2017/10/20
新国立劇場の2017/2018シーズンが開幕。オープン演目であるワーグナー楽劇「ニーベルングの指環」第3日『神々の黄昏』が10月17日に千秋楽を迎えた。世界のワーグナー歌い達が集い、特にヴァルトラウト・マイヤーの初登場が注目を集めた。
“リング”指揮者としてピットに立つ飯守泰次郎が2014年に新国立劇場オペラ部門芸術監督して以来、ワーグナーの巨大な四部作「ニーベルングの指環」より、『ラインの黄金』『ワルキューレ』『ジークフリート』が上演されてきた。ワーグナーの聖地、バイロイト音楽祭でワーグナー楽劇を知り尽くしてきた監督を冠するからこそ実現できるシリーズであり、『神々の黄昏』で始まる今シーズンが飯守監督の最終シーズンでもある。
新国“リング”は、ゲッツ・フリードリヒによるシンプルかつ力強い演出、そしていずれも世界最高峰のワーグナー歌い達が集ったことで注目を集めてきた。全ての舞台に連続出演しているステファン・グールドは、『ライン』で見せた狡猾で知略に富んだローゲのキャラクターを微塵も思い起こさせないほど、罪とも言える純粋さと力を備えたジークフリート役を体現。『ワルキューレ』フンディング役で記憶に新しいアルベルト・ペーゼンドルファーは、今回ハーゲン役で登場。その圧倒的な声と存在感で、恐るべき世界の終末への引き金として君臨し、物語を導いた。
今回ブリュンヒルデ役で登場したのはペトラ・ラングだ。神性を失った「人間」としての自分を受け入れられず悩む姿から、ジークフリートの葬送に至るまでの変容と、その運命を嘆きながらも意思を感じさせる力強さは圧巻だった。また禍の元であるリングをラインの流れに戻すよう説得する為に現れる、ブリュンヒルデの姉妹、ヴァルトラウテ役には、あのヴァルトラウト・マイヤーが登場。幸せに満ちたブリュンヒルデの歓迎ムードとは真逆の、天上界の黄昏時を色濃く感じさせる、重苦しく苛立った表情と演技は、声を発さずともそれを客席に伝える臨場感。神々の平安よりも、愛の形見を優先させた姉妹への悲痛な叫びと怒りが観客の心をうち、一幕のカーテンコールではマイヤーが姿を見せるや否や、盛大な拍手が巻き起こっていた。
本公演を皮切りに始まった新国立劇場2017/2018シーズン。この後は『椿姫』『バラの騎士』『こうもり』など誰もが知る名曲揃いのオペラが続く。また2月上演予定の細川俊夫のオペラ「松風」日本初演は、オペラファンのみならず舞台に関わるアートファン必見の舞台になりそうだ。新国立劇場20周年記念公演がつむぎだす、極上のサウンドとファンタジーに身を浸してみてはどうだろう。text:yokano Photo:寺司正彦/提供:新国立劇場
◎公演情報
リヒャルト・ワーグナー作曲
楽劇「ニーベルングの指環」第3日『神々の黄昏』
2017年10月1日~17日 全6公演
序幕付全3幕/ドイツ語上演/字幕付
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