2016/09/15
今年3月、世界中のファンから惜しまれながらも無期限活動休止を発表した米ロック・バンド<モーション・シティ・サウンドトラック>のファイナル来日公演が大阪と東京で行われた。
メンバーが「地球上で一番好きな国」と公言するここ日本でのラスト・ライブは歴代のヒット・ナンバーを凝縮させたセットリストで終始シンガロングの嵐、バンドとオーディエンスの一体感に満ち溢れた一夜となった。
ミネアポリスの5人組、モーション・シティ・サウンドトラック(以下MCS)が3年ぶりに実現させた来日ツアーが9月14日、東京・渋谷クラブクアトロで大団円を迎えた。バンドは今年3月、無期限の活動休止を発表。最後の来日公演となるこの日のライヴは、バンドと日本のファンの強い絆をより印象づけるものとなった。
ライブはひとりステージに現れたジャスティン・ピエール(Vo, G)による「Back To The Beat」の弾き語りでスタート。エピタフ・レコードと契約して注目を集める以前の00年、地元のインディ・レーベルからリリースしたEPのタイトル・ナンバーだ。そこへメンバーが加わって2曲目の「Cambridge」へなだれこむと、早速、スタンディングの客席から声が上がり、さらに「Capital H」と続ける頃にはフロアは既に大きく揺れ始めていた。“Holy shit!”と日本のファンの歓迎にジャスティンはニッコリすると、慌てて“ゴメンナサイ。僕タチハ、モーション・シティ・サウンドトラックデス”と日本語で挨拶をした。そこから1時間20分、バンドは新旧の楽曲をアンコール含め計22曲を披露。ラスト・ライヴであることを意識したのか、それらは時間軸を行ったり来たりしながら、彼らのキャリアを辿る、まさにベスト・セレクションと言えるものだった。
ライブの見どころは、うーん、全曲!(笑) バンドがイントロを奏で始めただけで(「Hold Me Down」なんて冒頭のドラムのリムショットだけで!)、「うぉー!」「きゃー!」という歓声が、繰り出す曲、繰り出す曲で上がる光景からは、エモーショナルな曲の数々がファンからどれだけ愛されているかが伝わってきた。しかも、どの曲の、どこでシンガロングしたらいいか、合の手を入れるみたいに声を上げたらいいか、飛び跳ねたらいいか、みんな心得ているんだからすごい。そんなファンの勢いに“ちょっとだけ休ませてね。でも、みんなのことが大好きです!”と、ジャスティンが若干気圧され気味に見えたほどだ。
いつもよりも更にやさしげに感じられたジャスティンの歌声を聴きながら、筆者は04年、Blink-182のオープニング・アクトとして初来日した時のことを思い出していた。あの時は勢いが先行して曲の魅力がここまでダイレクトには伝わってこなかった。それから12年、こうして激しさや勢いの中に滲むポップかつメランコリックな魅力の虜となって、彼らが聴く者の気持ちを鷲掴みにできるレパートリーをたくさん持っていることに改めて感動しているんだから、MCSを聴き続けてきてよかった。もちろん、最後のライヴだからって筆者は決してセンチになっていたわけではないし、そもそも最後のライヴだからってしんみりしたムードが漂っていたわけではない。実際、リズム・ギターに徹して演奏を支えるジョシュア・ケイン(G)。ジョシュア同様、リズムを支えながらコーラスもばっちりキメるマシュー・タイラー(B)。印象的なモーグのフレーズを奏でつつ大きなアクションで客席を煽るジェシィ・ジョンソン(K)。重いビートを絶妙に跳ねさせるトニー・サクストン(Dr)。そして、曲が終わるたび、お馴染みの逆立てた髪を撫でつけるジャスティン ― ステージのメンバー達もファンに負けないぐらいそうだった。
2曲立て続けにファンが大きな声でシンガロングした「A Lifeless Ordinary」と「Everything Is Alright」で本編は終了したが、深々とお辞儀をして、メンバー達がステージの袖にひっこむやいなや、アンコールを求め、“One more song!!”の大合唱。楽屋へ戻る時間はなかったんじゃないかと思うぐらい、あっという間にメンバー達が戻って来て、さらに3曲を披露した。見どころは、もちろん全曲だったが、本当のハイライトはアンコール最後の「The Future Freaks Me Out」。演奏を始めたとたん、手拍子しながらみんなが飛び跳ね、大きな盛り上がりが生まれたが、“4つ数えたら、みんなで歌って!”というジャスティンの呼びかけに応え、最後の最後に沸き起こった今日一番の大合唱は、最後の…いや、とりあえず最後のライヴの大団円にふさわしい光景を作り出した。それがデビュー・アルバムの曲というところがいいじゃないか。
終演を知らせる照明がついてもなお、名残惜しそうにステージに残って、前列のファンと握手しているメンバー達の姿は、この会場にいた皆の大切な思い出になるだろう。関連記事
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