2012/04/23
4月11日に約5年ぶりのアルバム『ミンちゃん』をリリースし、現在は自身のドキュメンタリー映画の撮影もと、ネットを中心に密かな話題を呼んでいるラッパーで、“引きこもりニートラッパー”を自称するMINTに話を訊いた。
“ネットも現場”をモットーに、近年は無料ダウンロードやYouTubeを使用しての楽曲発表なども積極的に行っている彼は、今も神戸の実家に暮らすニートで引きこもりなラッパーとして、一目置かれている希有な存在だ。
「元々、そんなに人付き合いが得意じゃなかったり、夜のクラブがそんなに好きじゃなかったり。(学生時代は)部活とかをやってきたことがないので、カチッとした上下関係も知らないので、居難い所はありましたね」
かつては大阪を代表するヒップホップ集団 韻踏合組合の一員となるも04年に脱退。以降は活動の中心をネットへ。また、彼は楽曲制作を自宅2階の自室、通称“ジタニカ”で行うのだが、まだミュージシャンとしての知名度は決して高いとは言えず、現在は定職もなければバイトもしていない。世にいうニートに近い実生活と言える状況だ。
その一方で、いわゆる世間のヒップホップに対するイメージとのギャップが面白いという、独特の感覚も持ち合わせているのが彼の特徴だ。「ニートでひきこもりだって小声で言うのではなく、大きな声でラッパーとして言っていることに面白さはありますね」
そうした観点は前述の最新作にも反映されている。中でも顕著なのはラストに収録された1曲、『Yeahでごまかしてばかりの純情』だろう。1日家でダラダラ過ごしたいと素直な欲求を吐露しながら、自分でも疑問に思えるほどの己が怠惰を自嘲するでも鼓舞するでもなく、淡々と綴っていく。
自身では他者を代弁する気はまったくなかったと述懐するが、イベント等で同曲の前身となる『Yeahでごまかしてる』を披露すると、後に「勇気づけられた」「ちょっと元気出た」と感想を伝えられることもあったそうだ。リアルな実生活を元に紡ぎ出されたリリック(=歌詞)は、彼と同じ境遇、つまりはニートや引きこもりに共感を生むことができるのだ。
ただ、そんな彼を見ていて気になることもある。それは世のニートや引きこもりに対して生まれる疑問と同じで、そうした生活は今後も続けていくのか。そしてどんな未来を描いているのか、ということだ。
現在の年齢を尋ねてみた。返ってきた答えは「17歳」。思わず吹き出してしまったが、負けじと食い下がって“今の状況から脱したいか”と質問を続けると、長い沈黙の後に彼は苦笑した。「ニートは脱したいです。家からは出たくないです。理由? ……楽じゃないですか(笑)」
MINTは現在、自身が主演する映画「(仮)#ミンちゃん THE MOVIE」の撮影が進んでおり、本作は公開を目前に控えるドキュメンタリー映画『沈黙しない春』の杉岡太樹監督が手掛けている。
紹介してきた通り、世のニートと変わらない生活、発言を続ける彼のリアルを垣間見れるであろう映画の完成に期待したい所だが、現状の彼の知名度では、本作が大きな話題になるのは難しいだろう。
だからこそ、まずはCDのセールスを上げてライブの集客を増やし、やがてはメジャーシーンに打って出て……。普通ならそう考えそうな所だが、彼は今、売れたい欲求以上に、ちゃんと評価して欲しいと口にする。
「それこそ1年に1回、ヒップホップ界でも総選挙をやるとか(笑)。その方が分かりやすいですよね。……俺は自分が何位なのかを知りたいんですよ、ずっと。俺がどの辺で何点なのか。それは音楽だから出せないんですけど、ちゃんと評価して欲しい」
もちろん、一番はアルバム『ミンちゃん』を聴いてもらうことだが、試聴可能な彼の楽曲もネット上には数多く存在する。このたび紹介した発言の殆どを「ニートそのものだ」と感じた人は多いと思うが、是非一度、その音楽に耳を傾け、自らの感性で彼を“評価”して欲しい。
◎アルバム『ミンちゃん』
2012.04.11 RELEASE
FRCD-216 1980円(tax in.)
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