2017/11/01
今、世界の音楽シーンを席捲するフューチャー・ソウル。海外ではロバート・グラスパーやハイエイタス・カイヨーテといった強力アーティストが名を轟かせるが、国内でも数々のアーティストが注目を集めている。そしてそのなかでも群を抜いて強い輝きを放つのがWONKだ。彼らは昨年デビューしたにも関わらず、早くも【SUMMER SONIC 2017】や【第16回 東京JAZZ】に出演。また、ホセ・ジェイムズの作品にもリミキサーとして参加し、ヨーロッパツアーも成功させるなど、海外からも熱視線が注がれている。そんな飛ぶ鳥を落とす勢いのWONKが、9月発表のツインアルバム【Castor】【Pollux】を携えて、10月27日、Billboard Live OSAKAに登場した。世界水準を越えていった彼らの極上ライブの模様をご報告しよう。
この日、1st・2ndステージ共に満席。2ndに至っては立ち見までいっぱいという状況。しかもプレス関係者の姿も多く、彼らの注目度の高さをうかがわせる。加えて興味深いのは、客席に若い層や女性の姿も多いこと。WONKの音楽が、コアな音楽ファンはもちろんのこと、高感度の若いミュージックラバーたちも幅広くとりこにしている証しだろう。そんないつもと少し気配の異なる会場は、Kosuke HaradaによるDJプレイでクラブのムードを濃厚に…。リラックスしながらも期待が高まるなか、ライブはスタートした。
まず姿を見せたのは荒田(D)。そして彼のドラムに乗せてメンバーが一人、また一人と舞台へ。時間と空間を切り離すことなく地続きとなるライブを予感させる。そしてその空気感のまま、スムーズに音世界へと観客を誘い始める。もちろん楽曲はニューアルバムからセレクトされ、そのなでるようなピアノの音色や重さのあるベースにゾクゾクさせられると、いっきにWONKワールドへ。メロウなボーカルも重なって耳心地も最高。高まる気分はアンダーグラウンドの鋭さを隠し味にしたナンバーでさらに上昇する。弾けるリズム、切り裂くSyn、ラフなSax、表情豊かな音は時代もジャンルも越えて一つになり刺激的な音体験をもたらす。出だしのリラックスムードから、気付けば自然と血が騒ぐ興奮へ。それはメンバーも同じなのか、長塚(Vo)がロックバンドのように「初めてのBillboard Live OSAKA、めちゃくちゃ楽しみにしてました。盛り上がっていきましょう!」と煽り、笑顔を見せる。…かと思えば、清らかなフルートやファルセットの歌声もパッケージして心地良く翻弄。客席は大きく手を振る人もいれば、恍惚の表情を浮かべる人も…と、聴く側の自由度も高い。これがWONKの世界なのだろう。またどこか不気味ささえたたえたメロディを響かせる【Feelin' You (Y.N.K)】では青いライトに照らされて深海のような音世界にしておいてから、ドラムのインプロヴィゼーションで浮上。会場からはFu!の大歓声が上がるのは必然だ。
そしてそこから「大阪はいつぶりだろう?(中略)なんだかんだでここに立ててるわけですけど、まさかワンマンで立てると思ってなくて…」(長塚)と喜びを言葉にし、プレゼント!とばかりに、11月8日にリリースされるThe Love Experimentとのコラボレーションアルバムから新曲【The World Looks So Brand New】をプレイ。つい踊りたくなるようなキャッチーさも漂わせるアップテンポなナンバーで中盤の攻撃を開始する。【Dance on the Water】ではハンズアップも起こって観客も前のめり。続く楽曲でも体の中から沸々とさせるベースラインや熱を帯びるボーカル、中毒性あるリフレインで、時にタテノリの景色も生み、さらに追い打ちを掛けるように疾走感あるダンサブルなナンバーでは、観客のクラップも巻き込み一体となって会場を跳ねさせる。また瞬間でポップな色合いも見せる【Loyal Man's Logic】では、雄弁なボーカルも印象的に曲も音圧も雰囲気もクレッシェンド。高揚感が広がっていく。
すると今度はムードを変えて、揺らめくSax、滑らかなピアノ、軽快なビートと再び色とりどりで綴る、熱さも冷たさもあるWONKらしい世界へ。しかも、リズム隊によるたっぷりの聴かせどころから始まり、Sax、ピアノが層になっていくパートは鳥肌もの。ライブの醍醐味を存分に見せつけ、まさに最高潮の様相だ。見れば、長塚は舞台を降りてスマホでメンバーを撮影。このなんとも微笑ましい一幕には、メンバーも心の底からライブを楽しんでいるのを感じる。そしてラストスパートは、ハードボイルドかつトリッキーな展開で勢いを増しておいてから、艶やかな【Cyber Space Love】へ。実はこれも新曲で、彼らが参加し、10月25日に発表されたばかりのセロニアス・モンクへのトリビュート盤【MONK's Playhouse】の曲。最後の最後にもうれしい贈り物だ。カラフルなパッチワークのようなイントロに持ち上げられ、変化球的なリズムとボーカルに押され、長塚の「歌えますか? 大阪!」のコールからはシンガロングも発生。壮大でドラマチックな本編のラストとなった。
当然、間髪入れずにアンコールの大拍手が鳴る。するとそんな沸騰した会場を和ませたのは長塚のMC。「本当に楽しかったです。また戻って来たいと思います」と語りつつ、「写真、撮ってもいいらしいよ。実は【Cyber Space Love】の時に言うのを忘れてて…(笑)」とコメント。それはきっと長塚自身もライブに夢中になっていたからだろう。今日のステージの高ぶり具合がこんなところからも伝わってくる。そして観客のスマホのフラッシュがきらめくなか、美しいメロディとピアノ、バンド感十分のアンサンブルをアンコールで響かせ、余韻たっぷりにライブは幕を閉じた。耳と心に残る熱とざわめきに、誰もが思わずもう1ステージでも2ステージでも無限ループでも見たい、聴きたいという気持ちになったに違いない。もう一度ここでWONKに再会できる日が、今から待ち遠しい!
Text by 服田昌子
Photo by 渡邉一生
◎イベント情報
【WONK “GEMINI” TOUR 2017】
ビルボードライブ大阪
2017/10/27(金)
1st Stage Open 17:30 Start 18:30
2nd Stage Open 20:30 Start 21:30
http://www.billboard-live.com/
東京・WWW X
2017/11/11(土)
OPEN/START19:00 / 20:00
DJ:FAME (ALL GREEN LABEL)
TICKET: SOLD OUT !!
INFORMATION: WWW X 03-5458-7688
http://www-shibuya.jp/schedule/008122.php
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