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2017/04/21

“サザン・ソウルの秘宝”スペンサー・ウィギンス初来日公演のレポートが到着

 “サザン・ソウルの秘宝”スペンサー・ウィギンスの初来日公演が2017年4月17日と18日の2日間に渡り、ビルボードライブ東京で行われた。

 メンフィスで全盛期を迎えてからおよそ半世紀、初めて踏む日本の土を彼らはどう受け止めたか。ある意味舞台に立つ2人は対照的だった。弟のパーシー・ウィギンスは身軽にステージを動き、優しさを込めて丁寧に歌っていく。対して兄のスペンサーは持て余し気味の体躯をようやく制御しながらも、一旦声を発すれば自在にコントロールできる技術をなおも持ち続けていることを見せつけてくれた。

 最初に登場したのがパーシー。現在もメンフィスで一緒に活動するキーボードのチャールズ、ベースのリロイのホッジス兄弟のサポートを受けながら、ハイのクラシック「ラヴ・アンド・ハピネス」でいきなり幕開けを果たす。その後は彼の持ち味である温かみのあるバラード「ルック・ホワット・アイヴ・ダン」や「ブック・オブ・メモリーズ」を軸にしながらも、「イット・ディドント・テイク・マッチ」や新曲の「キャント・ファインド・ノーバディ・トゥ・テイク・ユア・プレイス」で動きのある鋭い姿を見せてくれた。圧巻だったのがエディ・フロイドの「ネヴァー・ファウンド・ア・ガール」。この曲が今なお南部のシンガーに及ぼす大きさを実感しながら、その気持の良さにずっと身を預けたくなった。

 だがここでは終わらない。いよいよスペンサーの登場である。パーシーが彼を迎える形で意外や「ダーク・エンド・オブ・ザ・ストリート」を2人で歌い継ぐ。何と同じゴールドワックスにいたジェイムス・カーの名曲である。だがスペンサーの歌い口にややぎこちなさを感じ、不安を感じた。(そのせいか2日めのステージではこの曲は省かれていた)恐らくギアが入ったのは「アップ・タイト・グッド・ウーマン」を歌ったあたりからだったろう。このスペンサーにしか歌いこなせない名曲を目の当たりにした時、自分がそして日本のファンが長年彼に賭けてきた思いが体中を駆け巡り、思わず熱くなった。

 この最後の”ダウンライト”以下続く部分を聴衆からもう一度とリクエストされると、その部分を何度も繰り返すスペンサー。この曲は今回のライヴの胆ともなった。その後は彼自身が大好きだという「オールド・フレンド」やブルージーな曲「ホワット・ドゥ・ユー・シンク・アバウト・マイ・ベイビー」「ロンリー・マン」から最後の「ダブル・ラヴィング」まで自在に操っていく。体は動いていないのに声だけが自在に駆けまわるといった彼独自の世界。彼の持つケタはずれの資質を改めて実感したところだった。

 1日目で印象深かったのが「アイム・アット・ザ・ブレイキン・ポイント」という曲だ。その代わり2日目には「アイ・キャント・ビー・サティスファイド」を余裕たっぷりに歌ってくれたことが嬉しい。

 2人の来日はわたしたちに何をもたらしてくれたのだろう。それはパーシーが最初に歌ってくれたようにまさに愛と幸せがもたらす平穏で平和な世の中、今の世界にそしてわたしたちの心の中に必要なものはこの平凡なふたつの言葉であるというメッセージであったのではなかろうか。

Text: 鈴木啓志
Photo: Masanori Naruse


◎公演情報
スペンサー・ウィギンス】
featuring パーシー・ウィギンス & ホッジズ・ブラザーズ(Hi Rhythm Section)
"Memphis Soul Spectacular"
2017年4月17日(月)- 18日(火)※終了
ビルボードライブ東京

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