2016/10/24 11:00
開演15分前に席に戻ると、スクリーンにはクレーターが目立つ月から薄暗い雰囲気の映像が映し出され、開演前からスピーカーからは風の音が流れてすでに演出は始まっていた。その風の効果音もスピーカーの位置によって強弱や吹き方が異なるので、まるで映画館のサラウンドシステムのようでワクワというより、ゾクゾクとしてしまった。
開演予定時間になるとスクリーンがどんどん惑星に近づいていく映像に切り替わり、鼓動の音がしたと思うとそのスピードが加速すると同時に音量も大きくなり、ステージ後方からは鼓動音に合わせ光が夜空に放たれる。まさに「Speak to Me」を映像と共に再現。そして、間髪入れず「Breath」に続くという、名作『狂気』の冒頭部分をライブで見て異様な浮遊感に襲われる。
「Set the Controls for the Heart of the Sun」、「One of These Days」に続き、「Time」など『狂気』収録の楽曲が続く。「Time」終盤での「Breath」へのリプライズで鳥肌が立つほどゾクゾクし、「The Great Gig in The Sky」では女性ヴォーカル2名の寸分狂わないシャウトに大拍手、そこから「Money」、「Us and Them」へ。『狂気』の完全再現とまではいかないが、ライブ冒頭部分も含むと約半分は再現したとも言えるような貴重なセットリスト。
「Fearless」のフォーキーな音色に合わせ“Black Life Matters”というメッセージや終盤では“If You Are Not ANGRY Your Are Not PAYING ATTENTION”と訴えかけるメッセージがスクリーンに映し出されていた。中盤に差し掛かると、パトカーのサイレン音、ヘリコプターが本当に上空を飛んでいるのではないかと思わせる振動音、とてもリアルな警報のサウンドが流れ、スクリーン後方から巨大な煙突が4本出現しアルバム『Animals』のジャケ写を再現。煙突の先からはスモークが出るという細かさ。「Dogs」を演奏後、観客のちょうど中央の位置からトランプ氏を揶揄するメッセージが書かれた巨大なブタの風船が登場して「Pigs (Three Different Ones」。メインのスクリーンには「TRUMP IS A PIG」と痛烈に批判し、『Animals』収録のが長尺主要2曲を立て続けに演奏。今回出演するアーティストの中で、ロジャーが明確な政治へのメッセージを表した唯一のアーティストだった。
続く「The Happiest Days of Our Lives」からは『The Wall』からの楽曲を中心に演奏。「Another Brick in the Wall Part 2」では20人ぐらいの子どもが登場してダンスも披露。最後は「Vera」、「Bring the Boys Back Home」、「Comfortably Numb」とやはり『The Wall』からの収録曲を立て続けに演奏してライブは終わった。「Comfortably Numb」ではギタリストがスクリーンの上の位置で演奏するなど、どこを切り取っても演出へのこだわりを感じるセットであった。
効果音とスピーカー・システムの使い方、政治に対するメッセージ、ステージの使い方や音楽だけにとどまらずステージセットにも及ぶ再現。最も芸術性の高いロジャー・ウォーターズのパフォーマンスはこの歴史的なイベントのクロージングにふさわしいものであった。
Live Photo: Kevin Mazur for Desert Trip
◎公演情報
【Desert Trip】
2016年10月7日(金)~9日(日)、10月14日(金)~16日(日) ※現地時間
出演:
10月7日&14日(金) ザ・ローリング・ストーンズ、ボブ・ディラン
10月8日&15日(土) ポール・マッカートニー、ニール・ヤング
10月9日&16日(日) ロジャー・ウォーターズ、ザ・フー
INFO: http://deserttrip.com/
ロジャー・ウォーターズ、ライブ中にトランプ氏を痛烈に批判 #DesertTrip #現地レポ #RogerWaters #pig #DonaldTrump pic.twitter.com/jgCbeUw9EF
— Billboard JAPAN 洋楽 (@BillboardJP_INT) October 17, 2016
2時間半超えのセット終了。効果音とスピーカーシステムの使い方、政治に対するメッセージ含め、芸術性の高いパフォーマンスでこの歴史的なイベント終了。終演直後のスクリーン画像が美しすぎる #DesertTrip #現地レポ #RogerWaters pic.twitter.com/sZbSWQxeU9
— Billboard JAPAN 洋楽 (@BillboardJP_INT) October 17, 2016
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