2017/09/04
東京バレエ団が9月8日~10日にかけて上演する〈20世紀の傑作バレエ〉。今回の公演では『アルルの女』(ローラン・プティ振付)、『小さな死』(イリ・キリアン振付)、『春の祭典』(モーリス・ベジャール振付)の3作品を一挙に上演する。
公演まで1週間とせまった9月1日、東京バレエ団のスタジオで、『アルルの女』に主演するロベルト・ボッレ(ミラノ・スカラ座バレエ団エトワール)、上野水香(東京バレエ団プリンシパル)の公開リハーサルと記者懇親会が行われた。
会見の冒頭でボッレが恩師である振付家、故ローラン・プティへの想いを語った。「プティとの出会いは19か20歳の時でした。『シャブリエ・ダンス』を踊る機会があり、それ以後『カルメン』、『若者と死』、『アルルの女』などの作品を踊ってきました。プティから教えてもらったことは私のキャリアで大変重要です。それ以前の私のレパートリーは『白鳥の湖』、『眠れる森の美女』などの古典作品やネオ・クラシックが中心でした。登場人物が強い個性をもつプティのドラマティックな役柄を踊ることが私の芸術家としての成長を助けてくれたのです」
そして、他の振付家と比べ、プティ作品ならではの魅力としてそのドラマ性を強調する。 「プティの作品にはパトス(熱情的な精神)が込められています。振付はシンプルですが、そのシンプルな動きを繰り返すことで強い印象、強い表現を生み出し、感動を呼ぶのです。その力が抜きんでているからこそ、初演から何十年たっても再演され続けているのではないでしょうか。『アルルの女』では、主人公の精神的な脆さなどを表現しなければなりません。感情の振れ幅が大きくなり、最後には自殺にいたるわけですが、舞台上でこのような感情を表現し、客席に伝えなければならないのです。」
話がプティとの思い出におよぶと「具体的に…というと難しいのですが、プティとリハーサル室に入ることが大きな挑戦でした。彼は踊り手を挑発することでダンサーの力を伸ばそうとしたのです。リハーサル中のプティからは思わず頬を赤らめるような言葉が出ることもありましたが、その言葉で役柄を深めるような踊りが引き出されていきました」
そして今回踊る『アルルの女』について。抜粋はたびたび踊っているが、全編を踊るのは今回が2度目、約10年ぶりだとのこと。「リハーサルの最中、新たな発見や感動がいくつもありました。初めてこの作品を踊ったのは2008年ですが、そこから人生経験を重ね、私自身も成長してきました。今まで生きてきた中で感じたことを表現したいと思っています。そうすれば視線やちょっとした仕草も“本物”になると思いますから。水香と踊れるのも本当に嬉しい。今度の舞台を私も心から楽しみにしています」
記者からは様々な質問が寄せられたが、ボッレの美しさについて「20年前から変わらない」と賞賛した記者に対する回答では「今は踊り手の身体を保つ方法も昔より進化しています。ダンサー生命が長くなったことで、年齢とともに重ねてきた人生経験を作品に活かすことができるようになりました。身体を保つ方法はよく聞かれるのですが、飲酒、夜更かしをせず、食事に気を遣い、1日8時間のレッスンをすれば皆さんも若さを保てますよ」と会場の笑いを誘った。
◎公演概要
東京バレエ団【20世紀の傑作バレエ】
2017年9月8日(金)~9月10日(日)
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