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2012/04/10

「ネットも現場」 ガチヲタラッパーが描くアイドルへの愛

この春、実に約5年ぶりのニューアルバム『ミンちゃん』をリリースしたMINTというヒップホップミュージシャンをご存知だろうか。“ネットも現場”をモットーに、引きこもりニートラッパーとして活動する彼が、今、密かな話題を呼んでいるのだ。


 かつては大阪を代表するヒップホップ集団 韻踏合組合の一員として活動するも後に脱退。その後、活動の場の中心をネットに移した彼は、08年より楽曲の無料ダウンロードなどを精力的に行ってきた本格派ラッパーだ。

 そんなMINTの名が、ネット上に広まっていったのは2010年頃。人気アイドルやJ-POPの“勝手にRemix”シリーズが話題となり、発表直後よりコアなアイドルファンから賛否の声が相次いだ。

 発表のきっかけを「“美味しいかな?”っていう関西人特有のノリみたいな所もあった」と述懐する彼だが、根幹にあるのはやはりアイドルへの愛。「モノマネする人が、“好きな人じゃないとモノマネできない”って良く言いますけど、あれと一緒なんですよね。話題になってるからって理由だけでは無理なんですよ。好きだからやる」


 そもそもPerfumeをきっかけにアイドルに興味を持ったという彼は、やがて様々なアイドル現場にも足を運ぶようになり、今ではももいろクローバーに代表される“ライブアイドル”にも幅広い興味を示している。

 それがお為ごかしな戦略ではないことは、イベント会場には推しているメンバーのTシャツを着て全力で楽しむ、というスタンスからも分かるだろう。「俺はガッチリコールしたり、めっちゃ叫んだりします。ももクロのZepp公演の時も、カップルで来てる人らの前で緑色の服(※註)に着替えてたら、“あ、この人、ガチな人だ……”って空気感になって(笑)」

※註.ももクロはメンバーそれぞれにイメージカラーが設定されており、緑は有安杏果


 ……と完全にガチヲタな彼だが、アイドル音楽の魅力について訊ねてみると、当然ミュージシャンらしい答えが返ってくる。「最近のアイドルは、ダブステップでもドラムンベースでも、しれっと取り入れている所が面白い。三浦大知とかモーニング娘。がダブステを取り入れてきてるとか、そういう楽曲のクオリティの高さはありますよね」

 実際、先日ネットで発表したMIX音源『MMMM(MOTTO MINT MEGA MIX)』では、ヒップホップやダンスミュージックに加えてSUPER☆GiRLSやgirl next doorからアニメ「侵略!?イカ娘」までをも網羅。ジャンルレスなハイテンションチューンを駆使してカオスなサウンドを作り上げ、耳の肥えた各ジャンルのヘビーリスナーをも唸らせたのだ。


 冒頭で紹介した最新アルバム『ミンちゃん』には、Perfumeサウンドを思わせる『君たち女のコ』という4つ打ちチューンが収録されているが、同曲についても「俺は“パロディ”でいいと思う。ホンマは“っぽい曲”を作ったくせに、みんな後付けでかっこいい理由をつけたがるんですよね(笑)」と潔い。

 以上のような感性は、生粋の音楽人にしてアイドルヲタクである彼だからこそ持ち得たものだろう。ネットにアイドル、アニメと現代の日本で隆盛を極める文化を柔軟に取り込み、日本語ラップで表現する。メイド・イン・ジャパンと呼ぶに相応しい音楽は、こんな所からも誕生しているのだ。


◎アルバム『ミンちゃん』
2012.04.11 RELEASE
FRCD-216 1980円(tax in.)


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