると、オープニングを飾ったのは、もちろん美空ひばりのナンバーから「東京キッド」。『Kimiko sings HIBARI』のレコーディングにも参加した宮本貴奈(p)、坂井紅介(b)、加納樹麻(ds)の奏でるジャジーで小粋なサウンドに乗せて、軽快なボーカルで一気に観客を引き込むと、アルバムのアレンジも担当した宮本貴奈の流麗なピアノ・ソロにフィーチャーした「魅惑のワルツ」に、「慕情」「津軽のふるさと」とひばりトリビュートを立て続けに披露していく。そして、「小豆島(香川県)の出身なのに、北国の音楽に惹かれる」というMCに続き伊藤が近年精力的に取り組んできた“津軽弁ジャズ”のコーナーへ。ビリー・ホリデイやサラ・ヴォーンなど多くの女性ジャズ・シンガーに愛されたナンバー「降っても晴れても」に、ミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』でおなじみ「マイ・フェイヴァリット・シングス」、ルイ・アームストロング「この素晴らしき世界」と、誰もが知るスタンダード3曲を完璧な津軽弁で披露する伊藤。フランス語にも通ずるメランコリックで情感溢れる津軽弁の響きにうっとりと耳を傾けているうちに、ショーの前半は終了。
約20分の休憩を挟み、後半はバンド・メンバーによるインストゥルメンタルから。ひばり世代のファンのためにチョイスしたというビートルズの名曲「ノルウェーの森」のインスト演奏を終えると、再び伊藤君子がステージに戻り「晴れた日に永遠が見える」、ジョン・レノンの「ラヴ」と伊藤がレパートリーとする名曲をパフォーマンス。そして、後半ももちろん「愛燦燦」や「一本の鉛筆」など、美空ひばりの名曲を歌い綴っていく。世界の平和を祈り歌われた「一本の鉛筆」は、ピアノのみのシンプルな伴奏で披露され、広島の原爆投下をもとに描かれた平和を強く訴える歌詞がよりダイレクトに心に突き刺さる。伊藤自身も「一本の鉛筆」は同名映画の撮影が小豆島でおこなわれ、エキストラで出演したという思い出深い1曲だそう。そのほか、後半もふたたび津軽弁バージョンの「フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン」や、越路吹雪の「ラストダンスは私に」などの名曲を披露し、アルバムでは日野皓正も参加しとびきりジャジーに仕上がった「恋人よ我に帰れ / LOVER, COME BACK TO ME」で華やかに本編の幕を閉じた。アンコールで歌われたのは、美空ひばり「川の流れのように」。日本の音楽史に残る壮大なバラードに最大限の“ひばり愛”を込めて歌う伊藤に観客からは惜しみない拍手と歓声が贈られた。
伊藤の人柄が滲み出るアットホームな雰囲気のなかでおこなわれた、この日の【伊藤君子~ひばりを歌う~】は、美空ひばりの残した偉大な名曲の魅力を再発見させてくれるものであり、“歌い継いでゆく”ことの意味や重要性を改めて感じさせてくれるものとなった。
◎公演情報
かわさきジャズ2017【伊藤君子~ひばりを歌う~】
2017年11月17日(金)
ラゾーナ川崎プラザソル
◎【かわさきジャズ2017】
2017年11月10日(金)~11月19日(日)
◎リリース情報
アルバム『トーキョー・ワンダラー』
渡辺香津美 with ストリングス
WPCR-17910 2,800円(tax out.) 発売中
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