2016/10/08
宇多田ヒカルが8年半ぶりのアルバム『Fantôme』を9月28日にリリースし、圧倒的な強さを見せて首位を獲得した。強豪として、前日リリースのEXILEの“究極のベスト”をうたった『EXTREME BEST』が大々的なプロモーション展開をし、三形態での商品展開を図ったにも関わらず、一形態のみで宣伝展開もシンプルな宇多田に軍配が上がったということでも大きな話題になった。
しかし、よくよく考えてみると、宇多田サイドにももちろん巧妙な策略があったのは確か。先週の本連載でもお伝えした通り、アルバムに収録された2012年の『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』のテーマソング「桜流し」では、新たなミュージックビデオを作成してアニメファンにアピールしているし、ご存知NHK連続テレビ小説では毎朝のように「花束を君に」が流れていた。
ただ、実際にアルバムのリード曲としてプッシュしたのは、冒頭に収められた「道」の方だ(【表1】)。今週のHot100で5位を記録しているこの曲は、本人が出演したサントリー天然水のCMタイアップ曲というのも話題で、早々にラジオでオンエアされ9/26付でオンエア回数は1位。今週まで3週連続首位となっている(緑のグラフ)。この勢いが、アルバムの売上に貢献しているのは間違いない。
もう一曲、収録曲で話題を生んだのが、椎名林檎とデュエットした「二時間だけのバカンス」(【表2】)。まずは映像を発表してツイッターのポイントを稼ぎ(水色のグラフ)、その後ラジオのオンエアを促進して(緑のグラフ)、最終的にはダウンロードにつなげた(紫のグラフ)。シングルではないため、最高位が今週のHot100での23位とそれほど大きなヒットではないが、こういった話題もすべてアルバムのセールスにつながっていると思えば大成功。
メディア出演の展開を含め、飽きさせず徐々に話題を作りながらユーザーの期待感を煽っていく手法は、オーソドックスなだけにEXILEに比べるとそれほど派手な動きに感じない。しかし、周到な作戦であることが功を奏し、その結果1位を獲得したのだ。text 栗本斉
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