2016/11/16 13:00
映画『ブルーに生まれついて』と『MILES AHEAD 空白の5年間』という二本のジャズ映画上映会が行われ、トークイベントにトランペット奏者・日野皓正とジャズ評論家・柳樂光隆が登壇した。
『ブルーに生まれついて』は、トランペット奏者・チェット・ベイカーの再生の時期に焦点を当てており、『MILES AHEAD マイルス・デイヴィス空白の5年間』は、マイルス・デイヴィスのカムバックを描いた映画。奇しくも同時期に伝説のトランペッター達を題材にしたジャズ映画の上映が決定し、この日の上映会はジャズ喫茶のマスターたちが招待された。
2本の上映が終わると日野が登壇。映画の感想を聞かれると同じトランペット奏者のベイカーとマイルスについて「敵だよね、商売敵(笑)」といきなり会場を笑いで包みつつ、「ジャズが(題材として)浮上するのは、現代においていいことだよね」とコメント。日野が「演奏時に上唇が水膨れになってしまう」とマイルスに悩みを相談したところ、「もっと下の唇を使え」とアドバイスをもらったという。「当時はあんまり意味が分からなかったんだけど、70歳ぐらいで思い出してやってみたのよ。そしたら、すごくいいんだよ! やっぱりマイルスは俺の“オヤジ”だなって」と思い出を振り返った。
ベイカーについては、初めて聴いた当初は女性だと思っていたと言いながらも「ハスキーでセクシーな声」と評した。劇中でも描かれたように麻薬に溺れていたベイカーを渡米中に見かけたという日野は、その時の印象を「かわいそう」だと発するも「だからあんな演奏ができたんだろうな」と語った。
また、ベイカーやマイルスのように「トランペットが吹けなくなったことは?」と聞かれると、「僕は殴られたりだとか、歯が無くなったこともないからそんな時期はないかな(笑)」とジョークを交えつつも「僕は吹かざるを得ないよ、吹くために生まれてきたんだし」と柔らかな口調ながらも真っ直ぐな想いを口にした。さらに、マイルスと同じく若い世代との共演を積極的にしていることについて、日野が楽しそうに話していた際の「たかがジャズ、されどジャズなんだよね」という言葉がとても印象的だった。映画『ブルーに生まれついて』は11月26日よりBunkamuraル・シネマ、角川シネマ新宿他にて公開、『MILES AHEAD マイルス・デイヴィス空白の5年間』は12月23日よりTOHOシネマズ シャンテほか全国順次ロードショー。
◎公開情報
『ブルーに生まれついて』
2016年11月26日(土)よりBunkamuraル・シネマ、角川シネマ新宿他にて公開
監督・脚本:ロバート・バドロー
出演:イーサン・ホーク、カーメン・イジョゴ、カラム・キース・レニー
配給:ポニーキャニオン
『MILES AHEAD マイルス・デイヴィス空白の5日間』
監督・主演・共同脚本・製作:ドン・チードル
出演:ユアン・マクレガー、エマヤツィ・コーリナルデイ
音楽:ロバート・グラスパー
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
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