2017/06/07
Overwhelming. 日本語でいうと「圧倒される」。今夜見たブライアン・マックナイトを一言で表すにぴったりの言葉だ。大きな波のように人の心を飲み込む彼の声は、金属音のようなカーンと抜けるハリと、ベルベットのソファのように肌に心地よい柔らかさが共存する、いつまでも聴いていられる声だった。
イントロとしてバンドがスティーヴィー・ワンダーのリビング・フォー・ザ・シティ(邦題:汚れた街)でブライアンを迎え入れると、早速ショーがスタート。ブライアンはシングル「フォーエバー」のジャケットと同じようにグレーのフードを被って、今からワークアウトでもしそうなリラックスした格好だ。「オール・ナイト・ロング」「ユー・シュッド・ビー・マイン」は原曲と違ったライブアレンジで、かなりさわやかでハッピーに仕上がっていて踊り出したくなる。かと思えば最初のクールダウン。名曲「シュダ・ウダ・クダ」のハイトーンで筆者本日最初のOverwhelmingが発動し、笑っているのに涙が出てくる、いわゆるうれし涙状態ですっかりどっぷりブライアンの波に飲まれてしまった。しかも途中でお茶目におどけて見せるから、そのたびにお客さんが笑ったり、感動したりしながらどんどん引き込まれていくのがわかる。
「最初のアルバムが出て今年25周年なんだ。14歳の頃からラブソングを書いているけど、愛っていうものが実在するとはその頃信じてなかったんだ。少なくとも、映画やテレビで見るような愛はね。でも、14年かかって、やっと本当の愛を見つけた。僕にだって見つかったんだから、世界中の誰にでも本当の愛を見つけられる希望はあるさ。彼女は本当に、僕の「エヴリシング」だ」そう言って歌い始めた「エヴリシング」からは彼の深く無条件の愛がなみなみと溢れていて、筆者2度目のOverwhelmingである。涙ボロボロである。こんなに優しさに満ちた愛情をもって君は僕の全てだと言われたらもう屈服するしかないのである。
そしてここからは「素晴らしいミュージック・アイコンに敬意を表して、いくつか大好きなアーティストのカバーをしたい」と名曲メドレーに。ルーサー・ヴァンドロス(そうこなくっちゃ)をはじめ、アース・ウィンド・アンド・ファイヤー(筆者3度目のOverwhelming)、プリンス、マイケル・ジャクソンと、故人たちの今も愛され続ける名曲でお客さんたちもノリノリで踊りまくっていた。
ブライアンは沢山の楽器を弾くことでも知られているが、弾き語りも染み入るようでウットリした。アコースティックギターを弾きながら1995年にカバーしたヴァン・モリソンの「クレイジー・ラヴ」を、ピアノを弾きながら「オンリー・ワン・フォー・ミー」、「エブリー・タイム・ユー・ゴー・アウェイ」、「ワン・ラスト・クライ」。でも何よりも本当に歌の技術力が高くて、細緻な工芸品を見たときの感服に似た感情が心の中に充満して、何度もため息をついた。しかも1時間超のステージ中、一度も水を飲まなかった。ライトに当たって歌わずとも常人であれば喉が渇くくらいの時間なはずだ。先生その喉どうなってるんですか?
最後の曲をお客さんたちと一緒に歌い、さらっと消えた彼。ファーストステージにも関わらず、お客さんの手拍子に応え、某カードローンのCMかと思うスピードで再登場。アンコールを1曲だけ、最前列の女性の手を握って歌ってバックステージへと消えていった。最初から最後まで、自然体で、それでいて、圧倒的だった。
2017年6月6日(火) Brian McKnight - Billboard Live Tokyo 1st stage
Photo:Masanori Naruse
Text:Kelpie
◎ブライアン・マックナイト公演情報
ビルボードライブ大阪 2017年6月5日(月)
詳細:https://goo.gl/Uie1qo
ビルボードライブ東京 2017年6月6日(火)& 8日(木)~9日(金)
詳細:https://goo.gl/KEuP4S
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