2016/11/29
今年で15回目を迎えたテキサス州オースティンにて開催されている音楽フェスACL (オースティンシティリミッツフェスティバル)が、9月30日から10月2日、10月7日から9日の計6日間開催された。市内にある350エーカー規模の公園ジルカーパークが会場となっており、2013年から2週連続開催で出演するアーティストはジャンルを問わず、大小7つのステージと子供も楽しめるキッズエリアもあり、海外からも多くのオーディエンスを集めている。
今年は、ヘッドライナーにRadiohead, Kendrick Lamar, Mumford & Sonを迎え、計157組のアーティストが出演し、2週間で45万人を動員した巨大フェスの模様を数々の写真とともにレポートする。
- Weekend 2-DAY 3 October 9th (Sun) –
Pearl Charles / パール・チャールズ
LA出身23歳シンガーソングライター、パール・チャールズ。コナー・オバーストのサポートアクトとしてツアーを共にしていたり、モデルとして活動もしていてアメリカのファッションブランド Free Peopleが彼女をフィーチャーしたことからその名は瞬く間に知られることとなった今注目すべき女性アーティストの一人である。
この日バンドメンバーのギタリストの一人にFather John Mistyのツアーメンバーでも知られるクリス・ダーリーの姿が。
彼女のルーツでもあるカリフォルニアンフォークロックの曲に、ウィスパーヴォイス、そしてヴィンテージスタイルの衣装でギターを弾く姿が70年代に活躍したジョーン・バエズを彷彿とさせる。若い客層が多かったが、この日出演するウィリー・ネルソン目当てに来ていた観客をも魅了した。
Brett Dennen / ブレット・デネン
「こんな早い時間なのに僕たちの音楽を聴くために集まってくれたことに感謝しているよ!」と観客に賛辞を述べてメインステージのトップバッターを飾ったブレット・デネン。
童顔のせいかニューフェイスに見えるが、彼の経歴は長く2004年のデビュー以来今年発表した「Por Favor」とこれまでに通算6枚もアルバムを出している。今年はUSツアーやボナルー、ニューポート・フォークなどビッグフェスにも出演しアンダーグラウンドからのメジャーへの進展を計っているのだろう。
明るいポップなフォークに、軽快エレクトロ調にアレンジされたレゲエテイストの曲を歌いギターを奏でるブレットはウィリー・ネルソンやマムフォード&サンズのファンまでも魅了した。
Oh Wonder / オー・ワンダー
ACL至上最もキュートなカップルの登場
イギリス出身シンセポップデュオのジョセフィンとアンソニーは最終日の夕暮れに出演。
「All We Do」の曲の前にジョセフィーンは「この曲が意味するのは自分自身でいられることを祝福するっていう思いがあって、私たちは何だって(やれば)可能だってことを信じることはとても重要なの。だって全ては重要だから」と伝えると観客からの賛辞を意味する拍手が起きた。
彼らはテキサス州での演奏がACLで初であるのに、大勢の観客が彼らの曲を熟知し歌っているのを見てジョセフィーンは「これまで何でここで演奏しなかったんだろって悔しくなっちゃうくらいあなたたちは最高ね!またすぐ戻ってくるわ」と伝えた。
Anderson East / アンダーソン・イースト
ブルーアイド・ソウル R&Bシンガー。サウザンソールの次世代のアーティストでシンガーソングライターでもある。去年発表したメジャーデビューアルバム『Delilah』はアメリカンソングライターマガジンで5つ星を獲得。私生活ではカントリーシンガーのミランダ・ランバートを恋人に持ち、公私ともにノリに乗っている彼がメインステージに登場。
「このステージに集まってくれた人たちがポジティブな気持ちで、楽しんでくれることを願うよ」と言い、「Fine ‘Em, Fool ‘Em」が始まる。ブルージーなトランペットとサキソフォンにアンダーソンのハスキーヴォイスがハイエナジーなステージに仕立てる。アンダーソンは始終観客に感謝の意を述べメインステージに立てた喜びを伝えた。
Ra Ra Riot / ラ・ラ・ライオット
ブルックリンを拠点に活動するインディロックバンド。ACLは2週目のみの出演。
フロントマンのウェスはスタートからシャウトしステージを駆け回る。「Absolutely」のリッチなバイオリン伴奏とともに軽快なステップを踏む。ダンスビートは止まらない。ラストは元ヴァンパイア・ウィークエンドのロスタムとコラボした「Water」そして「I Need Your Light」で快活なエレキギターでライオット(暴動)さながらの盛り上がりを見せる。
1時間近くの短いセットの中オーケストラのストリングスを撒き散らしパワフルでダイナミックなステージを始終見せつけてくれた。
HAIM / ハイム
現在ニューアルバム制作中の中、幾つかのフェスに出演。
ACLが彼女達に与えたステージはメインステージでもセカンドステージでもなく割と小さめのステージだった。デビューして以来瞬く間にスターダムに駆け上がってきた彼女達。まだ1枚のアルバムしか発表していないが、その人気はメインステージ級である。ACLでも他ステージにまで溢れ買えそうな観衆だ。観客の中には泣きながら彼女達の名前を叫ぶファンの姿も。彼女達の登場で歓声は会場外のバートンスプリングスで遊泳を楽しんでいる人たちにも届いたであろう。
HAIM三女のアラナが「みんなラウドする準備はできてるわよね!」と観客を煽り「Don’t Save Me”で割れんばかりの声援と大合唱。シンガーでギタープレイヤーのダニエルのギターテクは男性ギタリストに引けを取らない圧倒的で力強い。
新曲「Nothing’s Wrong」、「Give Me Just a Little of Your Love」や、プリンスのカバー「I Would Die 4 U」を長女エステがリードし歌い披露した。セカンドアルバムが完成したらまたツアーに戻ってくると語りステージを後にした。
LCD Soundsystem / LCD サウンドシステム
ダンスミュージックでもありロックでもありパンクでもあり、ソウルでもある彼らのステージはいつもハイエナジー・ファンクロックショウである。
今宵も巨大なディスコボールが回る彼らのパーティーに、内なるエネルギーを一刻も早く放出したいと興奮する観客が集まった。ミラーボウルからのレーザービームが観客の照らす。「Us v Then」、「Daft Punk Is Playing At My House」でのパットのドラムビートにアル&タイラーのギターとベースがうねり、ナンシーのキーボードがバウンドし、そのグルーブ感はジェームズ・マーフィーのシャウトで一気にハイボルテージへと加速する。観客の興奮は息つく間もなくそれらはショウの終盤まで繰り広げられた。
終盤ではジェームズ・マーフィーが「今夜でしばらくツアーには出ないんだ」と語ると観客がどよめきの声が。すると「心配しないで。ニューアルバムが完成したら戻ってくるよ。数ヶ月後にね」と伝えた。
Willie Nelson / ウィリー・ネルソン
地元テキサス州出身 カントリーミュージック界の重鎮アーティストがACLの2週目のみに出演。
この伝説的アーティストを見るべくメインステージの夕暮れ時、ヘッドライナー並の観客が集まった。州のフラッグがたくさん並んだ光景、そしてウィリーのトレードマークである三つ編みにバンダナで彼が登場するのを待ち構えていた子供もいて、それだけ彼が世代を問わず多くの人から愛されていることがわかる。
セット時間に登場したのはウィリーではなく同じくテキサス州出身のハリウッド俳優のマシュー・マコノヒーも敬愛するウィリーを紹介し彼が登場。「Whiskey River」のイントロが始まると観衆のどよめきとともにテキサスフラッグが揺れる。ステージには姉でピアニストのボビー・ネルソンと共演。
演奏のいたるところでジャズの要素を取り入れる。その場所は音楽や人種の垣根を越え誰もが一つであった。
Mumford and Sons / マムフォード・アンド・サンズ
去年発表したアルバム『Winder Min』がゴールドディスクとなり今やアメリカでの人気を不動のものとした彼ら。フォーク&カントリーから民族音楽も取り入れたスタイルは若い世代からも絶大な支持を受けている。
「Holland Road”でのフロントマンであるマーカスのアコースティックギターが、カントリー・ウィンストンのバンジョーとテッドのアップライトなベース。「Lover of the Light」でのベンのうねるようなドラムに観客は歌い踊る。マーカスが右手を挙げこの歌が祝歌でこの場が祝い場であることを証明する。
ジャズシンガーのグレゴリー・ポーターとHAIMがサプライズで登場し「With a Little Help From My Friends」を共演。イギリス出身のバンドがフォークの聖地テキサス州のミュージックフェスで大トリという役目を堂々とやってのけ、2週にわたったフェスティバルのフィナーレにふさわしい演出で幕を閉じた。
今年のACLのラインナップはEDMやヒップホップアーティストが多く目立ち、長年のACLファンから懸念されていたのだが、終わってみればマムフォード・アンド・サンズを始め、
マーロン・ウィリアムズ、パール・チャールズ、マーゴ・プライス、マックス・ジュリー、ピート・ヨーン、コナー・オバースト、ウィリー・ネルソンなど多くのカントリー&フォークミュージックのアーティスト達が本来のACLを支えていた。
Text & Photo:ERINA UEMURA
(Mumford and Sons' photo by Cambria Harkey)
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