2016/08/17
日本代表のメダルラッシュで大フィーバー中の【2016年リオオリンピック】だが、その中継を彩るテーマソングとしてオンエア中の安室奈美恵「Hero」が耳から離れない。という人も多いのではないだろうか。
<極限状態の戦いから生まれる物語……抜群の親和性を誇る「Hero」>
0コンマ何秒の判断や動作の差で勝負が決してしまう、人類最高峰のアスリートたちによる戦い。日々テレビから流れてくるオリンピック選手達の姿は、応援を重圧でなく力に変えられるのかのメンタルの戦いも含め、常に緊張感に溢れている。決勝戦まで勝ち上がること、そこで金メダルを獲得することは、当然ながら至難の業。準決勝に敗北した後の3位決定戦(銅メダル争奪戦)や、個人戦に敗北した後の団体戦、そこで勝利する為、どうやって気持ちをもう一度立て直すかも選手にとっては大難題であり、その壁に打ち勝って見事メダルを獲得してみせたストーリーは、福原愛率いる女子卓球チームをはじめ、今回のリオ五輪でもハイライトとして語り草になっている。
そうした極限状態の戦いから生まれるストーリーと、度々寄り添うように聴こえてくる音楽。どれも視聴者にとっては耳から離れない1曲になっていることと思うが、その中においても抜群の親和性を誇っているのが、安室奈美恵「Hero」(NHKリオデジャネイロオリンピック・パラリンピック放送テーマソング)である。
<安室奈美恵が「アスリート」と称される所以>
その音楽やステージに対するストイックさから「アスリート」と称されることが多い安室奈美恵。MCなしでノンストップで歌い踊り続けるライブスタイル、一切の安定も妥協も許さない楽曲をリリースし続ける姿勢もその要因だが、それだけではない。小室哲哉プロデュースのもとミリオンヒットを連発し、ファッションシーンでも社会現象を巻き起こすほどの存在になりながらも、自身が本当に求める音楽スタイルを追求するべくセルフプロデュースへ移行。一時はヒットチャートの頂点を他者に譲ることにもなったが、それでもなおセンセーショナルかつ洋楽的なサウンドアプローチで走り続けることを辞めず、そのスタイルのままアルバムとして6年ぶり、シングルとして9年ぶりの首位を獲得。自らの意思が純度100%反映された音楽で再びメダルラッシュを記録していくことになる。
このあまりにも見事すぎる革命劇が、その後の音楽シーンで戦う者たちに限らず、あらゆる世界で自分を信じて歩き続ける者たちにどれほどの勇気を与えたことか。何があろうとも自分を諦めない。用意された椅子に座り続けない。自身の意思で選んだ道を常に走り続けていく。この生き様こそが「アスリート」と呼ばれる所以である。
<「君だけのためのhero どんな日もそばにいるよ」>
そんな安室奈美恵がリオ五輪のタイミングで発表した「Hero」。魂に炎を宿したかのような荘厳なストリングスや、大地を踏みしめているようにも高まる胸の鼓動のようにも響くビート、そして「振り向かなくてもいい 今までの君のまま進めばいいから あきらめないで」「君と交わした約束の場所 たどりついてみせる いつか必ず」「離れていても みんなの想いが 今まで私の背中を押してくれたよね」といったフレーズたちは、オリンピックの舞台で戦う選手たちの姿と深くシンクロする。また、「君だけのためのhero どんな日もそばにいるよ」と歌われるサビは、極限状態の中で戦う選手に向けられているようにも、選手をヒーローとして見ている周囲に向けられているようにも感じられるが、このフレーズを歌う声があまりにもエモーショナルなのは、安室奈美恵もまた極限状態の中で戦ってきたアスリートだからだ。
順風満帆だったとは決して言えない人生の中で、幾度となく彼女を奮い立たせてきたのはやはり応援してくれる人々の存在であり、同時に「もうこれ以上歩けない」と立ち竦んでしまった人々の背中を押したのは彼女の歌であり、だから安室奈美恵が歌う「君だけのためのhero どんな日もそばにいるよ」は必然的にエモーショナルとなり、一方的に響かず、双方の想いとして受け止めることもできる。言うならば、この曲「Hero」は、オリンピックの舞台で戦う選手たちと実に近しい環境で生きてきた存在だからこそ成立する、実に純度の高いテーマソング。ゆえにオリンピックの光景と抜群の親和性をもって響き渡るのだろう。
<4年後【2020年東京オリンピック】に向けて>
そんな安室奈美恵の歌と共に中継されてきた【2016年リオオリンピック】だが、8月22日には閉会式を迎える。そして、4年後にはここ日本で【2020年東京オリンピック】がいよいよ開催と、タスキを繋いでいくストーリーは今後各所で紡がれていくわけだが、この曲を歌い続けていくであろう安室奈美恵の動向にも注目したい。そして出来ることならば、オリンピックの舞台で歌い踊る彼女の姿も観てみたいものだ。
テキスト:平賀哲雄
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